錦織本人にとっても、錦織ファンにとっても、非常に辛くて悔しい初戦敗退になってしまいました。 確かにトップシードの選手がビッグトーナメントで早期敗退するというのは特別珍しいことでもないですし、今大会の初戦がペールになった時点で初戦敗退もあり得ると覚悟はしていたつもりなのですが、実際起こってしまうと虚脱感が半端ないです・・・ とりあえず試合が終了してからかなり時間も経って、ある程度この試合の感想もまとまったので短めに書いてみようと思います。 まず、敗戦したこと自体は仕方のないことだと思います。先ほども書きましたが、トップシードの早期敗退はグランドスラムでも稀に起きることですから、今回は運悪くそれが錦織になってしまったというだけです。ですから、敗戦自体は悔しいですが受け入れます。 ですが、個人的に問題だと感じたのはその負け方が今回はあまりにも悪かったということです。 具体的に書くと、なぜ自分のテニスを最初から貫かなかったのかということです。 錦織が負けた後、WOWOWの解説者のコメントや、錦織本人のコメント、ネットでの様々な意見をある程度読みました。「第4セットのタイブレークの落とし方が悪かった」「ペールがリズムをくれなかった」「初戦で緊張していた」「第4シード・去年準優勝の重圧があった」などの意見が大多数でした。 まあ、確かにそれらの意見は間違ってはないと思いますし、敗因の一つだとは思います。ただ、なぜか自分はこれらの意見に完全に納得できませんでした。 それで、悶々とナダル戦を横目に観ながらあれこれ考えを巡らせた結果、ようやく自分の納得いく答えが見つかりました。 それが、先ほど書いた「なぜ自分のテニスを最初から貫かなかったのか」です。 今日の試合を見ていた方なら分かると思いますが、テニスというのはリズムが非常に大事なスポーツです。そして、そのリズムを掴むためには大まかに分けて2種類の方法があります。 1つ目は、今日のペールのように積極的に自ら仕掛けていってリズムを掴む方法です。 2つ目は、今日の錦織のように相手のミスを誘って相手からリズムを奪い徐々に自分のリズムを掴む方法です。 それで今夏の錦織の試合を思い出してほしいのですが、錦織が今夏に目指していたテニスというのは「ミスを恐れず積極的にウィナーを奪いに行く」テニスですよね。プレースタイルや精度の違いこそあれ、錦織の本質はペールと同じく攻撃的なテニスでリズムを作るタイプの選手なんです。 その錦織が今日は最初から慎重に、言い方を変えれば消極的に、更に言い方を変えれば自分のテニスを捨てて戦っていました。これじゃあ錦織がリズムを掴めなくても仕方ありません。 というわけで、「なぜ自分のテニスを最初から貫かなかったのか」という感想になるわけです。 まあ確かに、グランドスラム初の第4シード・グランドスラム初戦・相手が難敵ペールでしたから、慎重に戦う戦術を取るのも分からないわけではないです。 しかしあえて厳しいことを書くと、錦織が目指しているテニスはそんなことで捨てちゃうようなものなのか、ということです。 私は絶対にそんなことはないと信じています。錦織の今夏に見せた攻撃的テニスは去年よりも更に攻撃力が上がっていると感じていましたし、あのテニスを完成させればトップ3とも互角に戦えると本気で思っていましたし、今大会の優勝もありえると思っていました。 ですから、余計に今回の試合でその攻撃的なテニスを最初からしなかったことにがっかりしているのです。 以上が、私のこの試合の感想となります。かなり批判的な意見となっていますが、私が錦織のグランドスラム制覇を信じているからと分かっていただければ幸いです。 <おまけ ナダルVSコリッチ戦の感想> ナダルがリターン含めて攻撃的なスタイルを取り入れていた。まだまだ精度は低いけど、かなり楽しみだし復活の予感を十分感じられた。 コリッチも将来のチャンピオン候補というところを十分感じさせてくれた。この先、さらに攻撃力アップとフィジカル強化をしていけばトップ10は確実。 本当に1回戦で当たるにはもったいない濃密な戦いでした。