先日、錦織圭が、ロシアのガバシビリに3-0のストレート勝ちを収め、ベスト8へ進出した。 雨で試合開始が伸び、試合中も大粒の雨が降るなど、集中するには難しい状況にも、錦織圭は落ち着いた、むしろ淡々とといってもいいくらいの試合運び。 さすが、世界ランク5位と言ったところだ。 ガバシビリは世界ランク74位とはいえ、ここまで勝ち進んだ勢いそのままに、力強いフォアショットを、ストレートに、クロスに打ち込んでいった。 まるで一球一球が試合を決めるショットであるかのように。 しかし、それを錦織は、相手のショット以上に打ち返す。 まるで壁に打ち返しているように、決まったと思うボールでさえ、自分のコートに返ってくる。 「2時間以上の試合なら、任せておけ」 そう語ったガバシビリは、粘り強い戦いを狙っていたが、自然とミスを繰り返していた。 チャンスがあったにも関わらず、このチャンスを生かさねば、という気負いと焦りから、肝心なところで決め切れないガバシビリは、試合が進むにつれて明らかに苛立っていた。 相手が勝手に自滅をする。 自分の素晴らしいショットで相手をねじ伏せる、というよりも、相手の自滅を待つ。 相手の素晴らしいショットを、それ以上のリターンで返すことで。 この日の錦織は、明らかに「強者のテニス」をしていた。 ビッグ4と呼ばれるジョコビッチ、ナダル、フェデラー、マレーの試合に見られるような試合内容で。 錦織が勝ち進むことはうれしいことだ。 それ以上にうれしいのは、彼のテニスが面白いことだ。 リターンで金を取れる選手になっていた。 日本だけではなく、世界中が注目する選手となった錦織圭。 「4大大会のベスト8も、もう慣れてきたので驚きはない」 と語る錦織の言葉は、自然そのもの。 日本男子82年ぶりの全仏ベスト8進出だが、錦織にとってはそれは偉業ではなく、通過点だ。 82年ぶり、と言っても誰かが通った道。 錦織が手にしたいのは、○○年ぶりという前人が通った道よりも、自らが創り上げる未踏の道だ。 ほとんどの人が達することができない頂に登るために、。 ベスト4をかけた一戦は、ツォンガ戦。 彼はすべてのグランドスラムでベスト8進出を果たしてる数少ない現役選手の1人であり、グランドスラム通算でビッグ4全員に勝利した初の選手でもある。 ましてや、彼は地元である。 ホームコートと化した大声援を背に、錦織は強敵を迎え撃つ。 未踏の道を切り開くために、この大会初めてとなる、スタートからのトップギアでの入りを見せるだろうか。 結果だけではなく、1プレーごとに見せてくれる錦織の戦いに期待したい。 見る者にとっても、今まで以上に力が入り、一喜一憂する日本列島は、季節外れの暑さをも「涼しい」と感じさせるほどの戦いとなるだろう。 戦いは、日本時間の2日夜。 頑張れ、錦織!