観戦:WOWOW 大会:全豪オープン 男子シングルス 開催:2015年1月25日 男子シングルス 4回戦 「アンディー・マレー〔イギリス〕VSグリゴール・ディミトロフ〔ブルガリア〕」 ディミトロフのプレーにはセクシーさが漂う。何をやっても巧い。 マレーも長身を生かし、動きも発想も機敏で「スマート」という形容詞が良く似合う。 どちらかと言えば両者ともベビーフェイスなキャラと言えるだろう。 しかし試合となれば、喜怒哀楽の激しさがイメージとは全く違う。 不甲斐ない自分には大声で喝を入れ、自己の好プレーには雄叫びで鼓舞し、相手を威圧する。 マレーにしてみれば、昨年ウィンブルドン準々決勝敗退の借りがある。 ディミトロフだって、全豪でベスト4以上に登りたい。 感情剥き出しでぶつかり合った両者。 この試合、イラつきの怒りの矛先はラケットへ発散された。 犠牲になったラケットの痛々しい場面がよく目に付いた。 試合は、第1セットはマレーが奪い、 第2セットはタイブレークの末にディミトロフが取り返した。   ↓ ベンチに戻ったマレーが怒る。ラケットを投げ捨てる。 さらにペットボトルも投げ付けようとして思い留まるが、なかなか腹の虫はおさまらない。 そして、マレーが6-4、6-7(5-7)、6-3で迎えた第4セット。 今度はディミトロフがイラつきを爆発させた。 7ゲーム目まではディミトロフが5-2でリードしていた。 完全にディミトロフのペースだった。フルセット突入は当然だと思った。 マレーは左太ももだけでなく左肘にも痛みを抱えていた。マレーの反撃は予想できなかった。 だが、後になって考えれば、少し流れが変わる要因があった。 それは、6ゲーム目にディミトロフがラケットを交換したこと。 感触が良かったはずのラケットのフレームが剥がれたのが誤算だった。 フルセットに持ち込ませたくないマレーが粘りを見せ、あっという間に5-5に。 第11ゲーム目のディミトロフのサービスゲームを一方的にブレークされてしまう。    ↓ ここで、ディミトロフがラケットをコートに叩き付ける! ぐにゃりと曲がった。そのラケットを足で抑え真っ二つにへし折る。 まるで、スプーン曲げの仕上げの瞬間のように。 偶然かもしれないが、ラケットの交換が勢いを足踏みさせ、ディミトロフ自身が感触を取り戻せないままマレーを立ち直らせてしまったのが怒りの原因だと思われる。 そして、決着のシーンは意外な結末が待っていた。 マレーの打球がネットに当たり、時が止まったようにポトリと落ちた。 それまでのディミトロフの怒りは消え失せ、お互いに静かに讃え合って終了した。 マレーが勝利して、昨年ウィンブルドン敗退の借りを返した。 道具は大事にしないといけないが、火花散るこの両者の対決は面白い! また別の大会で相まみえた時も、感情剥き出しの熱戦を見せてほしい。