82年ぶりよりも、史上初(全仏オープンテニス、錦織ベスト8は通過点)
先日、錦織圭が、ロシアのガバシビリに3-0のストレート勝ちを収め、ベスト8へ進出した。
雨で試合開始が伸び、試合中も大粒の雨が降るなど、集中するには難しい状況にも、錦織圭は落ち着いた、むしろ淡々とといってもいいくらいの試合運び。
さすが、世界ランク5位と言ったところだ。
ガバシビリは世界ランク74位とはいえ、ここまで勝ち進んだ勢いそのままに、力強いフォアショットを、ストレートに、クロスに打ち込んでいった。
まるで一球一球が試合を決めるショットであるかのように。
しかし、それを錦織は、相手のショット以上に打ち返す。
まるで壁に打ち返しているように、決まったと思うボールでさえ、自分のコートに返ってくる。
「2時間以上の試合なら、任せておけ」
そう語ったガバシビリは、粘り強い戦いを狙っていたが、自然とミスを繰り返していた。
チャンスがあったにも関わらず、このチャンスを生かさねば、という気負いと焦りから、肝心なところで決め切れないガバシビリは、試合が進むにつれて明らかに苛立っていた。
相手が勝手に自滅をする。
自分の素晴らしいショットで相手をねじ伏せる、というよりも、相手の自滅を待つ。
相手の素晴らしいショットを、それ以上のリターンで返すことで。
この日の錦織は、明らかに「強者のテニス」をしていた。
ビッグ4と呼ばれるジョコビッチ、ナダル、フェデラー、マレーの試合に見られるような試合内容で。
錦織が勝ち進むことはうれしいことだ。
それ以上にうれしいのは、彼のテニスが面白いことだ。
リターンで金を取れる選手になっていた。
日本だけではなく、世界中が注目する選手となった錦織圭。
「4大大会のベスト8も、もう慣れてきたので驚きはない」
と語る錦織の言葉は、自然そのもの。
日本男子82年ぶりの全仏ベスト8進出だが、錦織にとってはそれは偉業ではなく、通過点だ。
82年ぶり、と言っても誰かが通った道。
錦織が手にしたいのは、○○年ぶりという前人が通った道よりも、自らが創り上げる未踏の道だ。
ほとんどの人が達することができない頂に登るために、。
ベスト4をかけた一戦は、ツォンガ戦。
彼はすべてのグランドスラムでベスト8進出を果たしてる数少ない現役選手の1人であり、グランドスラム通算でビッグ4全員に勝利した初の選手でもある。
ましてや、彼は地元である。
ホームコートと化した大声援を背に、錦織は強敵を迎え撃つ。
未踏の道を切り開くために、この大会初めてとなる、スタートからのトップギアでの入りを見せるだろうか。
結果だけではなく、1プレーごとに見せてくれる錦織の戦いに期待したい。
見る者にとっても、今まで以上に力が入り、一喜一憂する日本列島は、季節外れの暑さをも「涼しい」と感じさせるほどの戦いとなるだろう。
戦いは、日本時間の2日夜。
頑張れ、錦織!