お互い慎重な出だしでした。立ち上がりはレベルが高いながらも手探りのストロークの打ち合い。しかし今日はドバイの時とは様相が違いました。準決勝までは相手を圧倒していたフェデラーのフォアハンドに今ひとつ輝きが見られず、ラリーに入るとことごとくジョコビッチのポイントになりました。サーブでピンチを何度も凌いだフェデラーでしたが、5度目のBPを凌ぎきれず、ジョコビッチにブレイクを許します。  フェデラーも徐々に調子を上げ始めましたが、ジョコビッチの1stサーブに行く手を阻まれ思うようにポイントをとれません。第1セットは実に70%の高確率で1stサーブが決まり、ポイント獲得率は100%と完ぺきでした。フェデラーがせっかく0-30まで持って行っても、最後のゲームで粘って30-30としても、ジョコビッチの強力なサーブが突き刺さりフェデラーはチャンスを作れません。  第1セットを先取したジョコビッチが第2セットも押し込みます。しかし見ている側ほどの差をジョコビッチは感じていなかったようです。相手はあのロジャー・フェデラー。うまく封じ込めてはいるものの、乗せてしまったら一気にまくられてしまう…BPを凌ぎ第2セット最初のサービスゲームをキープすると派手なガッツポーズや声が出ます。そのままブレイクを奪うと、再び訪れたブレイクのピンチをしのいで3-1とリードを奪いました。これで勝負あったかにも思えました。  だがジョコビッチの危惧が現実のものとなりつつありました。曇っていた空が晴れ午後の日差しが差し込むとともにフェデラーがアジャスト。ジョコビッチの鉄壁守備をリスクをものともしない素晴らしい攻撃で突破しポイントを奪いだしました。ジョコビッチも粘ったものの、痛いDFが響き第8ゲームついにブレイクバック。両者が一気にタイブレークになだれ込むにつれ観客のボルテージも最高潮! Watch this: Roger #Federer magic! Defensive genius turned attacking supremo. Brilliant! #BNPPO15 http://t.co/zOGVwKf47T— TennisTV (@TennisTV) 2015, 3月 22  もつれ込んだタイブレーク。勝負を決める大事なポイントの連続に両者のプレーも固くなります。フェデラーがスマッシュをミスる、ジョコビッチがDFを犯す、長い長いラリーをフェデラーが凌ぎ切って踏ん張るも5-4,ジョコビッチリード。ここでジョコビッチが2本キープすれば何事もなく勝利のはずだったのですが…DF。フェデラー贔屓の観客からジョコビッチのミスにも容赦ない拍手が起こります。メンタルを乱されたか、連続でDF…フェデラーがしっかり最後のポイントを決めてセットオールに戻しました。まさかの展開でした。ドリンクを持つジョコビッチの手が震えます。  第3セット、休憩を挟んで気持ちを落ち着けたジョコビッチが鬼気迫る姿で向かってきます。自分のサービスゲームをラブゲームでキープし、続くフェデラーのサービスゲームでは1stサーブを物ともせず返球し、あっという間にブレイク。本当に今度こそ決まったよね?  しかし直後のゲームジョコビッチは地獄を見ました。フェデラーの反撃によってデュースまで持ち込まれ、さらにBPを握られます。ジョコビッチも凌ぎますがフェデラーも譲れません。BP、デュース、BP、デュース、BP、デュース…10分以上に及んだこのゲームを最後に制したのはフェデラーでした。またしてもリードを吐き出してしまったジョコビッチは自らの不甲斐なさにラケットを2度叩き付け、壊してしまいます。 Novak #Djokovic just did this to his racquet... #BNPPO15 pic.twitter.com/TJGg3QUvwE— TennisTV (@TennisTV) 2015, 3月 22  いつまで続くかわからないこの試合。両者一度づつサーブをキープし、2-3からのフェデラーのサーブも40-15。だが何度も何度も土壇場から這い上がってきたフェデラーの体力は既に限界に達していました。らしくないミスを連発し最後はDFで力尽きました。そのままジョコビッチが押し切り勝利。 Here's how world No 1 @DjokerNole defended his #IndianWells title against @rogerfederer - http://t.co/1selnpnwWj pic.twitter.com/6vdypi30OB— Sky Sports Tennis (@SkySportsTennis) 2015, 3月 23  ジョコビッチは通算50個目のタイトル獲得となりました。師匠のボリス・ベッカーを上回る史上12人目の大記録となっています。  しかしこの38度目の勝負はなんというか、見ている側も精神が参ってしまうぐらい凄まじいものがありました。両者も極限の中で戦っていたことでしょう。二人ともミスは多く、レベルとしては過去の名勝負に比べるとかなり劣ったかもしれません。だが両者の勝利への執念はその名勝負に勝るとも劣らぬものがありました。テニスというスポーツの厳しさ、素晴らしさを惜しむ所なく見せてくれたような試合でした。両者のファイトに、そしてその勝負を勝ち切ったジョコビッチに、盛大な拍手を送りたいと思います。