目下今夜の注目は二日目に持越しとなった「クレー無敗決戦」ジョコビッチvsマレーでしょうが、そのあとには女子決勝が行われます。説明不要の絶対女王セリーナ・ウィリアムズと挑戦者サファロバというカード。過去の戦績はセリーナの8勝0敗とサファロバを全く寄せ付けておりません。「順当に行けば」セリーナが史上単独3位となるGS20勝目を成し遂げることになります。既に全仏以外ではそれぞれ5勝以上挙げているセリーナにとって、全仏3勝目は同時にグラフ以来となるトリプル・キャリアグランドスラムの達成を意味します、  だが今大会のセリーナは非常に不調で、初戦と準々決勝しかストレート勝ちがありません。それ以外の4試合は全て第1セットを奪われてビハインドからの勝ち上がりです。準決勝ではスイスのバジンスキーの快進撃を食い止めましたが、それは極度の体調不良からカムバックしての逆転勝利。執念の10ゲーム連取で決勝に進んできました。セリーナの体調不良は続いており、この状況なら28歳と遅咲きのサファロバにもチャンスはあります。 For 4th time this tourney #Serena fights back after losing 1st set to win the match. She d. #Bacsinszky 4-6 6-3 6-0. pic.twitter.com/xUCLFJKEaY— Roland Garros (@rolandgarros) 2015, 6月 4  この試合に勝てばGS勝利数単独3位となるセリーナが目指すのは歴代2位の22勝を挙げているグラフでしょうが、二人のGS獲得ペースは対称的ともいえます。グラフはその勝利のほとんどを全盛期に挙げています。69年生まれのグラフは20代半ばの96年までに22勝中21勝を獲得し、残り1つは20代最後のGSとなった99年全仏で取りその年に引退。一方セリーナ全盛期に挙げた勝利数はそこまで多くないものの30代に入ってからも全く衰えることなくGSタイトルを積み重ねています。30代に入って以降獲得したGS数はなんと6個に上り、そしてさらに7個目に王手をかけています。  ここで、セリーナ以外はどんな顔ぶれが女子のGSを制しているのか見てみましょう。  過去10年のメンバーだけでこんなに引退者がいる表を見ると、男子のGS勝者表に見慣れている人にとっては驚きではないでしょうか。ちなみに男子はサフィンのみ。  エナンとクライシュテルスのベルギー勢二人はウィリアムズ姉妹に唯一はっきりと対抗できる存在でした。しかし彼女たちは既に表舞台を去っています。彼女たちが表舞台を去るのと前後してセリーナが復活。復活したセリーナを抑えるのは若き女王アザレンカと円熟期を迎えたシャラポアのはずでしたが、彼女たちではセリーナを抑え込むことができませんでした。果たして30代にして成績上は全盛期を迎えたセリーナは毎年のようにGS勝利数を伸ばしていくことになっています。  この表の中では最も若いクビトバ、次に若いアザレンカはともに現在25歳を迎えています。25歳が現役最年少グランドスラマーなんて時代が果たして過去にあったのでしょうか(男子も同様に現在チリッチの26歳が最年少)。20代前半の生きのよい選手たちがもう少し頑張らないとセリーナはまだまだGS取り放題です。来年にもグラフに並ぶかもしれません。  ところが奇妙なことに、実は男子と違って世代交代自体は着実に進んでいるのが女子の特徴です。  ランク上位にはこれほど多くの若手選手がいます。クビトバより年下という比較で出したため若手とは言い難い24歳の選手も入っていますがそれを考慮しても多くの選手が上位にいます。だがGSのタイトルにだけはどうしても手が届かないのが今のWTAの現状です。これを一番最初に打破し、世代交代一番手に名乗りを上げるのは果たして誰になるのか?その課題はウィンブルドン以降に持ち越しとなりました。その旗頭となるべき、昨年の全仏では準優勝だった世界ランク3位のハレプは今年あっさりと2回戦で敗退してしまいました。  記事の内容に直接関係ないですが、個人的には若手陣では今回の全仏ではベスト8に入っているムグルッザを推しています。昨年の東レではウォズニアッキと死闘ともいえる準決勝を戦い惜しくも敗れたもののベスト4に入っています。勢いに乗ったときには気持ち良いほどの強打の嵐を繰り出す選手です。