GS18大会連続でベスト8入りを続けてきたマレーの試合が始まりました。対戦相手のアンダーソンは今年のWB4回戦でジョコビッチを2セットダウンまで追い詰めるなど実力のある選手。全豪、WBに続く年間3大会目のグランドスラム4回戦進出という好成績を残していたのですが、その一方で4回戦の壁を過去7度の挑戦で一度も突破したことのない選手でもありました。彼の武器は長身を生かしたビッグサーブと強烈なフォアハンド。個人的にはメンタルに難がある点も含めてベルディヒに似た戦い方をする選手だと思っています。第1セットをタイブレークで奪うと続く第2セットはマレーのセカンドサーブを叩いて攻め込み2度のブレイクに成功。このまま行けばアップセットが見えてきます。  しかしマレーも頑強に抵抗しました。1-5から1ブレイクを返して追い上げ、さらに3-5からもデュースに持ち込みさらにBPを握りました。ここでブレイクバックが決まっていれば大きく展開は変わったでしょう。だがアンダーソンも3度目のデュースでキープ成功し、マレーを2セットダウンに追い込みます。続く第3セットはブレイクを奪い合う一進一退の死闘になりましたがタイブレークでマレーが強さを見せ1セット奪い返しました。  今までのアンダーソンであればここで終わっていたでしょう。だが今回のアンダーソンは一味違うところを見せてくれました。第4セットに入っても素晴らしいプレーを連発しマレーにブレイクどころかBPすら許さなかったのです。試合はタイブレークにもつれ込みましたがここでアンダーソンは更なる集中力を発揮、マレーのサービスポイントをことごとく破ってタイブレーク7-0の圧勝で大金星を掴み取りました。試合通して81本ものウィナーを放ち、マレーのBPを8度も凌ぎました。スタッツの中で特に印象的だったのはマレーの「フォースドエラー」の数でその数なんと42個。アンダーソンがいかにストローク戦に打ち勝ったかを示すデータでした。 #Anderson "Top 10 has been a lifelong dream. Feel I'm getting closer. Even top 5, that's where I want to be #usopen pic.twitter.com/8S1763V4kK— US Open Tennis (@usopen) 2015, 9月 8  「8度目の正直」で4回戦の壁を壊し自身初めてのベスト8に進んだアンダーソン。準々決勝では過去4連勝中のワウリンカと対戦します。ベスト4進出、そして彼自身が目標と語るトップ10入りの実現も十分あり得る状況です。  残りの試合ではガスケが第2セット以降見事な逆襲を見せ最後はベルディヒを圧倒、WBに続いて2大会連続のベスト8入りと好調を維持しています。そしてフェデラーは強敵イズナーを3セットで退け失セット0のままベスト8入りを決めました。フェデラーは第1セットのタイブレークでイズナー相手に7-0というスコアを記録。イズナーがタイブレークで1点も取れなかったのは通算429回目にして初めてという驚きの記録が飛び出しています。フェデラーの勝負所における集中力は信じがたいものがありました。5度のBPを与えたものの全て跳ね返し、そして2度のタイブレークをしっかり奪いました。第2セットを締めくくったこのプレーにはため息をつくしかありません。 The best of the best!! FEDERER pic.twitter.com/ihy75ZxrAZ— Sofia_RF (@Sofia__RF) 2015, 9月 8  そんなボトムハーフの激戦をよそにわが道を進むはジョコビッチ。トップハーフの残る3人は果たしてジョコビッチに一矢報いることができるのでしょうか。 <ジョコビッチ×F・ロペス>  4回戦ではやや苦しんだジョコビッチ。だが彼が最も優勝に近い選手であること事実に一切変わりはありません。準々決勝は33歳にしてWB以外のGSでは初めてとなるベスト8入りを果たしたF・ロペスが対戦相手。過去の対戦成績は5勝0敗と圧倒しており死角は見当たりません。ロペスはビッグサーブと見事なボレーを使いこなす強敵で、現代において稀有なそのプレースタイルに対応できず敗れ去る選手が多発。だがジョコビッチのコートカバー力とパッシングショットの正確さは彼の前進を食い止めることでしょう。ロペスに必要なのは4回戦のアグートのように観客を味方につけることかもしれません。ジョコビッチの集中を切らすことができれば、少なからずチャンスが出てきます。   <チリッチ×ツォンガ>  ディフェンディング・チャンピオンのチリッチがここまでシードを守って勝ち上がってきました。既にトップ20への残留は確定しており、さらにポイントを稼げは近い将来のトップ10復帰が見える位置で全米を終えることができるかもしれません。長い間格上の存在だったツォンガとの対戦ですが実は4勝1敗(CHを含めても4勝3敗)と好相性。現在3連勝中と得意の対戦相手を下せばGS通算3度目となるベスト4入りとなります。 一方のツォンガは組み合わせにも恵まれました。対抗シードのモンフィスや錦織が初戦で姿を消した恩恵をダイレクトに受けたツォンガは4試合ともノーシード選手との対戦に。彼らをいずれも苦も無く打ち破ったツォンガはフェデラー同様に失セット0でベスト8に進出しています。だが苦手な上に今大会初めての強敵となるチリッチ戦、おそらく厳しい戦いとなるのではないでしょうか。対チリッチ3連敗の間はセットすら取れていないため、まずはしっかり自分のサービスゲームに集中しリズムを作っていくのがよいかもしれません。