「アルゼンチンVSブラジル」どんな人が聞いてもこの両国の対戦と聞けば相当の盛り上がりを想像するでしょう。しかもそれが35年ぶりの激突と聞けば尚更です。アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスで開催された今回のデビスカップ1回戦にも沢山の観客が集まってこの宿命の対決を見届けました。  テニスに関して言えばこの両国はアルゼンチンのほうが有力選手を多く輩出しており、デ杯の成績も上です。アルゼンチンにはコリア、ガウディオ、ナルバンディアン、そしてデルポトロなど最近で見ても多くの選手がいます。ナダルですらまだ届かないクレー史上最多49タイトルを持つビラスもアルゼンチンの選手でした。一方ブラジルといえばクエルテンが代表的選手。  今回の両国の激突、プレビューでも書いたようにお互いの強みははっきりしていました。エースのレオナルド・マイヤーで確実に2つ取りたいアルゼンチン。ダブルスの強豪、メロとスアレスで確実に1つ取りたいブラジル。焦点を分けるのは残り2つのシングルス。  まず第1ラバー。いきなりその焦点となるシングルス。アルゼンチンはベルロクを、ブラジルは最近成長著しいソウザ(カタカナで書くとポルトガルのソウザと同姓同名になってしまいます。アルファベットで書くと1文字だけ違います)を送り込みました。この対決はいきなりフルセットとなりましたがセットカウント1-2から逆襲したソウザが制してブラジルがまず1勝を挙げました。ブラジルにとって非常に大きな1勝でした。  第2ラバーはL・マイヤーが、翌日の第3ラバー・ダブルスはメロ/スアレス組が制して予定通りの進行となりました。この時点で多くの人が最終戦のことを考え始めたでしょう。いくらソウザが勢いに乗ってるとはいえマイヤーの有利は動かないはずだから…  三日目、まずマイヤー対ソウザの一戦が始まりました。マイヤーはソウザの粘りに苦しめられながらも着実にセットを奪っていきました。第1セット、第2セットともにタイブレークをものにしてリードを奪うと第3セットも先にブレイクを奪ってゲームカウント4-1。もう決まったでしょう。  だが数時間後、錦織の試合が始まる頃になってもこの両者の試合はまだ続いていました。ソウザは第3セット2度、第4セットで3度ブレイクを奪ってフルセットに持ち込んでいたのです。それでもホームの声援も背中に戦う格上のマイヤーが一歩有利なのは明らかで、しかも先サーブでした。5-4の第10ゲームで0-40と3つのMPを握り試合終了か?しかしソウザはこれを全てしのぐと、逆に直後のゲームであっさりブレイクを奪いました。ソウザの大逆転劇はこれで完結、そしてブラジルの勝ち抜け決定かと思われましたが、今度はこのセット8個目のBPを生かしてマイヤーが土壇場のブレイクバック!  この後は両者必死のキープ合戦となりました。先サーブのマイヤーはBP=MPという状態です。第18ゲームで3つのMPを、第24ゲームでは再び0-40としてソウザを追い詰めますが、追い詰められるとその度にソウザが目の覚めるようなプレーを繰り出して切り抜けます。計10個のMPをしのぎ切ったソウザ。度重なるチャンスを全て逃し一気に足が動かなくなったマイヤーを容赦なく前後左右に振り回し今度はソウザがチャンスを作ります。だが今度はマイヤーがサーブとストロークの強打をぶち込んでキープ。試合時間はいつの間にか6時間半を越えていました。マッケンローが記録したデビスカップのシングルス史上最長記録6時間22分、そしてATP公認大会シングルス史上2位の6時間33分(04年全仏)も越えてしまったのです。  第28ゲーム、ついにこの試合の終わりがやってきました。マイヤーの粘りと強打に耐えられずソウザがたまらずミスを重ね15-40。11個目のMPはソウザが強打を決めてしのぎましたが、12個目のMPでようやく決まりました。試合時間は6時間43分でした。  最終試合、アルゼンチンはデルボニスを抜擢し、ブラジルのエースを長年務めたベルッチにぶつけました。前の試合が長すぎた影響で第1セットをデルボニスが奪った時点でなんと日没サスペンデッド、試合の結末は4日目にもつれました。予定外の4日目は観客に無料開放されて行われ、デルボニスがセットカウント3-1で制してアルゼンチンの勝利が決まりました。  4日間の死闘の間、メンバーに入れなかったもののチームの一員として声援を送り続けた人がいました。デルポトロです。先輩ナルバンディアンとの確執や、ATPツアーへ集中したいという理由からデ杯への参戦が遠ざかっていたデルポトロですが、本来は国のために熱く戦ってきた選手です。デルボニスの勝利を見届けたデルポトロの目には涙が浮かんでいました。アルゼンチンは準々決勝でジョコビッチ擁するセルビアと対戦します。4か月後の一戦には間違いなくデルポトロの力が必要になるでしょう。焦りは禁物ですが、一日も早い復帰が待たれます。 Del Potro cries from the joy and then celebrates this way. Only in #DavisCup pic.twitter.com/FIN7meJovQ— Luigi Gatto (@LuisGatTWI) 2015, 3月 9