錦織選手は、一番よく見ている選手だと思いますが、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか?以前はエアケイが持て囃された時期もありました。また、多彩なショットを放つ天才肌、リターナー等様々なイメージがあると思いますが、今回は改めて数字を見ながら特徴を見返してみたいと思います。  今までハードコートが得意と言われている錦織選手ですし、夏のハードコートシーズンも始まり、USオープンまで非常に期待の高まる所でもありますので、ハードコートの数字も併せて見て行こうと思います。 (スマホの方は横画面でご覧下さい。)         オールサーフェス     ハードコート 【勝率】 プレーヤー  キャリア   今年    キャリア  今年 1.ナダル    83.0%  73.9%(8)    77.5%  66.7% 2.ジョコビッチ 82.0%  94.1%(1)    83.3%  92.6% 3.フェデラー  81.6%  85.1%(3)    83.1%  88.9% 4.マレー    77.0%  87.3%(2)    77.9%  80.8% 5.フェレール  68.8%  80.0%(5)    64.6%  85.0% 6.ラオニッチ  67.0%  69.4%(9)    70.6%  70.8% 7.錦織     66.6%  80.9%(4)    67.2%  80.8% 8.ベルディヒ  65.8%  76.9%(7)    65.4%  79.3% 9.チリッチ   64.5%  58.3%(10)    66.8%  00.0% 10.ワウリンカ  62.2%  77.3%(6)    61.2%  80.0% 【トータルポイント獲得率】 1.ジョコビッチ  54%   56%(1)     54%   56% 2.フェデラー   54%   54%(2)     54%   56% 3.ナダル     54%   54%(2)     53%   54% 4.マレー     53%   54%(2)     53%   54% 5.ベルディヒ   52%   54%(2)     52%   55% 5.フェレール   52%   54%(2)     52%   54% 5.ラオニッチ   52%   52%(9)     52%   52% 5.チリッチ    52%   51%(10)     52%   45% 9.ワウリンカ   51%   53%(7)     51%   53% 9.錦織      51%   53%(7)     51%   53%  こうして見ますと、錦織選手の数字にこれといった特徴を読み取る事は出来ません。キャリアデータより今年の方が、オールサーフェスで見るより、ハードコートの方が良いという事は解りますが、ランキング5位のデータにしては逆に少し物足りなくも感じます。特にポイント獲得率51%で最下位、何故これくらいの数字でも上位にいるのか、当然、マイケルチャンコーチが就いてからの躍進がありますが、以前から持っている錦織選手の特徴にも後ほど触れて行きたいと思います。それにしても、今年のデータは飛躍的に上がっていますね。多分、昨年の春先ごろから飛躍的に伸びているのだろうと思いますが。又、調子を落としているチリッチ、ナダル以外の選手は皆、今年の数字が伸びています。それだけ、今年はストロング9(チリッチ以外)が際立っているという事でしょうね。 次のデータに移ります。 【対トップ10勝率】 プレーヤー  キャリア  最近1年 1.ナダル    66.5%  25.0%(7) 2.ジョコビッチ 65.3%  90.0%(1) 3.フェデラー  65.2%  63.6%(3) 4.マレー    52.7%  54.5%(4) 5.錦織     39.7%  37.5%(5) 6.ワウリンカ  36.3%  75.0%(2) 7.フェレール  33.8%  33.3%(6) 8. ベルディヒ  30.7%  18.2%(8) 9.ラオニッチ  29.8%  22.2%(9) 10. チリッチ  26.4%  00.0%(10) 【決勝勝率】 1.ナダル    69.5%  66.7%(4) 2.ジョコビッチ 69.3%  75.0%(3) 3.マレー    68.0%  60.0%(6) 4.フェデラー  66.2%  57.1%(7) 5.錦織     64.3%  66.7%(4) 6.