こんにちは。 ジャパンOP、第2シードの錦織圭はSFで姿を消すことになりました。しかもその相手は今年の全米で敗戦を喫したペール。これで2大会連続で同じ相手に負けてしまいました。非常にショッキングな敗戦です… 500大会のSFで敗退したこと、ランキングが30位代の選手に負けたこと、この2つは仕方のないことだと思います。ですが1か月ほどしか間が空いていない中で、同じ格下の相手に連敗したことはTOP選手とすればかなり屈辱的です。 この試合の敗因を錦織は「ペールが第2セットからプレーのレベルが上がり、それに対応することができなかった」とコメントしています。 この試合、私は幸運にも会場で観戦することができました。VTRで見て振り返りながら書いていこうと思います。 第1セットは圧巻の一言。 1stサーブの確率は71%、2ndサーブのリターンは鋭いうえにミスが少なかったです。ペールの2ndサーブになったときのポイント獲得率は25%。 第2、第6ゲームでキレのあるストローク、特にバックハンドがペールのコートに突き刺さり2ブレイク。 このセットはウィナー9本に対してUEが2本。 最初からかなり集中して、そしてアグレッシブに試合に入っていました。 錦織がこのプレーをしたなら勝てる選手はいないのではないか、そう思わせるほど圧巻のプレー。 ラリーになるとペールは、錦織の鋭く厳しいところを突いてくるストロークに押されほとんど何もできない状態でした。 第2セットになるとペールが変化をつけてきます。 第2ゲーム、ラリーの中にスライスやループ気味のボールを混ぜてきました。結局このゲームは0-30から錦織がキープしますが少し嫌な感じがしました。第1セットで看板を蹴ったり、審判に文句を言ったり、ポイント後に大きなリアクションをしたりしていたペールが、第2セットに入ると急に静かになり集中し始めたのです。そしてラリーではスライスやループボールを使って錦織のペースにさせない戦術を展開。しかし錦織も第1セットの勢いそのままにBPも握らせないままキープします。 そして迎えた第7ゲーム、ペールのDFとフォアのミスで0-30。ここで錦織は2ndサーブに対してポジションを下げたにもかかわらず、リターンは大きくアウト。続く2ndサーブのリターンでは前にポジションを取るもネットにかかります。 ここで第1セットのスタッツを思い出しましょう。錦織はペールの2ndサーブになったときは75%の確率でポイントを獲得しています。前述の通りペールがラリーの戦術を変えてきてはいましたが、それでもポイントは取れていました。つまりこの2本はラリーに持ち込まなければいけなかったポイントだったのです。それはおそらく、少なくとも1本目では錦織もわかっていたのだろうと思います。だからこそポジションを下げてリターンしました。しかし結果は大きくアウト。なぜでしょうか。 これはリターンのうまい錦織だからこそ起こりえたことだと思います。しっかりと構えができていて、自分の予想通りしかもワイドのコースに来た2ndサーブはいつもであれば厳しいコースを狙いに行きます。第1セットであれだけいいリターンができていたなら尚更です。しかし、今回はラリーに持ち込むという考えが頭の中にあった。そして錦織はエースを狙いに行き、迷った分だけアウト。そして迷うくらいならいつものように叩こうと思った次のポイントではネットにかけてしまいました。 結局このゲームはペールがキープ。 その後ペールは勢いに乗ります。よく走り、鋭い打球を錦織のコートに叩きつけます。一方の錦織は第1セットのプレーレベルに戻そうとするも全くその気配はなし。マッチポイントを握りながらも敗戦を喫したあの試合を見ているようでした。 錦織自身も第2セット第7ゲームの途中で、ここを落とせばペールは一気に流れに乗ってくると感じていたはずです。全米では錦織が攻め急ぎ、大事なポイントでミスを重ねてしまい負けてしまいました。その上で今回も大事なポイントで攻め急ぎ、ミスを重ねました。同じ相手に同じ負け方です。これは錦織圭自身というよりも錦織陣営の問題であると認識しています。第1セットを圧倒して取った後に第2セットをどう取っていくのか。大事なポイントはどうやって取っていくのか。戦術を立てて実行できなければなりません。 今年はコツコツとポイントを積み重ねているおかげでファイナル出場はほぼ確定しています。なのでプレッシャーがあまりかかっていない中でMS2つを戦うことができます。上海ではタフなドローになってしまいましたが、より戦術的に戦ってほしいと思います。