20150324_nishikori_k0
[sns]

各所で議論される「錦織の苦手なテニス」

20150324_nishikori_k1 photo:Marianne Bevis

18日に行われたBNPパリバ・オープンの4回戦で、世界ランク5位の錦織圭が、同ランク12位のフェリシアーノ・ロペスにストレートで敗退しました。 敗れはしたもののトップ10外の選手には、昨年10月のチャイナ・オープンで、ジャック・ソックに敗れてからこの日まで、24連勝。決して、安定感を欠いているわけではありませんが、久々の敗戦に、各所で錦織の苦手なタイプについての議論が巻き起こりました。 テニスはその日のコンディションやサーフェス、ボールなど様々な要因が絡んでくるため、一概に過去のデータから優位性のある分析を行うことは難しいのですが、今回はHOTSHOT編集部でも錦織のプレーを見返しながら、他選手との相性について出来る限り推察してみました。

錦織は左利きが苦手?

20150220_nadal_k1 photo:Marianne Bevis

まず一番に目にする苦手要素として、錦織は左利きの選手を苦手としているのではないかという説があります。 確かにロペスは左利きで、錦織が7連敗中のラファエル・ナダルも左利き。 キャリア通算での戦績はどうでしょうか。右利きの選手に対しての勝率が66%、左利きの選手に対しての勝率は63%。確かに左利きの選手に対しての方が、少しだけ勝率が低いですが、著しく低いというわけではありません。 これをどう捉えるかは難しいところ。今回は別の視点、錦織のプレースタイルからも考えてみます。

錦織のプレースタイルを考える

まずは錦織がトーマス・ベルディヒとの一戦で見せた、こちらのプレーをご覧ください。

Original:ATPWorldTour

錦織は、ミロシュ・ラオニッチのように時速200キロを軽々超えるサービスエースや、スタン・ワウリンカのように、一撃必殺のストロークでポイントが取れるタイプではありません。 ラリーで相手を崩したり、逆に相手が優勢で、コートの中に入ってきた状態になることで、コースを突いたカウンターショットを活かしたりするタイプでしょう。 そのため錦織としては、ある程度ラリーをつくる必要があります。 錦織の主なポイントパターンは、下記2つと分析します。 1. ラリーで相手を左右に振って、チャンスボールを引き出す 2. 追い込まれて粘ってからのカウンターショット

錦織が苦手なタイプはスローテニス?

20141007_gasquet_k3 photo:mirsasha

となると錦織は、ラリーをさせてくれない「一発屋」もしくは、いくらラリーしてもチャンスが来ない「スローテニス」に、少しやりづらさを感じるのではないか、という仮説が立ちます。 一発屋に関しては文字通り。スローテニスに関しては、具体的には時間を作る、下記のような戦術をさします。 ・縦に弾むスピンを操るタイプ ・スライスを巧みに操るタイプ ぱっと思いつくところ、ナダルはもちろん、世界ランクで追い越しても5連敗、毎回完敗を喫するリシャール・ガスケ、そしてミスのないストロークに、錦織自身が「やりにくさ」を語っていたアンディ・マレーもこのタイプ。 今回のロペスも、スライスを巧みに操って、錦織が展開しようとしたところで、ラリーをイーブンに戻していました。 ただ安定感のある選手というわけではなく、フラット系であったり、ダビド・フェレールのようにある程度ペースのあるボールを打つ選手であれば、錦織は速いラリー戦に持ち込んで打ち抜けます。要するに、スローなボールで、時間を作るのがうまいタイプに、錦織は少し苦戦しているのではないでしょうか。

ロペス戦の敗因は?

20150318_lopez_k3 photo:Marianne Bevis

もちろん、コンディションによって必ずしも当てはまるわけでなく、3連敗中であったマレーから、昨季のツアーファイナルで初勝利を挙げたテニスは、マレーのムーンボールを見事に叩き切っていました。 しかし今回のロペス戦。そもそも今大会は「打球感の掴みにくいボール」、そして「不規則にバウンドするサーフェス」であると言われており、ボールやサーフェスの影響も相まって「ラリーを作る前にミスが出た」ことが敗因に見えます。 ラリーでミスが出て、相手を追い込めない時に、それでも関係無くエースが取れるサーブや、一発で押し込む攻撃力は、錦織にはまだありません。 中盤からサーブ&ボレーをトライしていたように、ラリー戦以外での短いポイントパターン、そしてサーブ力が強化されていけば、今後はそういった展開も、苦にならなくなるでしょう。

サーフェスで見ると?

20150324_nishikori_k2 photo:Marc

最後に、サーフェスで見た時の特性を考えてみます。 今大会のようなイレギュラーの多いサーフェスというと、一番に思い浮かぶのは芝のウィンブルドン。 しかし芝は、イレギュラーも多いものの、球足も非常に速いので、錦織のウィークポイントとされるサーブが狙われなくなったり、長いラリーを必要とせずエースが取れたりと、有利に働く面もあります。 今回のように「球足も遅く、かつイレギュラーも多い」というサーフェスが、ラリーをつくりにくく、錦織としては一番難しいのではないでしょうか。 過去7度出場も、3回戦が最高成績。ようやく4回戦に進出も、ロペスに敗れた今大会は、ロペスのスタイルと、大会の環境が合いまった結果ではないかと考えます。 [sns]