錦織が、ATP500の「アビエルト・メキシコ・テルセル」大会で、準決勝に勝って決勝に進出。 その決勝ではフェレールに「ここ一年」の雪辱を許しましたが、ドバイで行われている大会で準々決勝で敗れたマレーを抜いて世界ランク4位に上がることが決まりました。 師匠?の松岡氏も、「他の例えでは表現できないくらい凄いこと」といい、沢松奈生子さんも今朝のテレビのインタビューで同様のコメントをしていました。 もっとも、今回のランクアップはおそらく瞬間的なものであり、システム上のポイントで上回ったというだけで、実際に対戦し引きずり降ろしたわけではないので、本人も「(一時的なアップダウンは)気にしていない」レベルのできごとかもしれません。(内心はわかりません) しかし、日本のテニスファンとしては、ついに日本人がビッグ4の一角を崩したか、とにわかに色めき立つできごとであります。 全く、つい数年前には予想だにできなかったことが、昨年から次々に25歳の若者によって実現され続けています。夢にも見なかったトップ4に入るのです。 驚きと喜びとで、過去に経験のない心の高揚感を毎日味わっている人は、この国内に多いことでしょう。 前述のように、おそらくすぐにマレーが(デ杯でポイントを稼いで)抜き返すことでしょう。 それはそれで仕方ないんで、ここからどうなるのか?・・が見所です。なんといっても「第4シード」以上がつく位置ですから。 まあ、女子の例もあります。 過去に世界ランク1位になったキャロライン・ウォズニアッキが、「四大大会で一度も優勝経験のないヒトがトップなんて・・」と選手間でツブやかれたとか。これはこれで理解はできます。 ここは錦織に、まずは今年内にマスターズ1000のどれかで勝って、頂点に立つための「切符」を手にしてほしいと切に願います。 トップ選手に出場義務のある大会を制するということは、トップ街道を進むための通行手形と同じ。もし、クレーやハードの1000、芝の500を制すれば、全サーフェス対応の「オールコートラウンダー」と言える。これは、NO.1になるための重要な要素。 さすがに四大大会となると、ハードルはグンと高くなるんで、これは数年以内に・・とお願いしたい。それが現実になれば、NO.1も手の届くところにあるように思います。 今のところ、トップ4との対戦のない250や500の大会での勝利が多いので、ポイントこそ稼げても今ひとつインパクトが薄いので、そこはやはり同じ土俵に上がって直接対決で勝ち、とって代わってほしいな、と願うところ。 しかしながら、勝ち続けることの多くなった今日、連戦の続く日程は極力避けてほしいとも思う。 昨年は、好成績とケガによる離脱が交互に起こり、「テニスは強いけど体は弱い」と評され、マドリッドで追い詰められたナダルも「もっと体が強くならないと・・」と課題を挙げていた。 極めつけはあの全米。のう胞の手術で3週間休んだ後、ろくに練習もできていないにもかかわらずの決勝進出。体が大丈夫なら上に行けるだけのものは身についたんだと思わせる活躍でした。 最近驚いたのは、大会期間中でもハードなトレーニングを課したチャンコーチの「鬼ぶり」。 3連覇を達成した先のメンフィスでは、試合前にもかかわらず連日ハードメニューを消化させたとか。目の下にクマを作った錦織の(写真で見る)表情は、疲労の臭いがプンプンでした。そのへんが、決勝までの3試合の第1セットダウンを強要したのかと想像します。 でも、勝って当たり前の大会の開催期間中に猛練習・・・・う~む、NO.1への道は想像を絶する厳しさなんですね。 そのメンフィス。なんとか決勝ではストレート勝ちしたものの、厳しい練習と連戦の疲れからか、直後にインフル発症。(本人談) メキシコへは練習なしでの参戦だったと聞き、お得意様になりつつあったフェレール戦の敗北も、「そうだったんだ。ま、今回は仕方ないね。」と思わせてくれて少しホッとました。 さて、順位がトントンと上がってきていますが、トップとの対戦成績はジリ貧になっています。 ジョコビッチ、フェデラー、バブリンカ、ラオニッチにはこのところ負けていますし、フェレールにも雪辱を許した。 さすがに彼らも対策を着々と練ってきていて、それこそ出る釘を叩きつぶす勢いです。 ジョコビッチの安定感と磐石ぶりは、このところの普遍。 これに、フェデラーが往年のキレを取り戻さんと頑張っている。(ジョコを破りドバイ制覇) ナダルも控えめなコメントのウラに、「今に見ておれ」と鋭い眼光を隠しています。(南米で復活のノロシをあげている) マレーも、波があるものの強い時の彼が戻ってきているし、バブリンカは全豪で闘志むき出しで錦織を叩きにきたし、ラオニッチもやすやすと負けてくれたりはしない。 このところ分の良かったフェレールも、足のツメを怪我した全豪時とは見違えるほどのスピード&粘りとショットメークで錦織を制御した。闘志健在を印象付けましたね。 いやいや、今年のテニス界はすごいデッドヒートになりそうな感じです。 今まさに絶頂期にあって王座を守らんとする者、奪回を目指すかつての王者、ケガからの復活を目指す者、最後の「もう一花」咲かそうとするベテラン、そして下から上がろうとする新しい顔たち・・ 特に、近年低迷していたかつての実力者たちも、乱世の臭いの立ち始めた今がチャンスとばかり、再び天守閣へ向かって上ろうとしていたり。また、10代選手の台頭もありそうな気配があったり。 とにもかくにも、非常に興味深い一年となりそうです。 錦織選手に関する最大の懸念材料が、ニューラケットへのアジャストの度合い。 個人的にはこれが一番心配している部分で、もう少しかかるのかな、という気がします。それほど、ラケットが変わるということは大変なことだと思います。 長年の懸案事項であるサービスも、良かったり悪かったりでいまひとつ安定しません。 今回のメキシコは風が強かったこともありますが、技術的な部分で「もう一段上のレベル」に到達しきれていない(上腕の内旋不足の)せいかなと感じています。 逆に言えば、「まだ伸び代があるんだ」とも言える部分でもあるんですが。