【カナダ 3-2 日本】  初日は穏やかな出だしでした。日本はラオニッチの相手として、勢いに乗れば大物食いの可能性もある伊藤竜馬を送り込んで番狂わせを狙ったものの、伊藤は不発に終わりラオニッチの快勝。一方で錦織はポスピシルを相手に苦しめられる場面もあったものの、世界4位の貫録を見せつけ終わってみればストレート勝ち。第2セットのタイブレーク、4-5からしっかり2本キープし迎えたSPで素晴らしいリターンを叩き込んだシーンを見ていても力強さを感じさせました。両国エースが譲らす1勝1敗で初日を終えます。  問題は二日目でした。日本はダブルスが弱いのです。錦織がデ杯デビューした08年インド戦以降、それ以降昨年のWG準々決勝までで5勝10敗。そのうち3勝はアジア/オセアニアグループにおいて5-0の完勝を収めたときのダブルス(例:一昨年のインドネシア戦)。残りの2勝は錦織がダブルスも出て勝利してのもの(例:昨年のカナダ戦)。つまり錦織抜きの日本ダブルスは強敵相手への勝利から随分と遠ざかっているのです…  錦織を使うか、否か。日本代表の植田監督は難しい判断を強いられました。最終試合でポスピシル相手に勝つのは難しい。それならばダブルスで勝つしかない。だが錦織はアカプルコで発熱後の病み上がり状態から回復し決勝まで戦った後です。そして翌日には宿敵ラオニッチとのバトルを控えている状態。仮にダブルスを取れても次の日に錦織が力尽きてしまっては意味がありません。  日本代表の出した結論は錦織を起用せず、添田と内山のペアで予定通り臨むことでした。だが勝負を捨てたわけではありません。カナダペアもその名前ほど盤石ではなかったからです。ネスターもポスピシルもダブルスで充分すぎるほどの実績があります。が、しかしこの二人のペアに限るとデ杯通算3勝3敗と今ひとついい成績を残せていませんでした。昨年のプレーオフでも敗れています。  内山のサーブと添田のネットプレーを中心に日本ペアはよく食らいつきました。勝ってもおかしくなかった、というか勝たせてやりたかった。第5セットに入っても一歩も引かずに格上のカナダぺアと渡り合って可能性を感じさせてくれました。だが、最後はずっと狙われていた添田のサービスゲームでリターン強打の集中砲火を浴びて万事休す。普段シングルスしかプレイしない添田にとって、ダブルスのポジションから狙うサーブは練習不足だったのかもしれません。最後はDFでカナダがブレイク、日本に土壇場追いつく力は残っていませんでした。  三日目、追い詰められた日本チームを救うべく錦織がエース対決に向かいます。だがラオニッチも同様にエース対決には重荷がかかっていました。ダブルスで激戦を戦ったポスピシルが肩を負傷、今日の出場は表明済でしたがその状態には不安が残ります。カナダもまたラオニッチに必勝を期していたと言ってもよいでしょう。  サーブが火を噴き、テンポの速いラリーの応酬にも負けず錦織を押し込み、あっという間にラオニッチが第1セットを奪います。しかし第2セット以降ラオニッチは1stサーブのコントロールに苦しむようになり、そこを錦織が的確に突いて追い込みました。第2セットの第8ゲームでデュースの末にバックハンドのDTLを叩き込み、待望のブレイク。追いついて迎えた第3セットでは絶妙なロブでBPを握るとラオニッチのセカンドサーブをフォアハンドで叩き込んでリードを奪いました。この2セットはサービスゲームもすべてキープしました。勝利は間近?  だがラオニッチとて負けられません。再び1stサーブの確率を上げて錦織のリターンを封じると、錦織のサービスゲームで血眼になってブレイクを奪いにきました。錦織は2個のDFにも足を引っ張られ、思うようにサービスキープできません。試合は最終セットへもつれます、全米に続く二度目の5セット目を迎えたのです。  錦織は最終セット後サーブ。第9ゲーム(4-5)以降ブレイクすなわち試合終了になるという不利な立場にいました。できるだけ早くブレイクがほしい…ここでそれをやってのけるのが流石錦織です。30-30からリターンエースをぶち込んでBPを握ると、激しいラリーの末に先にブレイクを奪いました。ラオニッチも負けじとブレイクを奪い返しますが、4-4の第8ゲーム、どうしてもブレイクのほしい場面で再びラオニッチを追い詰めると、ラオニッチが重圧に耐えきれずDFを冒しました。錦織が最後のサービスゲームをしっかりキープし見事勝利!! 錦織圭、ラオニッチ戦を振り返る [デ杯ワールドグループ・日本対カナダ] http://t.co/bf20a7uYoi #テニス #デ杯  #錦織圭 #ラオニッチ pic.twitter.com/nXnmXMP1mA— THE TENNIS DAILY (@THETENNISDAILY) 2015, 3月 9  だが迎えた最終戦、初日から3連投、なおかつ負傷まで抱えているはずのポスピシルは充実していました。日本はいつも最終戦を託してきた添田に今日も運命を委ねたものの残念ながら敗退に終わりました。添田とポスピシルの試合の大半は速い展開のキープ合戦になったものの、要所要所をことごとくポスピシルに取られてしまい添田は対抗できませんでした。第3セットで添田がブレイクを許すまでに「30オール」となったゲームが5回ありましたが、それは全てポスピシルのゲームになっています。勝負所で集中し攻め込んできたポスピシルを抑えられなかったのです。第1セットの5-6,30オールからフォアハンドを2発打ち込まれてブレイクとセットを奪われたシーンは象徴的だったかもしれません。  ダブルスに続いてシングルスでも負けてしまった添田、今回の日本代表でただ一人2敗を喫した選手となりました。それでも添田を責めたところで仕方ないと自分は思います。添田以外誰か起用できそうな選手はいましたか?いないのです。ダブルスにしたって錦織を回避させた以上添田以外の選択肢はありませんでした。  添田は精一杯頑張っていますし、日本のために貴重な一勝を挙げたことだって何度もあります。これ以上日本が強くなりたいのであれば、添田が今いる位置を実力で奪い取る新しい力の台頭が求められるでしょう。今回代表に帯同した西岡良仁や中川直樹に求められてるのはまさにその役割です。そのときまで日本がWGを維持できていれば、近い将来必ず上位進出のチャンスがやってくると思います。  まずは9月のプレーオフでしっかり残留を果たしましょう。