日本時間で土曜日の夜、多くのトップ選手にとってはクレーの開幕戦となる、モンテカルロMSのドローが発表されました。ということで今日は早速モンテカルロのプレビューといきましょう。 Next week we head to the stunning Monte-Carlo! We want to know what's your favourite @ATPWorldTour Masters event? pic.twitter.com/04dQS1ts71— TennisTV (@TennisTV) 2015, 4月 11  モンテカルロ・マスターズ。フランスに囲まれた小さな国、モナコ公国のモンテカルロで開かれます。モンテカルロは多くの娯楽が集まる夢の街。スポーツも盛んで、F1の一大イベントであるモナコGPが開催される街として知られています。ちなみに税金とかが優遇される関係上、この街に住所を置くテニス選手もいます。ジョコビッチ、ラオニッチ、ベルディヒなど結構多くの選手が該当するようです。  一番の特徴として、大変歴史が深いことが挙げられます。なんと第1回大会は1897年に開かれています。その後オープン化され今のツアーが始まった1969年の一年目からプロツアー大会に数えられ、マスターズ1000の前身にあたる「Grand Prix Super Series」にも選ばれていました。昔から非常に地位の高い大会として知られていたのです。500への格下げが検討されたとき反対意見が多くMSとして残留したことからも、テニス関係者から集める尊敬の念が大きな大会だということが窺えます。  このモンテカルロは05年のナダル登場以降、ナダル以外が優勝することを許さないナダルの聖地として知られていました。フェデラーは06年から3年連続この地で決勝まで進みましたがナダルに当然のごとく阻まれました。それが変わったのはナダルが故障明けだった2013年のことでした。ジョコビッチが決勝でナダルを撃破し、ナダルの連覇を8で止めたのです。その翌年はさらにショッキングな出来事が起こりました。ナダルはなんと準々決勝でフェレールに敗退。手首を痛めたジョコビッチもフェデラーに敗れ、ついにフェデラー悲願の初優勝かと思われましたが、第2セットのタイブレークを落としてバブリンカに逆転負け。パリ以外のMSではなんと4年ぶりとなるBIG4以外のMS優勝が達成されたのでした。  さて、前置きはこれぐらいにして今年のシングルスドローを見てみましょう。なんといっても注目はナダルです。現在ナダルを取り巻く状況は非常に不安定なものになっています。世界ランクはここ10年で13年以来2度目の5位。しかし13年はIWを優勝して勢いづいてのクレー参戦でした。ランキングではなくて怪我や試合の状態を見て考えるとこの不振は09全仏敗退以降の10ヶ月の不振に匹敵するでしょう。2010年はそこから大爆発してクレーシーズンを総ナメにするなど全盛期に突入してしまったのですが、今のナダルにその力があるとは思えません。  そのナダルはマレーと錦織の欠場によって第3シード。そしてなんと第1シード、ジョコビッチの側に入りました。ジョコビッチとナダルは順当に勝ち上がると準決勝でぶつかってしまうことになります。そしてなお悪いことにナダルの対抗シードには昨年敗れた第5シードのフェレールが入ってしまっています。ナダルは初戦でもティエムという若手陣のトップクラスを迎えなくてはなりません。先週マイアミでベスト8入りし、クレーシーズンでも昨年マドリッドでバブリンカを破っているティエムを止めることができるのでしょうか。トロイツキ、クリザン(今週カザフランカで決勝進出)など粒ぞろいの選手が揃った3回戦のイズナーブロック勝者との対決も侮れないでしょう。  しかし本来のナダルであれば、ティエムだろうとイズナーだろうと、フェレールでさえも、問題にしないはずなのです。このモンテカルロはどこまでナダルの調子が戻っているのかが試される絶好の試金石となるでしょう。もしどこかで敗れてしまいジョコビッチまで辿りつけないようなら、ナダルの不振はいよいよ本格的なものとなってきます。 PHOTOS: Rafael Nadal plays Marin Cilic in charity match >> http://t.co/J4luda7YKr. (via @MarianneBevis) pic.twitter.com/hjFx7xpXIG— Rafael Nadal Fans (@RafaelNadalFC) 2015, 4月 11  一方ジョコビッチは初戦でアルマグロを迎えますがこれはむしろアルマグロが可哀想なドロー。アルマグロは大分力を戻してきているようにみえるのですが如何せんドロー運が悪すぎます。全豪は初戦錦織でしたし、マイアミでも2回戦ナダルでした。ジョコビッチブロックの下位シード陣は共に復帰直後のチリッチとツォンガで、ここは全く問題になりません。しかし順風満帆なときこそ昨年のような怪我が怖い、これだけは気をつけてほしいです。なおチリッチのブロックでは元世界18位のフロリアン・マイヤー(F・マイヤー)という選手が昨年のマイアミ以来という長期離脱から復帰してきています。  この二人との対決を避けられてほくそ笑んでいるだろうボトムハーフの選手達。ナダルを避けられてほっとしているのは第2シードのフェデラーでしょう。しかしクレーでの優勝からここ3年遠ざかっている(「レッドクレー」に限定すれば09年全仏以来6年近く)フェデラーはこのサーフェスでは他の上位陣と互角止まりです。ベルディヒ、ラオニッチ、そして順当なら準々決勝でぶつかる前年優勝者バブリンカら誰が勝ち上がってもおかしくないものと思われます。バブリンカに辿り着くまでもシャルディ、モンフィスなど危険が一杯です。    なお、クレーシーズンにはナダルのように土の上になるといつも以上の力を発揮してくる選手達が多くいます。彼らはノーシードでもとても怖い存在で、ランキングだけ見てなめてかかると痛い目にあってしまいます。例えば1回戦勝てばバブリンカの初戦対戦相手となるアルゼンチンのモナコ。彼はマイアミ16強に入るなど先週も好調でしたがクレーでこそその真価を発揮する選手です(クレー勝率.636、ハード勝率.464)。スペイン国旗と南米各国の国旗を見たらそれが誰であろうとも注意したほうがいいでしょう。クレーコーターの証です。