チリッチ   59.1%  00.0%(8) 7.ワウリンカ  52.6%  100.0%(1) 8.フェレール  49.0%  100.0%(1) 9.ラオニッチ  42.9%  00.0%(8) 10. ベルディヒ 37.0%  00.0%(8) 【フルセット勝率】 1.錦織     78.8%  76.9%(4) 2.ジョコビッチ 74.5%  92.3%(1) 3.ナダル    69.3%  54.5%(9) 4.マレー    69.1%  77.8%(3) 5.フェレール  64.8%  90.9%(2) 6.フェデラー  64.3%  71.4%(5) 7.チリッチ   62.8%  66.7%(6) 8.ラオニッチ  59.1%  66.7%(6) 9.ワウリンカ  58.1%  50.0%(10) 10. ベルディヒ 56.2%  63.6%(8)  対トップ10の勝率は、今後のNO.3、NO.2への可能性を示す数字、本当の実力を示す数字だと思います。この数字でビッグ4の次にランクインしている事は非常に意味深いです。今年のアカプルコ決勝のフェレール戦!何となく負けた、という感じがしているのですが、ああいう試合をものに出来るか否かという事が、案外重要な事だなぁと感じます。タラレバですが、あの試合に勝利していれば、対トップ10勝率41%(キャリアデータ)、第2グループで唯一40%台という事になります。最近ではフェレールに負ける事が殆んど無くなり、今年の全豪では3-0で勝利し、実力の差が歴然と出てきたかなと思う程でした。アカプルコはボールやコートに難ありという事もあります。決勝は大事に行き過ぎていたのか、何と言えばいいのでしょうか、錦織選手の気合が入る前に、フェレールが気持ちで勝り持っていってしまった。何となく負けた、、感がしました。トップ同士ですからいつも勝てる訳ではないですが、フェレールの様な相手とのああいう試合をきっちり物にして行く事も、今後、重要になって来る様に思います。  この夏のシーズンでは、トップ10との試合を何回見る事が出来るでしょうか。是非、トップ3、ビッグ4との対戦が楽しみです。今年はジョコビッチ、マレーと対戦がありましたが、完全に封じ込まれていました。錦織選手も対策をして臨んでくる事でしょう。楽しみです!  決勝・フルセットの勝率は、正に勝負強さを計るバロメーターだと思います。又、タラレバですが、先程のアカプルコで勝っていたら決勝勝率キャリア70%台(70%台の選手はいません。)、今年に至っては3戦全勝100%という事になっていました。フルセットの勝率は、もうみなさんも良くご存じ、錦織選手は今年に入っても、キャリアデータで1位(トップ10の中で)を保持しています。  対トップ10・決勝・フルセット、これらの数字はどれも勝負強さを示していると思います。キャリアデータでポイント獲得率51%の錦織選手が、この3つの項目で示す高い数字は、いかに錦織選手が勝負強いかという事を証明しています。比較対象に出して申し訳ないですが、ベルディヒなどは、ポイント獲得率52~55%と常に錦織選手より1~2%高いにもかかわらず、3項目で錦織選手に大きく水をあけられています。全試合の勝率でも同じです。他の選手と比べても数字の差はあれ、同様の事が言えると思います。  これですね。錦織選手の特徴は!そんなこと分かってたよ。という方もいらっしゃると思いますが、数字で見ると尋常じゃ無い「勝負強さ」です。  ベルディヒと言えば、2010年のウィンブルドンでフェデラー、ジョコビッチを倒して決勝に進んだ。あの時の印象が非常に強いのですが、実はあまり勝負強くはないのですね。今年は11位以下の選手に対する連勝記録を伸ばしていましたが、上位にはあまり勝てない。下には強いが、上には弱い(どこかの課長さんみたいですね。)、勝利がかかった場面、優勝が懸った場面、取っても取られてもこれで終わり、といった場面で、平常心を失くし崩れて行く。そういうタイプなのかもしれませんね。でも、プロの中でもこういうタイプは非常に多い。キャリアを積み重ねないと身に付かない面もありますし、キャリアを重ねても決勝等大事な場面で勝ったり負けたりの回数を重ねないと身に付かないものですね。ナダルくらいじゃないでしょうか。そういうプレッシャーをものともせず、最初から、ガンガン上を食って行ったのは。  錦織選手の試合を思い返してみますと、やはり昨年の、あのUSオープンが浮かんで来るのですが、ラオニッチ、ワウリンカ、ジョコビッチ戦、特にジョコビッチに勝って決勝進出が決まるという場面でも、ビビっていなかった。