オフシリーズ・閑話球題 ④ATPツアーの紹介その2(4~6月)
こんにちは。
時々間隔をあけないと全20回くらいしかないので(前言ってたのより増えてるぞ…)、気を付けながらやっていこうと思います。ネタ切れいやだ…
さて今回は4~6月です。主には2つのシリーズしかありません。
欧州クレーシリーズ(week14~week22)
一つのシリーズ、規模としては最長のシーズンです。暖かく、そして暑くなってくると赤土の季節がやってきます。
特徴は言うまでもありません。全選手がクレーを戦う唯一のシーズンで、ナダル、フェレールといったクレーコーターが活躍します。
ちなみに欧州クレーシリーズとしていますが、week14以外すべての開催地が欧州にあるのも特徴です。
移動が少ないので、連戦を選ぶ選手も少なくありません。
全仏オープンシリーズとしていないのも規模の大きさゆえです。GS1つ、マスターズ3つ、500が1つと稼ぐ選手はとことん稼いできます。
2013年のナダルはモンテカルロ準優勝以外は全部優勝したので、このクレーシリーズで5100pを稼ぎました。
あれだけ錦織が頑張って1年間で5000pですからいかにこの数字が異常かお分かりでしょう。
クレーコートですから試合時間が長くなります。ラリーで粘っていける選手が勝ちやすいのですが、あまりやりすぎるとけがにもつながるので難しいところです。
あとはナダルらを筆頭としたスペイン人選手の台頭ですね。地中海付近はクレーコートがほとんどなので(開催地を見ると察します)、やはり幼少期から練習している選手が結果を出してきます。
week14(4/6~12)
全米クレーコート選手権(ヒューストン、クレー、ATP250、昨年優勝…ベルダスコ)
アメリカで行われる唯一のクレー大会。
イズナーが毎年出ていますが、今年はベルダスコが優勝。
実は錦織圭が2011年に準優勝している大会で、デルレイビーチ以来の決勝進出だったものの、当時そこまで上位でなかったスウィーティングにまさかの敗戦でがっかりしました。
この後今年のバルセロナまでクレーではほとんどいい成績が残っていなかったので、クレーは苦手という見方が定着していたと思います。本来クレーコートはストローカー有利なんですけど…昔の錦織に対する不思議な点の一つでした。
ハッサン2世グランプリ(カサブランカ、クレー、ATP250、昨年優勝…ガルシア=ロペス)
地中海の対岸モロッコで行われるアフリカ唯一のATPツアー。
今年はトップ30のシモンがなぜか予選から参戦するなど(いまだに理由不明)話題になった大会でした。
ベテランのガルシア=ロペスが優勝。やはりスペイン人選手が結果を出します。
week15(4/13~19)
モンテカルロ・ロレックス・マスターズ(モンテカルロ、クレー、マスターズ1000、昨年優勝…バブリンカ)
貴族の町モンテカルロで行われる100年以上続く伝統の大会。
マスターズ1000でありながら出場義務はないものの、トップ選手の80パーセント以上の選手が出場する豪華な大会。
今年は荒れに荒れて史上初のスイス人同士の決勝戦となり、先にペースをつかんだバブリンカが全豪以来の優勝。マスターズ初タイトルを手にし一発屋でないことを証明しました。
冠スポンサーのロレックスはテニスに多額の広告をつぎ込んでいただいているメインスポンサーといっても過言ではない企業で、地元スイスのフェデラーが広告塔になっています。
week16(4/20~26)
バルセロナ・オープン・バンクサバデル(バルセロナ、クレー、ATP500、昨年優勝…錦織)
今年は湧きました。21世紀に入って初のスペイン人でない選手同士の決勝、そして12年ぶりのスペイン人以外のチャンピオンが誕生しました。
一部の試合での第2セットの中だるみを除けば、すべてのプレーで圧倒し続けた錦織が新クレーキングに名乗りを上げる優勝でした。
一方ナダルはアルマグロに逆転負けし、2週連続優勝に届きませんでした。
ナダルはクレーに出れば優勝を求められますから、はっきり言ってこの結果は異常でした。
BRDナスターゼ・トロフィー(ブカレスト、クレー、ATP250、昨年優勝…ディミトロフ)
ナスターゼはATPランキングが始まった最初の週に1位だったルーマニアの英雄の名前にちなんでいます。近年ルーマニアはテニス選手がなかなか出てこないですね…
今年は第1シードで出たディミトロフが貫録の優勝で、錦織とともにクレー初タイトル。世代交代を印象付ける1週間でした。
week17(4/27~5/3)
イスタンブールオープン(イスタンブール、クレー、ATP250、新設)
新設の大会です。イスタンブールは女子の最終戦を開いたこともある場所ですが、ATPツアーの誘致は初です。どんな大会になるか楽しみです。
