世間では錦織選手が勝ち上がっていることが話題になっておりますが。 スタッツ見たらかなりやばかったようで。体調が悪いので中々見れませんが出来れば試合は動画で見ておきたいところ。 で、車いすテニスのドロー表の発表が26日と全豪公式サイトに掲載されていたため、早めに技術論をやってしまおうと更新です。 本当は所々諸々の競技を取り上げてリオパラリンピックの参加選手のスポンサー獲得のサポートもしたいのですが、そこまで手は回るわけもなく。 ということで手の届くテニスだけでも興味を持っていただけたら幸いと、記事を挙げさせて頂きます。 さて、車いすテニスと普通のテニスのルール的な違いは以前の記事でまとめました。 では技術論というか、体幹の使い方について今回は解説したいと思います。 一般的にテニスにおいて、上半身と下半身はそれぞれ別個に重要な役割を担っています。 下半身はストロークやサーブに力を込めるためのエンジン、上半身はそれをコントロールするハンドルといったところでしょうか。 ですが、車いすテニスにおいては「全て」とは言いませんが、「殆どの機能」を上半身のみで制御しています。 わかり易い例でいうと、サーブを打つ際の違いです。錦織選手の課題となっているサーブですが、脚がある場合は腰から下が重要になってきます。 ビッグサーバーと言われる選手ほど、太腿や脹脛の動きが違います。 そして下半身から出た力を制御するために、上半身がブレない様に背筋を中心とした上半身の筋肉が重要になってきます。 では、車椅子テニスではどうでしょうか。足は切断されているか頚椎損傷等々により動かないことが大半です。 そこで車椅子テニスで重要になるのが、背筋です。「上腕二頭筋じゃないの?」と思われた方、半分当たりで半分外れです。 上腕筋や三角筋といった腕から肩に掛けた筋肉には、サーブ以外にも大量にお仕事があります。その最たる例がチェアワークと言われる車いすを動かす作業です。 車椅子テニスにおいては、下半身に残った大殿筋で体のブレを制御しながら、ボールを追いかけるために両腕を全力で使います。 そこで、体を制御しながらサーブを「相手コートに届くだけ」の力を得るために、背筋を中心とした体幹から絞り出す必要があるのです。 そして「読みのスポーツ」と呼ばれるテニスにおいて、車椅子テニスはもうひとつの問題が有るのです。 それは「背面にボールが回ると選手は打ち返すことがほぼ不可能」ということです。「通常のテニスでも一緒では?」という疑問も有るかもしれません。 これは、ちょっとした事でだれでも気づけてしまうのですが、「体幹における足の利便性」が絡んで来ます。 例えば立った状態で180度回るのには然程苦労はしません。踵、あるいはつま先のみにすれば接地面積は最小になり、素早く回ることが出来ます。 対して座位だとどうでしょう。車椅子の構造を乱暴に言うと「小学校で使用するような椅子の両側に自転車用の大きな車輪をつけたもの」と言うものです。 さて、この状態では自力制御で転倒してしまうため前後に補助輪を付けます。で、接地面積はどのくらい広がったでしょうか。 そして、椅子に座った状態のままでは真後ろの物は取れません。人体の構造上の限界である以上、これは変えようのない事実だと思います。 この状態が車いすテニスの試合中続きます。どんなに人間が鍛えても、3セットマッチで48回の打ち合いで終わるわけがありません。 (48回という打数は全ゲームをオールエースで展開した際の理論値上の最小打数ですが、実際はラリーやフォルトが絡むために大幅に数が増えます) そして下半身が使えないということはボールがネットに引っかかったり、思い通りのコースに飛ばない確率を上げる事にもなります。 そこで車椅子テニスでは「チェアワーク」が勝敗を分ける要になります。 相手が打つコースを瞬時に判断し、いかに早く腕と肩の筋肉を使ってボールに回りこんで打つかが大きなポイントとなるからです。 国枝選手はこの技術の高さから、「絶対王者」と言われる程の勝率を誇ると言われています。 そして、その技術がリアルタイムで多く見られる機会が最も多いグランドスラムが全豪オープンでしょう。 テレビ中継はされないかもしれませんが公式サイトなどで動画配信もありますので、全豪オープンをきっかけに車椅子テニスにも興味を持って頂けると幸いです。