今年のグラスコートシーズン、錦織選手が昨年と同じようなタイミングで起こした故障について、様々な記事、非常に多くの記事を見ます。 昨年もクレーコートシーズンが終わる頃には、随分体力面の強化が進み、強い体が出来てきた。今年も同じ時期まで、同じ様に言われる事が多かったです。確かに、昨年も今年も体力面の強化が進み、前半戦の活躍に繋がっています。現実に以前より体は強くなっていると思います。しかし、芝シーズンに入った同じような時期に、やはり筋肉系の故障を起こしました。 来年こそ、この時期に同じような故障を起こさない為には、何が必要でしょうか? 今回の左脇腹の故障の「原因」は、何だったのでしょう? 当然疲労の蓄積の中で起こった事だと思います。ヨーロッパ・クレーコートシーズン、錦織選手の場合1ヶ月半足らずの間に、4大会、17試合をこなしました。 グラスコートシーズンに入り、初戦プイユ戦(昨年ハレのヤノウィッツ戦)のどのタイミングで、どんな動きをした時に痛めたのか? それとも、徐々に痛みが出て、若しくは試合後痛みが出て、本当の原因は特定できず、予想の範囲でしか分からないのか? この原因は大きく分けると2つか3つでしょうか。 1. どれくらいハードワークをすれば、錦織選手の体は、故障を起こしやすい状態になるのか? 2. 直接的な原因は何か?どういう動きをすると危険なのか? 3. 筋肉系の故障を起こしにくい身体を作れていないから?どうすれば故障し難い体を作れるのか? 2.直接的な原因を把握出来ているというのは非常に大事な事だと思いますが、どうなんでしょう。把握出来ていて、こんな動きに注意、といった対策があるのでしょうか?本人でないと分かりません。 芝コートの場合は、シューズのグリップがあまり効かず、足場が良くない為に引き起こす。 脇腹の場合、ひねり運動をするスポーツ選手が故障し、長引いたり、クセになったりしているケースをよく聞きます。 ゴルフもひねり運動ですが、テニス程聞かないのではないでしょうか。野球やテニスの様に動くボールを相手にする競技の場合によく起こる気がします。 確率的には、野球の方が多いでしょうか、選手自身は静止状態で、動くボールを打つ動作は非常に脇腹あたりに負荷がかかるのが想像出来ます。ゴルフの場合も静止状態からの動作ですが、ボールも止まっている為、自分で調整出来ます。 野球は自分が静止状態の上、予期せぬコースにも対応をします。どういう事かというと、支点は固定されている状態で動くものに対応する為、捻転運動に予期せぬ大きな負荷がかかります。テニスの場合、動くものに反応しますが、自分の体も動かしている(支点は固定されていない)為、捻転運動にかかる負荷は野球ほどでは無いと推測できます。 それでも、錦織選手が脇腹に故障を起こしているという事は、余程のハードヒットをし過ぎているのではないかと推測します。 全豪ジョコビッチ戦でも感じましたが、強弱が少なく強打一辺倒になる場面をよく見かけます。錦織選手は体重が乗ったパワフルなフォアを打てる様になり、これでもかとハードヒットを続け、ポイントにする事が出来ます。しかし、テンポを変えて、強打一発で相手にオーバーを打たせたり、ミスヒットさせたり、甘いボールを返させ決める事が錦織選手には出来ますし、そうしている時も有ります。 クセになるというキーワードもいくつか見ましたが、私が書き留めた錦織選手の怪我で脇腹は、昨年11月パリのガスケ戦しかないですが、それ以前にもあったのでしょうか?何方かご存知な方がいらっしゃれば教えてもらえないかなぁ。あれ1回だとすれば、まだクセという程ではないのかなと思います。 3.怪我をし難い体という面では、どうでしょうか?素人目に見ても、錦織選手のふくらはぎ等立派な筋肉がしっかり付いているのを見ると、肉離れを起こし易そうにも見えます。ストロークのパワーでは、最近ジョコビッチにさえ勝っていると感じる事もあります。 今から、イチローの様な筋肉を作る事は難しいでしょうし、テニスの様な1対1の個人戦の場合、パワーも重要な要素になりますから、もし怪我をし難い体を作れたとしても、錦織選手の体格ではパワー不足に陥るかもしれません。チームはどんな取り組みをしているのでしょうか。 