ウインブルドン決勝、マレーがラオニッチを6ー4、7−6、7ー6のストレートで撃破しました。これで、マレーは3年ぶりWB2回目の、GS3回目の優勝を果たしました。 久しぶりにラオニッチのテニスをじっくり観戦しましたが、確実に進化しています。1stサービスは相変わらず威力がありますが、2ndです。以前は1stが入らなければポイントを取れるイメージがありましたが、200kmもの2ndを放ってきます。ボディも有効でした。さすがのマレーもリターンエース狙いは厳しい状況でした。そのマレーのお株を奪うリターンをラオニッチが強烈に叩き込みました。フェデラー戦でも後半に見せていましたが、フェデラーの威力と精度が落ちたことによるものと見ていましたが、立ち上がりからそのリターンを見舞っていました。ここまでの威力はマレーも想定していなかったのではないでしょうか。それはスタッツに表らわれています。第1セットの2ndサービスポイント獲得率はマレーの43%に対してラオニッチの56%です。マレーの2ndサービスゲームは厳しいものでしたが、それを救ったのは1st確率です。75%でした。ちなみにマレーのキャリアグラス1st確率は61%です。これがなければラオニッチが優位に展開していたかもしれませんでした。第1セット、第7ゲームにラオニッチが3つのUEを出すなどしてブレイクを奪われ、第1セットをマレーが取ります。 第2セット、マレーはラオニッチの2ndリターンを警戒しますが対応します。マレーは相当の気迫を見せます。第2セットのマレーの1st確率は62%と落ちます。それだけ2ndサービスに緊張した展開をみられました。マレーの2ndサービスポイント獲得率は71%と落としませんでした。ラオニッチのUEは第1セット6に対し、第2セットは15です。内10はマレーのサービスゲームです。マレーはラオニッチのミスを誘います。低い跳ねないショットでラオニッチはネットに掛けたり、バックアウトのミスが目立ちます。スライスはラオニッチは負けておらず、かえってマレーがミスをしていました。一方のラオニッチのサービスポイント獲得率は1st64%で低めですが2ndは76%でした。そしてタイブレイクに突入。ラオニッチのミス、マレーのパッシングウイナーなどで7−2でとり、セットカウントをマレーの2ー0とします。 第3セット、マレーのサービスゲームからです。相変わらず2ndサービスに注目しました。1st4本とりましたが、2nd2本はとられました。DFとラオニッチの深いリターンからネットを取られました。ラオニッチのストロークですがしっかりと深くステイトメントされています。サーブ&ボレーも決まります。直感的に前に出るそうです。サービスゲームを落としません。第3ゲーム、相変わらずマレーの2ndへのリターンが深くはいりファーストポイントを取ります。しかし、この深く早いリターンにもマレーは対応し出します。ストローク戦に持ち込みミスを誘います。低く跳ねないショットを放ちます。ラオニッチのネットダッシュに対してもパッシングウイナーを決めます。ストローク戦は明らかにマレー優位です。 第5ゲーム。このセットの最大のポイントであったと思います。1stよりラリーとなりマレーがネットに掛けます。続いても1stよりラリーとなりマレーはバックアウトします。マレーがデュースコートよりワイドのサービスエースをきめ15ー30。マレーは落とせない場面の警戒する2ndサービス、慎重にスピンサーブを放ちますが、ラオニッチはここでリターンエースを決め、ダブルのブレイクチャンスです。ここでマレーは跳ねないサービス、跳ねないショットでデュースとします。パッシングショット、フリーポイントで凌ぎます。その後は互いにサービスゲームをキープし第2セットに続きタイブレイクとなります。 マレーからのサービスゲームはしっかり取ります。続くラオニッチのサービスゲームはマレーがパッシングウイナーをここで決めます。続くラオニッチの1stサービスからラリーに持ち込みミスを誘います。低い跳ねないショットにラオニッチはバックアウトします。マレーの3ポイント連取です。マレーのサービスゲーム、深くバック側にステイトメントしラオニッチはネットに掛けます。続いてウイナー。マレーの5ー0です。続くラオニッチのサービスゲーム、マレーはネットに掛け、5ー1。2ndを深くリターンし返しをウイナーで決め6ー1。マレーのサービスゲームでチャンピョンシップポイントを迎えます。2ndサービスよりラオニッチのフォアのストレートをバックアウトし6ー2。最後はラリーよりラオニッチがネットに掛けてマレーが勝利します。ラオニッチ攻略の集大成と思えるタイブレイクでした。 繰り返しになりますが、ラオニッチの進化を感じました。サービスの威力を活かしたサーブ&ボレー、ネットダッシュをみせ、ストローク力の弱さを補う早い攻撃パターンをベースに、2ndサービスの向上、2ndリターンの向上を感じました。ここで2ndサービスポイント獲得率を見てみます。 第1セット マレー:43%、ラオニッチ:56% 第2セット マレー:71%、ラオニッチ:76% 第3セット マレー:46%、ラオニッチ:73% ラオニッチが優位と思われた1stサービスポイント獲得率も見てみます。 第1セット マレー:86%、ラオニッチ:70% 第2セット マレー:83%、ラオニッチ:64% 第3セット マレー:92%、ラオニッチ:70% これも意外な結果です。ただ、ラオニッチのこの2ndサービスとリターンは今後も驚異となると思いますし、ラオニッチ攻略のポイントになるものと思います。もう一つ、ラオニッチの低めのショットに対する対応強化です。これはラオニッチの課題となるものと考えます。 マレーです。ラオニッチのテニスにしっかり対応しました。テニス巧者ぶりを発揮しました。何よりもミスが少ないということです。ラオニッチ29に対し、マレーは12。セット平均4です。QFのツオンガ戦は4.6、SFのベルディヒ戦は3です。UEセット平均5を出すとGS制覇は出来ないということでしょうか。 1987年5月15日生まれのマレーは、2012年25歳で全米でGS初制覇し、2013年26歳でWBでGS2勝目、WB初制覇しましたが、試合前のインタビューのコメントではその前回の初制覇と今回の決勝との違いは何かとの問いかけに対して、「経験」とこたえました。意外でした。このマレーが経験と答えたのです。26歳は現在の錦織の年齢です。その後29歳まで3年間の経験が違うというのです。そして、その経験がしっかりと勝利へ導いたのでした。 マレーは優勝をきめた後、ベンチにもどり、涙を流しました。どのような想いが込み上げてきたのか。大きな大きなWB2勝目でした。 マレーはGS・MSの主要大会で今シーズン5回の決勝進出でローマMSに続き2勝目です。2015年シーズンでは5回の決勝進出でマドリードMS、カナダMSの2勝です。このWB終了時点で昨年度以上の成績を残していることになります。ジョコビッチは6回進出で、全豪、全仏、IW、マイアミ、マドリードの5大会優勝です。レースランキングでは、ジョコビッチが8,040ポイントに対してマレーの7,225ポイントと815ポイントの差となりました。マレーの夢であり最大の目標であるNO1の座が現実を帯びてきました。マレーは試合後に「全盛期はまだこれから」とのコメントをしたということですが、正にこのNO1を手中に収めるとともに、ジョコビッチの1強を許さないという宣言であったのではないでしょうか。 マレー、おめでとうございます。大きな大きな優勝であったと思います。