錦織が日本のテニスの歴史をことごとく塗り替えてきたことは皆さんご存知だと思います。錦織は今までの日本のテニス界の常識を全て覆してしまいました。ですが錦織は一人ではありません。パイオニアとして松岡修造がいますし、錦織の域まではとても届きませんが、添田や伊藤がトップ100選手として今も戦っています。  だが外国には、先人もなく、同胞もなく一人で国を代表しているテニス選手が何人もいるのです。例えばつい先日エストレラのツアー初優勝をお伝えした際、「ドミニカ初でもある」と紹介しました。エストレラ以外のドミニカ出身テニス選手となると現在は1430位に一人いるだけ。エストレラはトップ100入りも、グランドスラムの勝利も全て「ドミニカ初」でした。  今日はそんな一人だけで国を代表し、戦いを続けている選手達の中から何人か紹介したいと思います。 【グリゴール・ディミトロフ】(ブルガリア)  最初は皆さんよく知っている選手から始めましょう。ディミトロフ見ていてもとてもそんな風には見えないと思いますが、実はディミトロフはブルガリアのテニスの歴史を全て塗り替えてきた選手なのです。  ディミトロフはテニスコーチをしていた父と、バレーボールの選手だった母から生まれたサラブレッド。そんなスポーツ一家に育ったディミトロフはその才能を惜しむことなく発揮し、2008年にウィンブルドンジュニアと全米ジュニアの2大会を優勝!あっという間に世界中の注目を集める存在となったのです。  ディミトロフは2011年に85位となった時点で史上最高位のブルガリア選手となりました。2013年全仏では3回戦に進出しました、これでグランドスラムにおけるブルガリア選手の最高成績に。2013年ストックホルムで初のツアータイトル獲得、これももちろん史上初。後は錦織同様ブルガリアのテニスの歴史を全て書き換えながらここまで上がってきています。 【エルネスツ・グルビス】(ラトビア)  グルビスは小国ラトビアの出身。1988年生まれで錦織の一つ上、デルポトロやチリッチと同じ世代になります。グルビスは12歳でドイツのテニスアカデミーに留学、ここでテニスの実力をつけました。2007年に早くも18歳でトップ100入りすると2010年にはデルレイビーチでツアー初優勝を挙げ、ローマMSでフェデラーを破るなど各地で大活躍、ランキングを21位まで上げました。だがその後スランプに陥り一時は表舞台からグルビスの名前が消えたことも。  2013年、ツアー初優勝の地デルレイビーチに109位でエントリーしたグルビスは予選から勝ち上がって復活優勝!かつて期待の若手と言われた男が挫折を乗り越えて帰ってきたのです。その後もぐんぐんランキングを上げたグルビスは最終的には全仏ベスト4に入った直後の昨年6月にキャリアハイとなる世界10位を記録。もちろんこれら全てがラトビアのテニス選手では初めての快挙となっています。 【ジョアン・ソウザ】(ポルトガル)  なんとここでポルトガルの登場です。ポルトガルってテニス大国スペインの隣ですよ?ですが不思議なほどテニス選手がいないのです。トップ100に入った選手がソウザを除くと過去に3人だけ、もちろん今はソウザ一人だけです。ソウザも最終的には隣国スペインのバルセロナに移ってテニスを学んでいます。  2013年のクアラルンプールでポルトガル選手として初のシングルスツアー優勝を達成、と同時に世界ランクを51位としてこちらもポルトガル史上最高位となりました。その後最高位は35位まで上がり、ポルトガル選手として史上唯一トップ50を達成した選手となっています。 【マルコス・バグダティス】(キプロス)  2006年全豪準優勝者にして、ツアー通算4勝を挙げ世界ランク最高は8位という実力者バグダティスを忘れてはいけません。先の全豪でも3回戦まで進むとディミトロフをあと一歩まで追い詰めました。地中海に浮かぶ、わずか人口87万人のキプロスで初めて本格的な活躍を収めたテニス選手です。  もちろん母国ではヒーローですし、彼が最も華々しい活躍を収めたオーストラリアでは、キプロスとその隣国ギリシャから移住してきた住民から熱烈な支持を受けていて、毎年応援団が結成されています。地元選手への声援すら上回るかもしれない熱狂的な応援は大会序盤の風物詩です。 #AOxTST La hinchada de Baghdatis muy presente en el partido ante Dimitrov. pic.twitter.com/DpcfxoTx3a— Todo Sobre Tenis (@Tsobretenis) 2015, 1月 23  他にもミュラー(ルクセンブルク)やクエバス(ウルグアイ)なども現在ほかにトップ選手がおらず、一人で国を代表して戦い続けています。基本的にテニスは個人スポーツなので他のスポーツほど国家を代表する機会は多くありませんが、彼らの地元大会であったり、またデビスカップやオリンピックになると彼らの背負った国旗の重みを実感するのです。ロンドン五輪ではジョコビッチ、バブリンカ、バグダティスなど計8人ものテニス選手が旗手を務めています。