今日からは全豪プレビューをお届けします。全4回か5回、最終回に錦織を予定しています。まずは「次世代トリオ」として錦織とともにBIG3に挑むことになるこの二人から見ていきましょう。 【ミロシュ・ラオニッチ(世界ランク8位、全豪第8シード)】  錦織と丁度1歳差で、24歳になったばかりのラオニッチ。これまで全豪ではベスト16(4回戦)が2回、ベスト32(3回戦)が2回。序盤は安定して勝ち上がるのですが相手が強くなってしまうと順当に敗北を喫してしまうというのがここ数年のパターンです。負けた相手が順に、フェレール、ヒューイット、フェデラー、ディミトロフ。特に15位で迎えた2013年の全豪などはとても期待外れな敗北で、若手の躍進に期待していた人達をがっかりさせてしまったものです。  原因はとにかくブレイクを許してしまうこと。やはりラオニッチの強みはビッグサーブでキープを重ねることによって生まれるものであって、そもそもタイブレークに持ち込めず自分からセットを失うなんてことがあってはいけないのです。  しかしラオニッチはまだまだ若い選手です、日々成長を続けています、先週ブリズベンでは錦織を撃破しフェデラーにも食らいついてあと一歩まで追い詰めました、前哨戦の充実ぶりはトップ選手で1,2を争うでしょう。進化しつつあるストロークでよりポイントをもぎ取っていけるようになれば、ウィンブルドンに並ぶベスト4進出、そしてさらにその先も見えてきます。  ラオニッチも錦織と同じシード群、第8シードなので第9~12シードと当たる4回戦がひとつカギとなるでしょう。ライバルのディミトロフが苦手で昨年一昨年と連敗していますし、これまでずっと格上だったフェレールに対しても0勝4敗です。ただグルビスに対しては逆に4勝0敗とカモにしています。対抗シードが誰になるかがラオニッチの運命を大きく変えそうな気がします。 【グリゴール・ディミトロフ(世界ランク11位、全豪第10シード)】  現在23歳のディミトロフは昨年の全豪でベスト8に入っています。3回戦でラオニッチを、4回戦でアグーを撃破し、さらに準々決勝でナダルから1セット奪って追い詰めましたが2度のタイブレークを落としたのが響いて最後は逆転負けを喫しました。全英ベスト4やアカプルコ優勝に次ぐ、ディミトロフにとっては昨年のハイライトの一つです。  「ベビー・フェデラー」としてのオールラウンド性と非常に高いテクニックを持ちますが違う面もあります。フェデラーよりは素直にストロークを打ち合って戦う選手です、トップ10で言えばベルディヒに近いかもしれません。高いテクニックを持ちながらそれをあまり生かせない展開が多い選手という印象があります。  そして昨年終盤からの不調を引きずっているのが大きな不安材料。事のはじめはおそらく全米だったでしょう。ディミトロフは4回戦で対戦したモンフィスに幻惑されミスを連発して完敗。その後最終戦争いを展開するはずだったシーズン終盤戦では精彩を欠きました。4つのSPを逃してその後一気に押し切られたバーゼルのフェデラー戦や、マレーの守備力を前になす術なくストロークミスの山を積み上げたパリMS3回戦といった敗戦を振り返ると負けという結果より内容の悪さが目立ちます。それは前哨戦でも変わりませんでした。準決勝のフェデラー戦では11本のウィナーに対して23もUEを犯すという酷いテニスで4度のブレイクを許し1時間とかからず敗退。フェデラーが仕掛けたバック攻めがディミトロフを完全に攻略してしまったのが非常に印象的でした。  正直このままでは上位陣と当たっても勝機は薄いというのが個人的な見立てです。だがその先週にしてもシャルディやクリザンといった30位周辺の選手達(全豪では下位シードにあたる)は撃破しているので実力がないわけではないのです。まぐれで全豪ベスト8やWBベスト4には入れません。なにかきっかけがあれば復活しそうな気もします。そのきっかけを全豪で掴めるでしょうか?