ヤフートップにも掲載されて話題になったらしい、錦織フィーバーの一方で沈む女子テニスの現状という記事を読ませていただきました。  筆者の山口奈緒美さんは90年代の昔からテニス雑誌に記事を寄稿されてきた古株のテニスライターさん。多くの現地取材を基に興味深い記事を書いてくれている一方で、他のテニスライター、例えば内田暁さんや秋山英宏さんに比べると毒舌な記事も多く書かれる方です。過去にはジョコビッチのことを「日本に限らず、世界的にも「ヒール役」が板についてきているのは事実」と報じたり(リンク先)、昨年全米前の錦織に対しても「運よく1回戦くらいは勝てるかもしれないが、それで得られるものが大きいとは思えない。」と言い切っておられます(リンク先)。これはもうライターさんのキャラだと思いますので、頭を冷やして落ち着いて読まなければなりません。  日本における女子テニスの低迷は事実ですし、いわゆる「伊達頼み」の風潮の指摘や、体格的に奈良くるみに限界があるというのもわからない意見ではありません。奈良は現在に至るまでトップ20選手に1勝12敗なのです。しかし青山修子がダブルスの43位にいますし、先週タイの大会で第1シードを破った土居美咲が今週のランキングでようやくトップ100に返り咲いています。彼女たちの頑張りがなかったらそもそもカザフスタンに勝てていないでしょう。とはいえ伊達、沢松、杉山といった名選手達のいた時代から比べると寂しい陣容になっているのは否定できません。  だが今の女子テニスは選手達が力を失っているだけではなく、周りのサポートからも絶望的に見放されているのです。例えば毎年世界のトップが集う大会として開催されていた東レパンパシフィック。昨年はついに大会のグレードを下げられてしまい、開催権すらほかの大会から借りてこなければならない状況となりました。今年以降の開催も依然として綱渡りの状態です。  またテニス放送を担当するGAORAにとっても女子テニスは頭の痛い問題でした。GAORAはスポーツ専門CHとして多くのスポーツを放送しているにも関わらずチャンネルが一つしかありません。当然枠は限られる上に同じテニスの中でも錦織の活躍によって男子テニスの要望がどんどん増えます。GAORAはついに女子テニスの放送から実質撤退し、一年のうちわずか1大会、東レパンパシを放送するだけとなってしまいました。  利益を求める側の考えからすれば女子テニスから撤退していくのは仕方ないかもしれません。ならサポートする側はどうでしょう。たとえば日本テニス協会(JTA)が運営するフェド杯日本チームの公式サイトを見てみると…全然力入っていません。情報発信も試合レポートも全てTENNIS DAILYの特設サイトにはるかに劣っています。はっきり言ってやる気が感じられません。  本気で女子テニスの低迷を復活させたいなら、選手達の頑張りが必要なのはもちろんですが、選手達をサポートする側や選手達の頑張りを伝える側にも責任があるのではないでしょうか。触れられなければ忘れ去られるだけです。山口さんは現在テニス専門誌だけでなく、スポルティーバにもNumberにもTHE PAGEにも記事投稿されています。WOWOWで四大大会のコラムを書くという仕事こそ上記のジョコビッチの件で抗議を受けた後に全仏から交代となったようですが、それでも今なお多くのネット媒体で記事を書かれています。こうして記事を書けば話題になる程度には一般の人に影響力を持っているのです。ネガティブに愚痴る前にもっと女子テニスの魅力を発信していただきたいと思わざるを得ません。  当ブログも男子テニスが中心となっていて人のことは言えませんが、ひと月に一度ぐらいは女子テニスをテーマにブログを書いています。今年に入ってから書いた二つの記事はおかげさまで多くの支持をいただきました。自省とともに、ここでももっと女子テニスについて触れる機会を増やしていけたらなと考えています。日常的に女子の話題に触れたい方は前述のTENNIS DAILYやテニス雑誌スマッシュのフェイスブックなどをご覧になっていただきたいと思います。