BMWオープン(ミュンヘン、クレー、ATP250、昨年優勝…クリザン)
テニスにスポンサーとして最も協力しているのはメルセデス・ベンツですが、このBMWも大会を開いています。
ミュンヘンで行われる大会は、コールシュライバーを筆頭としたドイツ勢の活躍が目立ちます。
今年はクリザンが復活の優勝。のちに全仏で錦織を倒すこの選手が勢いをつけました。
ちなみにドイツは主要3サーフェス(ハード、クレー、芝)のすべてのATPツアーを開催している唯一の国です。
ポルトガル・オープン(オエイラ、クレー、ATP250、昨年優勝…ベルロク)
首都のリスボンから少し離れたところにある町でヨーロッパ最西端のATPツアーが行われます。
最近ポルトガルは2013年にポルトガル人初のツアー優勝を達成したソウザの活躍で盛り上がっています。
今年はラオニッチに勝ったベルロクが、決勝で0-6から奇跡の大逆転勝利でベルディヒを退けて優勝しました。
week18(5/4~5/10)
ムチュア・マドリード・オープン(マドリード、クレー、マスターズ1000、昨年優勝…ナダル)
記憶に新しいのは今年の決勝です。
クレー10連勝していた錦織がついにクレーキングナダルとの対戦。世代交代なるか注目されましたが、試合はとんでもない結果に。
錦織がナダルを圧倒し、あと2ゲームとしたところで股関節のけがに泣かされ、無念の逆転負け。ナダルのクレー3大会連続優勝なしかに見られた試合はとんでもない結末を迎えました。
サーフェスとしてはクレーの中では速く、高地にあることからボールが飛びやすいとされています。多彩な攻めができ高速コートにも強い錦織には相性のいいコートだと思われます。
week19(5/11~17)
BNLイタリア国際(ローマ、クレー、マスターズ1000、昨年優勝…ジョコビッチ)
今年行われたイタリア唯一のATPツアーで、マスターズ1000は折り返しの5大会目。
今年は決勝でジョコビッチが勝ち、今期のマスターズ3勝目を挙げました。
風が強いのと低速クレー(マドリードよりは)が特徴です。
week20(5/18~24)
デュッセルドルフ・オープン(デュッセルドルフ、クレー、ATP250、昨年優勝…コールシュライバー)
2012年までATPツアー唯一のチーム戦、ワールドホース・チームカップが行われていた場所。2013年から通常のトーナメント大会に戻りました。
しかし全仏前週ということもありチームカップ時代から人が集まりにくい大会で、2015年の開催は危ぶまれています。ジェノバが代替候補地になっていて、公式でも発表が割れているので不透明な状況です。
ニース・オープン(ニース、クレー、ATP250、昨年優勝…ガルビス)
地中海に面するニースで最後の前哨戦が行われます。
昨年はガルビスが優勝し、翌週の全仏4強に向け弾みをつけました。
week21、22(5/25~6/7)
全仏オープン(パリ・ローランギャロス、クレー、グランドスラム、昨年優勝…ナダル)
長い長いクレーシーズンの最終戦は全仏オープンです。
ヤニック・ノア以来30年以上男子シングルス優勝がない地元フランスはそれでも毎年湧きに沸きます。
遅めのクレーと跳ねるコートは独特で、スピンボールを得意としているナダルは2005年に初出場初優勝してから現在までに通算66勝1敗。あの09年ソダーリン(現在は病気療養中)に敗れた以外はいまだ無敗。現役のアクティブプレーヤーでナダルに土をつけた選手はいません。まさに帝国と呼ぶにふさわしい場所です。応援もナダル寄りの人が多く、2013年準決勝では最後まで追い詰めたジョコビッチに対し劣勢になっても多くの声援が寄せられました。
現在のテニス界において最も難攻不落といっていい場所で、ジョコビッチが生涯グランドスラムを達成できていない原因になっています。フェデラーも09年に勝つまで苦しみました(しかもこの時も直接ナダルを破ったわけではない)。
これまでにも幾多の名選手がここを取れなかったほど、戦い方が特殊で勝つための難しさが詰まっているコートです。
センターコートはフィリップ・シャトリエ。フランステニス界に尽力された方の名前が付けられています。
もともとはデビスカップ用に作られたのが会場のローランギャロス。パリ近郊ということもあって多くのテニスファンが集まります。
フランス人選手に対する熱の入った応援は注目です。パリマスターズで見られた方も多いと思いますがあんな感じです。いやそれ以上かもしれません。
試合のコールがフランス語で行われるのも特徴です。というかそれに順応してフランス語でコールする国際審判の方々がすごすぎる…
全仏が終わると息もつかずに「芝シリーズ」に突入します。
