ジョコビッチVSマレーの決勝は明日。今日は女子シングルスの決勝が行われます。女子にしては珍しいコッテコテの第1シードVS第2シードの対決。セリーナ・ウィリアムズVSマリア・シャラポアというカードになりました。  ところで普段男子テニスしか見ない皆さんでもシャラポアのことぐらいはご存知だと思います。まず最初に何を思い浮かべたでしょうか? ・ディミトロフの彼女 ・試合中の叫び声(その音量は90デシベルあるとかないとか) ・「妖精」言われた若き日の可愛らしい姿  とテニスのプレー以外のことで思い出すことが多いと思うのですが、今日はシャラポアがいかにテニスと向き合ってきたかについて記事を書きたいと思います。  女子テニスを知る人にとって、シャラポアがツアーで一匹狼なことは周知の事実です。ほとんど誰とも絡みません。それでも男子と交流を持つことはあるのですが、女子とは本当に全く交友関係がありません。例えばかつてここで取り上げたウォズニアッキなどはセリーナその他多くの女子選手と仲良くしています。この全豪ではアザレンカに敗れましたが試合後アザレンカは On and off the court respect and friendship! とツイートしています。ですがシャラポアはそういった絡みを一切しません。ツアーを戦うライバル同士「仲良くしたら負け」というポリシーがあるようです。  こんなエピソードからも分かる通り、彼女の勝利に対する執着心には異常なものがあります。常にストイック、ロシアからアメリカに父娘で渡り幾多の苦労を重ねてきたハングリー精神は今も健在です。  03年のジャパン・オープンがツアー初優勝。その翌年、17歳にしてウィンブルドン制覇。その美貌から世界中にシャラポア旋風を巻き起こしました。瞬く間に世界的スターになった彼女はテニスの実績も順調に積み上げていき、05年世界ランク1位達成、06年には全米制覇、08年には全豪までも制覇しました。彼女は20歳にしてテニスの栄誉をほぼすべて手に入れてしまいました。  だが14歳という若さからツアーで活動を始めた彼女の身体には負担がかかっていました。07年から徐々に怪我がちになっていったシャラポアは08年5月、世界ランク1位に復帰したのと同時に急下降、最終的には肩の腱板損傷により翌年3月までの長期離脱を余儀なくされてしまいます。その後09年、10年と彼女はランキングを2桁に落とし低迷、過去4度優勝し得意としていた日本でも10年にはクルム伊達に敗れて初戦敗退。  2010年のオフ、シャラポアは長年指導を受けていたコーチをついに変更することを発表、その成果はすぐに表れ彼女は世界ランク4位までに返り咲きます。だがまだ何かが足りませんでした、ウィンブルドンでも全米でも決勝で屈し、復活優勝はならず。そんな中、2011年シーズン終了後、シャラポアが新しく陣営に迎え入れたのが日本人トレーナー、中村豊さんだったのです。  シャラポアは基本的にとことん不器用な選手です。クレー用の滑るようなフットワークがどうしてもできない、変化をつけたテクニシャンなプレーもできない、挙句の果てには戦術ですらままならない。サーブを叩き込んで、パワフルなフォアハンドをぶっ放して、それ以外の勝ち方を知らない選手でした。だが中村さんらシャラポア陣営はそんな彼女に対してフィジカルを改善することでフットワークを強化させ、シャラポアに以前と違った武器を与えたのです。  復活したシャラポアは以前は全く駄目だったクレーで底力を発揮するようになります。フィジカル強化によって滑るようなフットワークを完全に自分のものとしました。瞬発力や持久力も改善、振られてもロングラリーでも耐えられる。またバックハンドの低いボール、長身選手の泣き所を攻められても長い足を限界まで曲げてきっちり返せるようになっていたのです。11年までのシャラポアはクレーでわずかツアー3勝でした。それが12年以降はクレーで全仏2勝を含むツアー7勝も挙げているのです、驚きです。  今でもシャラポアの不器用さは全く変わりません。サーブを打ち込み、愚直なまでにコートを走り回り、叫び声を上げながらストロークを打ち込むだけ。しかも彼女の主要な武器であるサーブは非常に不安定で、古傷である肩の故障の原因ともなってきた諸刃の剣でもあります。メンタルや風など、ちょっとした綻びが出ると途端にDFを連発してしまうほど。コートの外のシャラポアのイメージが強い人達にとってコート上のシャラポアはまるで別人に見えることでしょう。ですがそれもまた彼女の一面なのです、ある意味人間らしいと思います。  対戦相手の最強女王・セリーナは全てのショットが強力な上に、シャラポアと違ってテクニックが必要なプレーも難なくこなしますし、メンタルも最高クラスです。その差が2勝16敗…あの04年ウィンブルドンと、その歳のツアー最終戦で勝って以降15連敗中という対戦成績に表れているのでしょう。それでもシャラポアはいつも通り戦うしかないのです。それを14歳の頃からずっと繰り返してきたのですから。 pic.twitter.com/CJI05edtHQ— Micromax Indian Aces (@IndianAces) 2014, 11月 28 (去年の大規模エキシビジョン、IPTLで男子陣とはしゃぐシャラポア。マレーとミックスダブルスも組んでいました)