2回戦に勝ち残った男子の西岡良仁、女子の奈良くるみがいずれもストレートで敗れ、日本勢は大会4日目にして全員姿を消した。  西岡は第30シードのトーマス・ベルッチ(ブラジル)との左利き対決。しかし、立ち上がりからまったく精彩がなかった。ポール・アンリ・マチュー(フランス)との1回戦で見せた冷静な展開は影もなく消え、第1セットが0-6のスタート。獲得ポイントが相手の25に対し僅か7、しかもウィナーが0は尋常ではない。それもそのはず、1回戦の試合終盤から喉に違和感があり、風邪の症状が出ていたという。 「熱は出ていませんが、疲れが抜けず、全力でプレーできる状態ではなかった。去年のこともあったので、普段から風邪には気を付けていたんですが」  去年は、せっかく予選から勝ち上がりながら風邪の影響で1回戦は途中棄権。今年の全仏オープンも風邪を引いていたという。ここまで風邪に憑りつかれるのであれば、何か理由があるはずだ。  西岡は予選3試合を勝ち上がってきたが、その3試合がすべてフルセットだった。試合時間はトータル5時間34分。さらに、マチューとの1回戦も炎天下のフルセットにもつれこんで3時間22分に及んだ。西岡は自己申告の身長170㎝、体重64㎏と一般高校生並みの体格。パワー時代のいま、見劣りすることは再三にわたって指摘されてきた。今回はプレー以前の段階で、そのマイナー部分が出てしまった。 「ファイナルが続いて体力が削られていたと思う。自分は全身を駆使しないと勝っていけない。グランドスラムで風邪を引くのは、フィジカル面の弱さだろう。改善したい」  日本のテニス選手は、松岡修造氏(188cm)を例外に、全日本選手権で7度優勝の福井烈氏(170cm)を典型に小柄選手が活躍した。体格のいいジュニアは、かつては相撲と野球に、現在はサッカーに流れてしまうからと言われる。いま期待されている若手に、ダニエル太郎(190cm)やサンティラン晶(178cm)、女子では大坂なおみ(180cm)といったハーフの選手が目立っているのは、体格に恵まれたDNAに負うところが大きい。その意味で、西岡が抱える「体格のハンディ→疲労→体調悪化」の連鎖は、日本のテニスの宿命の一端として捉えられる。  体格面のハンディを露呈したのは、ツアーで最も身長が低い155㎝の奈良くるみも同様だった。相手のシェルビー・ロジャース(アメリカ)は世界ランク154位と格下だが、175㎝、70㎏の体格をフルに使ったサーブ、ショットの威力に主導権を奪われた。第1セットのサービスブレークの応酬という流れを断ったのはロジャースだったし、一転してサービスキープが続いた第2セット、やはりロジャースが先にブレークした。奈良も必死に守ったが、1回戦でアリゼ・コルネ(フランス)とフルセットを戦った疲れが残っていただろう。集中力に欠けた。  疲労の蓄積は集中力の欠落に繋がる。休養明けだった錦織圭の緒戦敗退に始まり、土居美咲のマッチポイント3本からの逆転負け、この日の2選手の完敗で幕を閉じた日本選手の全米オープンは、体力強化という重いテーマを残した。 文:武田薫