”By the numbers”最終回後編。引き続き、来年注目の選手達を紹介。今回注目する選手達は、100位周辺から大きくジャンプアップして一躍トップ選手の仲間入りを果たした選手達。 ★50RANKアップ&TOP50入り達成者一覧 ダビド・ゴファン  今月7日に24歳になったばかりのゴファンは今年91ランクアップで22位まで上がってきました。ゴファンがブレイクしたのは2012年の全仏。ラッキールーザー(直前で本戦に欠場者が出た場合、予選決勝の敗者が参戦できる制度)でグランドスラムデビューを果たした当時109位のゴファンはステパネクなどを破る快進撃を見せなんと4回戦に進出。憧れだったというフェデラーとの対戦を実現させ1セット奪う大健闘を果たしました。ウィンブルドンでも3回戦進出を果たしたゴファンは2012年を46位で終えます。だが2013年はトップ選手の壁にぶつかり思うように勝ち星を挙げられず、さらに全米後左手首を負傷。残りのシーズンを棒に振ってしまいました。ランキングは一時113位まで下降。  今年も前半戦は思うように勝てなかったゴファンでしたが、ウィンブルドン後のチャレンジャー大会で覚醒し3週連続優勝。さらにその勢いで乗り込んだ250のキッツビュールでツアー初優勝を達成して「4週連続優勝」。 予選から参戦したウィンストンセーラムでも準々決勝まで進んだゴファンの連勝(予選やCHを含むので公式記録ではありませんが)はなんと「25」まで伸びたのです。  この後もゴファンの勢いは止まりません。全米では2012年以来となるGS3回戦進出を達成。デビスカップ2連勝でベルギーのWG残留に貢献。ベルギーとの国境に近いフランス・メスの250大会でツォンガを破るなどして優勝、ツアー2勝目。地元ベルギー、モンスのCH大会で貫録の優勝。さらにバーゼルでも同世代のライバル、ラオニッチを撃破するなどして準優勝。7月から11月までのたった4か月で106→22の84ランクアップを達成したゴファン。来年もウィンブルドンまではポイントがほとんど減らないため更なる順位上昇も期待できます。 テニス選手としては小柄な180㎝の身体を目いっぱい使って打ち込むストロークが持ち味の選手。現代のテニスにはよく合っていて、どんなコートでも活躍が期待できます。まずはグランドスラムで唯一実績のない全豪でどんな活躍を見せてくれるか注目です。 ドミニク・ティエム  オーストリア出身のティエムは今年21歳の若武者。昨年は地元オーストリアの2大会、キッツビュールとウィーンでWCを貰った以外はフューチャーズ大会中心の転戦となったものの、その2大会でいずれも2勝して準々決勝に進む活躍。そして今年の全豪では初めてGSの予選を突破し、本戦初勝利も挙げて本格的にATPツアーでの活躍を始めました。まだ全豪終了時の順位は113位でしたが積極的にATPツアーにエントリーし次々と予選を突破、インディアンウェルズMSでは本戦でもシモンなどを破りトップ100入りを果たしました。その後もどんどんATP大会予選へのエントリーを続けるチャレンジャーとなったティエムは最終的に7大会もの予選を突破しました。もちろん今年度のトップ回数です。  予選突破7大会目となったマドリッドでは2回戦でバブリンカに逆転勝ちする大番狂わせ。20歳以下によるトップ3撃破はなんと5年ぶりという快挙でした。7月には昨年に続いてキッツビュールで躍動、今度は決勝にまで進出しトップ50入り。翌月の全米では2回戦でコーチを同じくする兄弟子のグルビスと対戦、グルビスの負傷にも助けられ勝利を収めると4回戦(ベスト16)まで進出しました。この快進撃により大会後のランキングは現在のキャリアハイである36位を記録しています。  ディミトロフと同様、若手では珍しい片手バックハンド使い。全米より後の戦いを見ていると、先に紹介したゴファンが昨年そうだったように思うように勝ち星を挙げられない時期に入ってきてるかなあという印象があります。一旦伸び悩むのはほとんどの若手が通る道です。それを乗り越えての2度目のブレイクを起こせるかどうか、来年のティエムを見守りたいものです。 テニス大国アメリカ復権へ~ソックとジョンソン  ロディックを最後にトップ選手が消えてしまったアメリカ勢。イズナーが孤軍奮闘しているものの奮闘止まり、腹部の怪我に苦しんでいたクエリーはCH転戦を重ねてようやくランキングを戻してはきたもののまだ35位。彼らにキャリアハイ(それぞれ10位、17位)以上の活躍を期待するのは難しく、となるとアメリカ復権の鍵は若手勢が握ることになります。  22歳のジャック・ソックは今年ダブルスでウィンブルドンを制しました。シングルスでも今年は1年通してATPツアーを回りながら着実に実績を積み上げています。最高実績はアトランタとニューポートの準決勝進出が最高とまだ爆発力には欠けるものの、1年通してトップ選手と戦い続けてこの順位を記録したという自信と経験は来年以降の戦いに繋がっていくはずです。  一方のスティーブ・ジョンソンは錦織世代で誕生日もわずか4日違い、今日25歳の誕生日を迎えます。イズナーと同様大学を卒業してからプロに転向したジョンソン。今年は157位からスタートしたものの自国大会を中心に予選本戦問わず勝ち進み一気にランキングを上昇させました。ソックとともに楽天オープンでもベスト8に入っています。彼ら二人とドナルド・ヤング、計3人のアメリカ人若手はアメリカ復活ののろしを上げられるのか? 錦織の同世代の活躍に期待  錦織世代の選手(1989年生まれ、今年25歳)には先に挙げたジョンソンとヤング、フランスの若手ペイル、そして表の中にいるクリザンがいます。全仏ジュニアを制した経験も持つクリザンは2012年にCH5大会優勝、全米でツォンガを撃破し4回戦進出など一気に大ブレイクし一時は最高26位を記録。だが2013年は思うような実績を残せず、昨年のポイントが入れ替わるとともに順位を逆戻りさせてしまいました。  だが2014年、全豪で予選を突破すると一気に3回戦まで進出しトップ100に復帰。ミュンヘンでは予選から勝ち上がりユーズニー、ハース、フォニーニと当時のトップ20を3人撃破して文句なしの優勝(ツアー2勝目)。全仏では錦織を破って全豪に続く3回戦まで進出。56位までランキングを上げて迎えた北京ではまたしても予選から勝ち上がり準々決勝でナダルを破る快挙。世界ランクキャリアハイへの復帰はもうすぐです。錦織と来年以降切磋琢磨できるような関係になってくれるのではないかと、個人的に期待しています。