‘常に全力’では勝てないプロの大会
先週の日曜日に行われたテニスの全豪OP男子シングルでは
ノバク・ジョコビッチがアンディ・マレーに3-1で勝ち世界
ランク1位の実力を示した形で終了した。
昨年の全米OPで準優勝し注目された錦織圭はベスト4でジョコ
ビッチにフルセットの末に敗れたスタニスラス・ワウリンカから
0-3で敗れ、ベスト8敗退という結果だったのだが最大の課題は
2週目の戦い方だろう。
錦織の現状を見て報道関係者やスポーツファンに常識として認知
して欲しいのが‘ピーキング’という言葉。
日本人は試合をするからには常に100%の力で勝ちに行くべしと
いうのが常識として長い間妄信されてきたのだが、プロの試合で
コレをやると勝てないのが現状だ。
テニスでいえば全豪から始まる4大大会のグランドスラムは通常
とは違い2週間にわたって開催されるので優勝を狙う選手はベスト
16以降が行なわれる2週目にピークをあわせるのが常識だから、1
週目から全力で戦うと2週目は息切れして格上選手には勝てない。
ところがノーシードや2桁シードの選手達は1週目から全力で臨む
ので1桁シードの選手達は意外に手こずるケースがあるし、実際に
錦織も1回戦は第1セットをタイブレークで取っての3-0で2回戦
&3回戦は1セット目を落としているのが現状だ。
そうすると無知なマスコミは‘今大会の錦織は格下相手に手こずり
不調’的な報道になるのだが、幸いにしてWOWOWでは解説の松岡
修造が先述したような旨のコメントでフォローしている。
思えば江川卓がプロでデビューした時に下位打者に打たれると‘手
抜き病’などと非難されていたのだが、今では投手が力の落ちる下位打
線相手に力を抜いて投げるというのは当たり前になっているのだから
江川のピッチングは批判されるべきものでもない。
負ければ終わりの高校野球でも松坂大輔の横浜が98年夏に春夏連覇
した時のレポで‘甲子園で優勝を狙うチームは1回戦から全力で戦う
のではなく、ベスト8ぐらいにピークを持って来る’と矢崎良一氏は記
している。
‘常に全力’といえば聞こえはいいものの競技のレベルが上がるとコレを
やれば勝てるものも勝てないのが現状だ。
だからこそ錦織の活躍が‘常に100%の力で全試合を戦うべき’
という日本の常識を否定し、徐々にペースアップさせて勝ち抜い
ていくという世界基準の戦い方を常識にしてくれるものと願いたい。