数時間前ドローが発表になり、いよいよ本番間近。そんな中で今日はプレビューの2回目。次世代トリオと異なり、キャリアの盛りを過ぎつつある側からBIG3に挑戦するマレーとベルディヒについてお送りします。この二人はともにオフにコーチを変更した選手。捲土重来を期す今シーズンのプレーに注目してみましょう。 【アンディ・マレー(世界ランキング6位、全豪第6シード)】  かつてBIG4であったアンディ・マレー。だが最近のメディアの特集を見てみると、錦織が超えるべき敵はBIG3!宿敵ラオニッチ!マレーのなんと影の薄くなってしまったことか。だがマレーは現在も錦織のすぐ後ろにピタリとつけています、その差350P。昨年ベスト8のマレーは上乗せが少なく全豪で即逆転される可能性は低いですが、この先ランキングを競っていく強力なライバルであることに変わりありません。  マレーはこのオフ重大な決断をしました。前コーチであるレンドルの方針を支持していた盟友ダニ・バルベルドと別れ、新コーチのモレスモについていくことを選んだのです(詳しくはこちらの記事)。モレスモも確かに今流行りの「レジェンドコーチ」、だがモレスモは女性です。いくら名プレイヤーだったとはいえ女子テニスと男子テニスは違います。マレーをしっかり導くことができるのでしょうか?モレスモへの批判の声は今も燻っています。その雑音を封じられるかどうかはマレーの結果にかかっています。  つい先ほど出たドローでマレーのブロックを見てみると、4回戦で当たるブロックにディミトロフとゴファンがいます、共に若手のトップクラスです。このようにマレーはBIG3に再び追いつこうとする挑戦者であると同時に、下位の選手からは越えるべきターゲットとなる側でもあります。ですがマレーは苦しんだ昨年も全てのGSでベスト8入りしています、4回戦の突破は最低ラインでしょう。若き挑戦者を退け、現在3連敗中のフェデラーに挑戦そして勝利することはできるのでしょうか?  なぜマレーがかつてのようなプレーができないのか、それは一昨年受けた手術からまだフィジカルを戻し切れていないから…というのが一般論。昨年終盤6週連続で戦えたように一時からは戻りつつあるとは思いますが、まだ一定以上のクラスを相手にしてしまうと受けきれずに破綻してしまう傾向が見られます。モレスモとの二人三脚でどこまで鍛えなおしてくるかがマレーの命運を握っているでしょう。身体さえついてくれば、今でも十分BIG3を倒す力は持っているはずです。 Andy Murray working hard under the hot sun in Melbourne. pic.twitter.com/d1oteg3FHX— Tennis (@tennis_photos) 2015, 1月 12 【トマーシュ・ベルディヒ(世界ランキング7位、全豪第7シード)】  最初にちょっとベルディヒの実績を挙げてみましょう。18歳の若さでフェデラーを撃破すると19歳でツアー初優勝を達成し、翌年20歳でパリMS優勝。その後24歳でウィンブルドン準優勝、その直後のランキングで8位に入って以降、4年以上トップ10在位。グランドスラムベスト8以上11回、最終戦5年連続出場中。  これだけの実績を持ちながら、ビッグタイトルはそのパリMS以降一つもありません。2010年マイアミ決勝ではロディックに現役最後のMSタイトルを献上。同年ウィンブルドン決勝ではナダルに全く歯が立たずストレート負け。2012年マドリッドの「青いクレー」でも決勝でフェデラーに痛恨の逆転負け。そして昨年の全豪も中々痛い敗戦でした。準決勝で同じ1985世代のバブリンカに敗れ、そのバブリンカがナダルを破って優勝したのです。  強力なフラット気味のフォアハンドを持ち、バックハンドやフットワークにもこれといった弱点はありません、サーブも十分強力です。だが、それだけの武器を持っていてもあと一歩届かない。競った展開で自滅が多く突然崩れてしまい、また劣勢になったときに巻き返す術に乏しい。苦しいときの乗り切り方を学ぶことができれば、引き出しをあと一段増やすことができれば…と思っているうちにベルディヒも29歳、今年とうとう30歳という年齢になってしまったのです。  ベルディヒ自身もよくわかっているようで、ラストチャンスとばかりに昨年は新コーチを探しました。出身国チェコのレジェンド、レンドルにコーチ就任を依頼したこともありました。だがレンドルには多忙を理由に断られてしまいます。そのレンドルの代わりとしてコーチに据えたのが、マレーの元を去ったダニでした。ダニを通してレンドルの教えを吸収すれば、効果はあるかもしれませんが…  ベルディヒは若手陣から最もターゲットにされていた選手と言ってもよいでしょう。錦織にも、ラオニッチにも、ディミトロフにも負け越しています。だが若手達に対戦成績で越えられても、それでもベルディヒは食らい付いています。その高い実力と怪我の少ない優れたフィジカルでどの大会でも安定して勝ち上がりポイントを稼げるのが長所。今ならまだ間に合うのです。 幸運なことにベルディヒのドローはかなりの良ドローとなっています、下位シードに不振のグルビス、上位シードは4人で最も不安要素の多いナダル。グランドスラムの度に言っているような気がしないでもないのですが、今度こそチャンスを逃さず勝ち上がってほしいものです。