3年前の全豪OPをもって、1ヶ月連載してきたBIG4特集(前回の続き)はひとまず終わりにしたいと思います(多分全豪後にまたやるとは思いますが)。これはテニス界の最高点が披露された戦いでした。と同時に、日本人にとっては錦織が記念すべきGSベスト8を成し遂げた大会として覚えている方も多いでしょう。 【ベスト8】  大会前から焦点は4強の誰がジョコビッチを止めるかに集まっていました。4強は全く危なげなく勝ち進み、ナダルとフェデラーは全試合ストレート勝ちで、ジョコビッチは地元の大歓声を背に奮闘したヒューイットに2-0から1セット奪われたのみ、マレーは初戦の立ち上がりに1セット落としたのみとそれぞれ危なげない勝ちあがりでベスト8に入りました。  追う「第2グループ」も非常に高いレベルで安定していました。フェレール、ベルディヒが順当にベスト8に入ります。唯一本命不在だった第8シード、フィッシュのブロックでは前年のカムバック賞を受賞したデルポトロがその実力を見せつけて順当にベスト8入り。残りの一人も順当にツォンガに決まると思われましたが、なんと当時22歳の錦織が大番狂わせを演じました。  グランドスラムで初めてシードがついた錦織は苦戦の連続でした。初戦こそ順調に勝ち上がったものの、2回戦は地元オーストラリアのエブデンに苦戦し2セットダウンからの大逆転で辛くも3回戦進出。ベネトーとの3回戦も3時間半の長丁場になりましたが第3セット2-5から逆転してタイブレークを制してベスト16入り。もう怖いものはありませんでした。ツォンガとのバトルは錦織にとって3戦連続となる死闘になりましたが錦織の輝きは最終セットまで鈍ることがありませんでした。 【準々決勝】  当時最高の7人+錦織が揃った準々決勝。だがその4試合は4人の強さを再確認するだけの一方的な戦いになってしまいました。既に限界を迎えていた錦織はマレーの前にこれ以上ない完敗でした。デルポトロもフェデラーの緩急をつけた老獪なプレーの前に翻弄され1セットも取れず敗れました。フェレールと対戦したジョコビッチは第2セットのみタイブレークにもつれたものの、終わってみれば世界5位にほとんど何もさせずストレートで片付けました。  唯一準々決勝でセットを奪ったのがナダルと対戦したベルディヒ。第1セットをタイブレークで奪うと第2セットのタイブレークでもSPを握って前に出ます、だがバックハンドボレーが痛恨のサイドアウト。第3セット以降はナダルが躍動し順当に準決勝進出を果たしました 【4度目の4強決戦】  08年全米、11年全仏、全米に続いての4強対決となった準決勝。1年間で3度目となるハイレベルな対決の実現に否が応でも期待が高まります。まず一日早く行われたのは旧黄金カード「フェデラーVSナダル」。27度目の対戦となったこの試合もハイレベルな打ち合いが展開されたものの、結果はかつて全仏で06,07年と繰り広げられた光景の再現となりました。フェデラーがトップギアで1セット先取するものの、ナダルが徐々にギアを上げていきその後3セットを連取する展開です。だが違う展開もありました。この試合フェデラーが苦しんだのはバックハンドではなくフォアハンドでした。攻めたいシーンでフォアハンドのDTLが何度となくネットにかかってしまったのです。  翌日、ジョコビッチVSマレーの試合が行われました。この試合は両者が全てを出し尽くす名試合となりました。世界1位の貫禄を見せつけあっさりと第1セットを先取したジョコビッチに対し、マレーは第2セットで3度、第3セットで2度のブレイクを奪い、2セット計153分という信じられない長さの死闘を制してセットカウント2-1としました。マレーは持ち前の守備力だけでなく前年から磨いていた攻撃力をこの試合で惜しむことなく見せつけました。左右にどんどんストロークを打ち込んでジョコビッチを振り回すのです。もちろん持ち前のカウンターも健在でした。  だが第4セットも変わらず向かってくるジョコビッチに第1ゲームをブレイクされたマレーはこのセットを捨ててしまいました。結果的にはこの判断が凶となったのでしょうか、わずか25分でジョコビッチが追いつき2セットオール。再び激闘になった第5セットはジョコビッチが先にブレイクしてサービング・フォー・ザマッチ、この局面でマレーはラブゲームブレイクで追いつく粘りを見せます。だが最後はジョコビッチが4時間50分の死闘の末にマレーを振り切り決勝進出。この試合が今大会のベストマッチだと誰もが思いました。  後編に続きます。