インディアンウェルズが開幕してもう4日目(女子は5日目)。男子は今日で全ての選手が初戦を戦いました。そんな中で2回戦屈指の好カードとしてセンターコート(スタジアム1)に組まれたのがディミトロフVSキリオスの一戦。キリオスは第3セットに持ち込むとディミトロフからブレイクを奪って勝利まで後1ゲームとしたものの、ブレイクした際のプレーで負傷してしまい逆転負けを喫する悔しい敗戦となりました。だが若い力は着実に力をつけつつあります。今日はそんな若手たちの特集です。 【ニック・キリオス】  昨年のウィンブルドン(ベスト8)で大暴れして一躍皆さんにもその名を知られるようになったキリオス。強力なサーブに怖いもの知らずのストロークが次々と実力者を葬っていったのです。その後全米でも3回戦進出。ツアーではロクに出場もできなかったことから燃え尽きや伸び悩みなども懸念されましたが地元で迎えた今年の全豪でも見事にベスト8入りしてみせました、素晴らしい活躍です。  今年20歳になるキリオスの強みは勝負所の集中力。若手らしからぬ要所での強さはウィンブルドンで余すところなく発揮され、ガスケ戦で9本のMPを、ナダル戦では2つのタイブレークをそれぞれ奪って見事な番狂わせに繋げたのでした。その強さを支えるのは1stサーブ。速度はビッグサーバーほど速くありませんが要所できっちりポイントをもぎ取ります。ストロークもディミトロフと互角に打ち合えるレベル。フォアハンド中心の攻撃型ながらその他のショットもそつなくこなすところに強さを感じます。  最大の課題は高すぎる実力についてこないフィジカル。大会に出ては休むことの繰り返しで、グランドスラム以外ではほとんど試合にすら出られていないのが現状です。このIW初戦での勝利がようやくATPツアー2勝目となりました。それでもう世界ランク35位なのだから凄過ぎるのですが、この先ツアーを戦える身体を作っていけるかが今後数年のキリオスの課題となりそう。 Listen to @NickKyrgios' thoughts after his first round win at #BNPPO15 https://t.co/Q0vXIV5d6C pic.twitter.com/nWNTdv9ANN— TennisAustralia (@TennisAustralia) 2015, 3月 14 【ボルナ・コリッチ】  先のドバイでマレーを破る快挙で錦織の4位をアシストする形となったコリッチ(当時の記事)。日本の皆さんの中にもこれで名前を知った方がいるかもしれません。IWでも初戦突破して2回戦に進みましたが2回戦ではトミッチに阻まれました。  コリッチはキリオスよりさらに一つ下の18歳。昨年全米でグランドスラム初勝利を挙げるとシーズン最終盤のバーゼルで躍動しました。準々決勝まで勝ち上がると虫垂炎に苦しむナダルをストレートで破る番狂わせ!トップ100に入って迎えた今年は継続的にツアー参戦しここまで6勝8敗の成績を残しています。マレー戦の勝利によって18歳にしてBIG4を二人倒した恐るべき選手となりました。ランキングのほうもあっという間に60位まで上がってきています。  コリッチの武器はマレー戦で遺憾なく発揮されたその守備力。コートにボールを入れる能力と、球種やコースに変化をつけてミスを誘う技術には非凡なものを感じます。「良い時はジョコビッチ、悪い時はマレー」と本人が語るように、駄目なときはややその守備に頼りがちなのが欠点ですが、これもキリオスと同様今後のフィジカル次第でしょう。長期戦を戦いきれるスタミナがつけば面白いことになってきそうです。  1歳違いのキリオスとは良いライバル関係を築けているようです。二人で切磋琢磨してより上を目指してほしいものです。 【タナシ・コキナキス】  キリオスと並んでオーストラリアの若き力として一気に注目度が上がってきているのがコキナキス。まだランキングこそ先週達成した125位が最高ですが、全豪でグルビスを破るなど既に今シーズン4勝を挙げている期待の18歳です。するとオーストラリアは負傷で出られなかったキリオスの代わりにデビスカップのシングルスに抜擢。コキナキスはその期待に答えてフルセットの末にロソルを撃破してみせたのです。  