1.どれくらいハードワークをすれば、錦織選手の体は、故障を起こしやすい状態になるのか? 現時点では、この点を把握してスケジュールを組む事が一番現実的かという気がします。 最近では、体調さえ良ければ、MS以上の大会でも、QF、SF迄はかなり高い確率で勝ち進めます。決勝進出も十分可能性がありますし、そうなれば今年の目標であるMS以上の大会で優勝の可能性も増して来ます。その方がポイントも伸ばして行けそうな気がします。今は500以下の大会出場が大きなイベントに向けピークを持って行く事に対して弊害になっている様に感じます。 ここ数年のクレーコートシーズンから全米辺りまでのスケジュールを見ますと、 2014 バルセロナ 優勝 5試合 1週休み マドリード 決勝 6試合 臀部故障 2週間休み(ローマ棄権) 全仏 1試合 2週間休み ハレ SF 3試合 1週休み 全英 4試合 4週間休み ワシントン QF 3試合 3週間休み(カナダ・シンシナティ棄権)親指嚢胞切除手術 全米 準優勝 7試合 2週間休み マレーシア 優勝 4試合 東京 優勝 5試合 この後、疲労気味 2015 バルセロナ 優勝 5試合 1週休み マドリードSF 4試合 ローマ QF 3試合 1週休み 全仏 QF 5試合 1週休み ハレ SF 4試合目途中棄権 脹脛故障 1週休み 全英 1試合 2回戦棄権 4週間休み ワシントン 優勝 5試合 カナダ SF 4試合 臀部故障 2週間休み(シンシナティ棄権) 全米 1試合 この後、後半戦も故障続き 2016 バルセロナ 準優勝 5試合 1週休み マドリード SF 4試合 ローマ SF 4試合 1週休み 全仏 4試合 1週休み ハレ 1試合 2回戦棄権 左脇腹故障 1週以上休み 全英 4試合 4回戦途中棄権 3週間休み予定 カナダ、リオオリンピック、シンシナティ、1周休み、全米 こうして見ると、 14年のマドリードの様に決勝進出を果たしましたが後一歩のところで故障し、優勝を逃しています。1週間空けてもその前の週でハードワーク(バルセロナ優勝)していると最後まで持ちこたえる事が出来ません。 この時期は2週間以上空けないと厳しい。また、芝コートに入った途端に故障しています。 後、筋肉系の故障の後は2週間くらい開けてもその後良い結果は出ていません。 14年全米は筋肉系では無く親指の手術後だった為、肉体的にはフレッシュな状態で臨み大ブレーク、ランキング上位をなぎ倒しGS初の決勝進出を果たしました。 バルセロナは優勝2回を含む3年連続決勝進出、大会前2週間休みが有ります。昨年のワシントン優勝は脹脛故障の後ですが、4週間空いていました。 錦織選手、MS、GS主体のスケジュールを組むべきですね!MSでさえ2週連続の大会については、どちらかにターゲットを絞り、もう一方では絶対に無理な勝利は狙わず調整や練習の大会と位置付ける。いろんな事情で参加しなければならない500以下の大会ではトップギアで戦う事はしない。 MS9大会中2週連続は、インディアンウェルズ・マイアミ、マドリード・ローマ、カナダ・シンシナティの3回ありますから、それぞれ1試合ずつ3試合を調整の大会とすると、MS6大会、それとGS4大会がターゲットになります。 この10大会をSF、QF半々で成績を残して行くと、GS:1,960pt、MS:1,620pt、その他の8大会は調整なので平均90ptとし720pt、合計4,300ptを最低ラインとし、GS、MS優勝・準優勝を果たし大きなポイントを加算して行く。元々これが目標ですから!GSのSFが一つ優勝になれば+1,280pt、MSのSFが一つ優勝になれば+640pt、合計1,920pt。年間ポイント6,220pt+ツアーファイナルズのポイントとなれば、トップ3、あわよくばトップ2の可能性も出て来ます。皮算用甚だしいと思われている事と思いますが、現実的にこれと似た様な成績を残さなければ、錦織選手が目的を果たす事は出来ません。 この目標達成の為には、怪我をしない体づくり・怪我をしないプレーの仕方、これにプラス「怪我をしないスケジュールの徹底」が必要ではないでしょうか。 ここ最近、こんな事が頭の中を巡っておりました。