様に見えました。大物なんですね。チリッチ戦は、勝負強さを出す場面までも行かず、終わってしまいました。対戦相手がフェデラーでなく、当時はもう格下になっていたチリッチだったせいで、大事に行こうと思ってしまったのか、最初から思い切って行けなかったのかなぁ?  話が横に逸れましたが、錦織選手は大事な場面で、勝ちを意識し過ぎず、ビビらず、大事に行くだけでなく、そんな場面でも思い切ったプレーが出来る。こんなプレーヤーはそうそう居ません。だいたいが、そういう場面でビビったり、大事に行くだけでプレーが小さくなって行くものです。  あと3本、あと2本、あと1本でセット取得、勝利、決勝進出、優勝、ビックプレーヤーに勝てるという場面のプレーが、素晴らしいという事ですね。 ココに結論付けたいと思います。 最後に、リターナーとしての特徴も見ておきます。 【サービスゲーム獲得率】         オールサーフェス     ハードコート プレーヤー  キャリア   今年    キャリア  今年 1.ラオニッチ   91%   94%(1)     91%   94% 2.フェデラー   88%   89%(3)     89%   92% 3.ナダル     86%   85%(6)     85%   87% 4.ジョコビッチ  85%   91%(2)     86%   89% 5.ベルディヒ   84%   85%(6)     85%   85% 6.チリッチ    83%   85%(6)      83%   60% 7.マレー     82%   85%(6)     81%   81% 8.ワウリンカ   82%   88%(4)     82%   88% 9.錦織      79%   86%(5)     78%   87% 10.フェレール   78%   81%(10)     78%   81% 【リターンゲーム獲得率】 プレーヤー  キャリア   今年    キャリア  今年 1.ナダル     33%   32%(2)     29%   30% 2.ジョコビッチ  32%   32%(2)     32%   35% 2.マレー     32%   32%(2)     33%   34% 2.フェレール   32%   36%(1)     30%   34% 5.フェデラー   27%   27%(6)     27%   33% 5.錦織      27%   29%(5)     27%   29% 7.ベルディヒ   25%   27%(6)     24%   31% 8.ワウリンカ   24%   23%(8)     23%   23% 9.チリッチ    23%   15%(9)      24%   20% 10.ラオニッチ   15%   12%(10)     14%   11%  意外に、リターンゲーム獲得率は真ん中の辺りですね。まぁトップ10の中だから仕方が無いかもしれませんが、この中に入ってしまうとリターナーとは言えないかもしれません。サーブとリターン両方を見てリターナーと言えるのはフェレール。ナダルはどっちですかね。錦織選手はオールランドプレーヤーですね。特に今年のサーブゲームの数字が高い、この中でもベスト5に入ります。また、リターンゲームも上がって来ています。芝での戦いを見ても十分やって行けそうな感じがしたのは、こういうところから来ているのでしょう。  こうやって見て来ると錦織選手は、多彩なショットを持つ天才肌、守備位置を高く保ちライジングボールを打ち返し早い攻撃が出来る技術の高い選手、ハードコートが得意、リターンの名手等色々特徴はありますが、一番は「勝負強さ」でした。  今後の課題は、昨年USオープン決勝のチリッチ戦、今年アカプルコ決勝のフェレール戦の様に強豪だが今では若干格下というような相手との大事な試合で、大事に行くのではなく、錦織選手らしく、最初からトップギアで思い切って入って行って欲しいと思います。今年の全仏QFのツォンガ戦もそうでしたね。最初の入り方が大人しかったように感じます。そういう選手たちとの実力差は紙一重だと思います。双方が全力を出し切って、何とか勝てる位の相手だと思いますので、最初からガツンと行って下さい。  それにしても、改めて錦織選手の高い可能性を見た気がします。でも、今年はトップに対してまだまだこれから!いよいよ来週は、ワシントン、MS×2、USオープン!!楽しみですね。