大会2週目に入って中身の濃い試合が展開され、男女のベスト8が出そろった。  センターコートの第1試合、いきなり波乱があった。昨年の優勝者で、第2シードのマリア・シャラポワ(ロシア)が第13シードのルーシー・サファロバ(チェコ)にストレート負け。07年のジュスティーヌ・エナン以来、前年覇者は防衛得出来ないというジンクスが続くことになった。  シャラポワは大会前から風邪気味。グランドスラムの終盤に入れば、僅かな〈ほころび〉も抉り出される。サファロバは安定したショットに加え、左利き特有のワイドな攻撃で積極的に攻め、かつ我慢強い。好天は戻っても相変わらずの風の強さ。シャラポワのサーブの不安定が競った展開に影を落とした。第1セット、ブレークチャンスをなかなか生かせなかったシャラポワに対し、サファロバは第3ゲームに訪れたこのセットで唯一のブレークチャンスをつかんでプレッシャーかけた。第6ゲームのブレークバックでもつれ込んだタイブレークの5ポイント目、シャラポワに痛恨のダブルフォルトが出て第1セットを落とした。第2セットも似たような展開になったが、サファロバはシャラポワのファーストサーブの確率が54%まで落ちたところを狙って攻撃を緩めず、ストレートで決着をつけた。ウィナー数がサファロバの34に対しシャラポワは20。サーブの弱点をつかれた。  第1シードのセレナ・ウィリアムズ(アメリカ)も苦しかった。2年前の全豪で敗れた妹分のスローン・スティーブンス(アメリカ)が強力なフォアハンドを物怖じせずに打ち込んだ。シャラポワ同様に体調が万全でないセレナは、持ち前のサーブが迫力に欠けて攻めのリズムに乗れない。3度のサービスブレークを許して第1セットを落とした。しかし、セレナを救ったのはやはりサーブの破壊力だ。第2セット、スティーブンスが激しいラリー戦を挑んだが、セレナは窮地に立つと強烈なサーブで切り抜けセットタイに。ファイナルセットに入ってからはミスも減って逆転勝ちした。第4シードのペトラ・クビトバ(チェコ)は、格下のティメア・バシンスキー(スイス)を相手に41本のミスで自滅。波乱が続いた中、第17シードで3年前の準優勝者サラ・エラーニ(イタリア)、ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)が淡々と勝ち進み、ノーシードで21歳のアリソン・バン ウィトバンク(ベルギー)が8強入りしている。  男子は第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が落ち着いたプレーで地元のリシャール・ガスケを退け、第2シードのロジャー・フェデラー(スイス)もやはり地元のガエル・モンフィスを破り、第3シードのアンディー・マレー(イギリス)、大会5連覇中のラファエル・ナダル(スペイン)、一昨年の準優勝者でクレー巧者のダビド・フェレール(スペイン)――波乱の多いと言われるこの大会で、上位8シードの選手のうち7名が8強入りを果たしている。  錦織圭がジョーウィルフライ・ツォンガ(フランス)と対戦する準々決勝は、現地2日午後2時から始まるセンターコートの第2試合。そこを突破すれば準決勝で顔を合わせる、フェデラーとスタン・ワウリンカによるスイス対決の行方も気になるところだ。 文:武田薫