オフシリーズ・閑話球題 ⑰テニスの「数字」その3 テニスという「ほんのわずかの攻防」
こんにちは。
現在GAORAで錦織圭一挙をやっています。
私もさっき見ていたのですが、一つ新しい発見がありました。
マイアミでのフェデラー戦についてですが、マイアミでもフェデラーはかなり速い展開でのラリーを仕掛けていましたね。ファイナルでの錦織戦に通ずるものがありました。
ファイナルと違った点はやはり後半戦の1stですかね。ラリーで主導権を取れてなかったのが少しずつ五分になってきたのとフェデラーのフリーポイントが減っていたことが勝因だったようです。まだ第2セット途中までしか見れていませんが。
さて今日はまた最初にクイズです。
ファイナルでのフェデラー×マレー戦は錦織の準決勝が決まる大事な一戦となりました。
多くの方が見ておられたと思いますが、そこでクイズです。
あの試合、フェデラーは6-0、6-1でマレーを蹂躙しました。あそこまでの大差がつく試合になるとは思っていませんでした。
ではこの試合のフェデラーのポイント獲得率は何%だったでしょうか?
また正解を少し下に書きます(PC版的には、です。スマホ版は改行がきかないようです)。
正解は69.2%(78ポイント中54ポイント、マレーは24ポイント獲得)です。
多くの方が「意外と少ない」と思ったのではないでしょうか。そうです、中央値の50パーセントからわずか20%しか開いていません。というか、マレーって3ポイントに1ポイントくらいは取れていたのか…と驚かれたと思います。
私も感覚的には80は超えてくるようなくらいフェデラーの圧倒を感じたのですが、実際は70%を切ってきます。
ここで学んでおきたいことは、ポイント獲得率70%は思っている以上に強いファクターであるということです。次回やるサーブスタッツの話ですが、70%はこれくらいの破壊力を持っているということを頭の片隅に入れておきましょう。
さてこの数字は驚きの事実を示してくれます。
あれだけの大差がついた試合でも勝った側が70%しか取れていないということは、普段の試合だとどうなるのだろうか?
そこでこんな仮定で試合を行ってみましょう。
ビッグサーバーのA選手と全部普通レベルのB選手が試合をしました。
A選手は自分のサービスゲームでは、持ち前のサーブでエースを量産。6ゲームとも40-15からゲームを取りました。
B選手はサービスキープに苦しみ、すべて30-40のブレークポイントのピンチから3本連取し、かろうじてキープに成功、タイブレークに持ち込みました。
さて6-6のこの地点で試合展開として圧倒的に押しているA選手は何%のポイントを取ったでしょうか?
さっきの話を聞いても60パーセントくらいはありそうだと思ってしまうのですが、実は53.8%(42/78)です。
これは結構衝撃的です。B選手はブレークポイントを6本も迎えていて、A選手はブレークポイントを一度も与えずに楽々キープしているのにほぼ5割に近いこの数字です。
A選手はサービスゲームで24/30=80%のポイントを獲得、リターンゲームでも18/48=37.5%のポイントを獲得。単純に確率を足し算して2で割ると60パーセントくらいあるのですが、ここがテニスの面白さです。
実は獲得ゲーム数が同じ(=ブレーク数が同じ)場合、ほとんどのケースでポイント獲得率は50%から1~2パーセントの間に収束します。
なぜこういうことが起こるのか?これはポイント獲得率で議論するよりもポイントの「貯金・借金」で考えるとわかりやすいです。
1ゲームをとるときのポイントの勘定は以下の4通りしかありません。以下ではサービスキープの立場に立って説明していますが、リターンでも結局同じことが言えます。
40-0からキープ→貯金4
40-15からキープ→貯金3
40-30からキープ→貯金2
デュースにもつれてキープ→何回デュースが続こうが貯金2
さてここで6-6になった時の2選手を整理すると、
A選手は貯金3にあたるゲームの取り方を6回
B選手は貯金2にあたるゲームの取り方を6回
したわけです。
つまり6-6になった地点でA選手が貯金6しか稼げていないことが分かります。実際お互いのポイント数は42対36ですからこの計算は合っていますね?
そして着目したいのはどれだけ悪くてもゲームさえ取れれば貯金2、必死にラブゲームで取っても貯金4しか貯められません。
みなさんも知ってのとおりなかなかラブゲームキープというのは出ませんので、ほとんどのケースで貯金3か貯金2を貯めるゲームが続きます。
この繰り返しをしていくわけですから12ゲーム終わってもたかが総ポイントの差は5とか、もっと少なくなることがほとんどです。
12ゲームもやればこのモデルのように70ポイントくらいは消化しています。
もし貯金が2しかなければ70ポイントの時36-34となり、この時のポイント獲得率は36/70=51.4%となり、さっきの話に一致します。やはり1~2パーセントの間に収まるのです。
こう考えると、実はテニスの試合のほとんどが最終的なポイント獲得率で数%の間のせめぎあいで戦っているとわかりますし、3セットマッチともなれば、よりゲーム数を消化することで、フルセットであれば大概48~52%の間に収束しています。
逆に言えば、試合を通して60%も取れていれば大差で勝っているということにもなります。
ちなみになぜこんなに確率が接近するかのもう一つの考え方として選挙の死票という考え方も有効です。
1対1の小選挙区の対決で当選=ゲームを取ったと置き換えましょう。
すると仮に6つの選挙区で全勝した(=6-0のスコアになった)としても、実はすべて僅差で(=デュースにもつれるような死闘だったとして)、全部の票数(=ポイント数)は意外と競っていたというような感じで、比例区だったらいくつか議席を取れていたというような感覚と同じです。
つまりゲーム獲得には至らなかったけど取ってはいるポイントというのがお互い結構あるので、確率としてはかなり50%に寄って来るのです。
この辺はせっかくなのでATPのライブスコアアプリで来週の試合のデータを見てみれば一目瞭然かと思います。
ところが現実のテニスはこうではありません。サービスキープという絶対目標があります。
次回はサービスキープと確率についての話です。明日は年末でスポーツ全体を振り返るので、記事2本の予定です。それでは。