その勢いのまま迎えたここIWで一気に大爆発を見せてくれました。ストルフ、ガルシアロペスと格上を次々と撃破して上記二人も成し遂げられなかった3回戦進出を決めています。3回戦の相手はチリッチを破ったモナコです。更なる快進撃は? 【イリ・ヴェセリ】  今年2015年、錦織より年下で唯一ツアー優勝を収めている選手が21歳のヴェセリになります。強力なサーブとストロークで基本に忠実に戦うストローカー、自国の先輩ベルディヒと似たタイプかもしれません。まだ細身の若手が多い中で身体つきのよさも魅力の一つで、この先さらに伸びていけば楽しみなタイプかもしれません。  ツアー優勝で一気に39位までランキングを上げたものの、このIW含めて5大会連続初戦敗退中とその後元気がないのは気がかりです。ちょっと一気にランキングが上がり過ぎた感が強いので、この先どこまで踏ん張れるかが一つ彼の将来を決めるかもしれません。現在のランキングは45位。 【ドミニク・ティエム】  去年キリオスと並んで大活躍した若手がこのティエム(21歳)。昨年はツアーの予選に参加しまくって何と7度も予選を突破。予選を突破した後も大いに暴れ、バブリンカを撃破するなどの快挙を成し遂げました。キッツビュールでは初めてツアーの決勝にも進出し、全米では兄弟子グルビスを破るなどして4回戦に進出しました。ここが最近の活躍のピークでしょう。  現在は先に取り上げた同い年のヴェセリと同様に30位台まで順位を上げてからの苦戦が目立ちます。現在のランキングはヴェセリと一つ違いの46位。このIWでも仲良く初戦敗退でした。ランキングは一度爆発すればそのポイントが大きく効いて40位程度まで順位を上げられるのですが、それを失うまでに稼げないと一気にランキングを落としてしまいます。それがまたプレッシャーになりさらに勝てなくなるということもあります。実際一度順位を落とす選手は多いです。しっかり地力をつけて戻ってこれるかが重要です。 【ディエゴ・シュワルツマン】  IW初戦を突破し、今日フェデラーと2度目の対決をするもあえなくストレートで敗退したシュワルツマンはアルゼンチン期待の22歳です。若手陣の中では唯一のクレーコーターにもなります。昨年チャレンジャー・ファイナルで優勝したことで一気にランキングを上げ、1月にキャリアハイの58位を記録しました。  最大の特徴として、その身長が挙げられます。トップ100最小の170㎝しかないのです。西岡良仁も小柄なことで有名ですがその西岡よりさらに小さいことになります。そのハンデを乗り越えてさらに飛躍していけるか、4月以降のクレーシーズンではアルゼンチンの未来を担う若者に注目です。 【追われる側の選手達】  彼ら若い力がどんどん上がってくるとうかうかしてられないのが22,3歳の選手たち。上の世代には錦織、ラオニッチ、ゴファンなどがいます。下の世代からはどんどん有望株が上がってきています。かつて持ち上げられたこの辺の世代はすっかり影が薄くなっており、もっと頑張らないといけません。  この世代のトップはディミトロフになります。しかしどうにも調子の上がってこないディミトロフ(ディミトロフの不振について)。今日もキリオスにあわやというところまで追いつめられました。なんとか踏みとどまったものの4回戦ではラオニッチに挑まなくてはなりません。  一方徐々に存在感を取戻しつつあるのはトミッチ。一時は10代にしてトップ30に入ったものの、その後伸び悩んだりコート外で騒動を起こしてしまったりと残念な事態となり、散発的にツアー優勝こそした(現在2度優勝有)もののあまり活躍できずに低迷していました。それがキリオスやコキナキスといった自国の後輩達の活躍で尻に火が付いたのでしょう。全豪で3年ぶりに16強まで勝ち上がりその後も活躍。今年は参戦7大会で初戦敗退が一度もありません。デビスカップでもエースとして2連勝する大車輪の活躍。このIWではついに第32シードを手にするまでランキングを戻し、コリッチを退け3回戦へ進出しています。 このほか、アメリカ勢期待の若手として今年更なる活躍が期待されたものの怪我で出遅れたソック、ソックの前に期待の若手としてランキングを上げたものの低迷、そこから110位までランキングを戻してきたハリソンもまだまだこれからの選手です。