そのものずばり5週間だけの芝コートでの大会が続くシリーズです。一応ウィンブルドン翌週のニューポートを含む場合もありますが、きりの問題でウィンブルドンまでとします。
芝シリーズ全体の特徴はサーブアンドボレー、この2つの技術に秀でた選手が上位に来ます。
特にすべるコートですのでビッグサーブが減速しないので有効です。
あとはフットワークが難しいことで知られています。私たちがプレーしていても人工芝ですら結構足とられますからね。
ちなみに錦織が芝であまり勝てない理由はビッグサーバー有利よりはここにあると思っています。マドリードでの怪我があったとはいえ今年の芝での動きはかなり悪かったです。
そしてスライスショットが跳ねなくなるため有効で、これをうまく使ってフェデラーはウィンブルドン7度、芝通算14度の優勝を果たしています。
week23(6/8~14)
トップシェルフオープン(スヘルトーヘンボス、芝、ATP250、昨年優勝…バウティスタ=アグト)
オランダの小さな町で芝シーズンが開幕です。
今年はバウティスタ=アグトがツアー初優勝。サーフェス万能であることを証明しました。
メルセデスカップ(シュツットガルト、芝、ATP250、昨年優勝…バウティスタ=アグト)
今年まで7月武者修行シリーズにクレーサーフェスとして存在していた大会。なので昨年優勝が同一選手になっています。
メルセデス・ベンツはファイナルの個人送迎用車にも使用されるなど、テニス界のメインスポンサーの一つです。
今年はバウティスタ=アグトが2勝目を挙げ好調をアピールしました。
バウティスタ=アグトは今年どっちの大会に出るのでしょうか。
week24(6/15~6/21)
ゲリー・ウェバー・オープン(ハレ、芝、ATP500、昨年優勝…フェデラー)
ドイツの田舎町で行われる大会は、服飾メーカーのゲリー・ウェバーのスポンサーで、テニス大会だけでなくこの1週間を一大イベントとして世界中からこの町の人口以上の人を招いて行っています。
ホスピタリティの充実も特徴で、フェデラーは引退するまでの生涯契約を結んでいます。
2015年からATP500に昇格、さらに充実した大会は前哨戦とはいえ非常に高いレベルでの試合が予想されます。
今年はフェデラーが準決勝で錦織を破り、決勝でファリャを破って優勝。期待に応えました。
エイゴン選手権(クイーンズ(ロンドン)、芝、ATP500、昨年優勝…ディミトロフ)
ロンドンの歴史あるテニスクラブ、クイーンズテニスクラブが開催することからロンドンではなくクイーンズと呼ぶことが多い大会です(現在はファイナルがロンドン開催なので、それと混同しない理由もありそうです)。
というかウィンブルドンも含めればロンドンは3大会も開いてるのか…うらやましい
今年からATP500に昇格、48ドローと大きいことから多くの選手が参加しており、32ドロー(2015年は不明)の少数精鋭で行うハレとは違い多くの選手が力試しをします。
今年はマレー×ウィンブルドン女子チャンピオンのモレスモのタッグの初陣で注目が集まりましたが、残念ながら早期敗退。
大会はサーブ&ボレーヤーのロペスとフェデラー2世の呼び声高いディミトロフと芝巧者同士の一戦に。どちらかも引かない好勝負(個人的な今年の非ATPベストマッチ5傑に入っています)はディミトロフが制し、今シーズン唯一の3サーフェスすべてでの優勝者になりました。
week25(6/22~6/28)
エイゴン・ノッティンガムオープン(ノッティンガム、芝、ATP250、新設)
ノッティンガムはテニスファンであれば多くの方が知っている町だと思います。
昨年までの芝1週目に長くチャレンジャーとして開催されていた大会で、芝2週目はウィンブルドン予選になるために、予選出場者の前哨戦としてレベルの高い試合が行われていました。
今年芝シーズンが3週になったことでツアーに昇格しました。
しかしウィンブルドン前週で予選と重なるため、これまでの主な出場者は予選に行きます。どんな顔ぶれになるのか楽しみです。あるいは芝巧者が3週連続出場を狙ってくるかもしれないですね。
week26(6/29~7/12)
全英オープン(ウィンブルドン(ロンドン)、芝、グランドスラム、昨年優勝…ジョコビッチ)
正式名称「The Chanpionship」。4大大会と4つの大会を並び称されるものの、歴史と伝統において最高峰の大会。ここのセンターコートで戦い優勝することがテニス選手最高の名誉とも言われています。
大会の特徴は挙げればきりがありません。
前年の優勝者がセンターコートのこけら落としを飾り、ドレスコードは白一色が義務。そして大会が進むごとに剥げていく芝。試合終了後の優勝セレモニーの素早さ。すべてがウィンブルドンを作り、すべてがウィンブルドンである証拠だと思います。
コートサーフェスとしてはかなり速く(といっても昔よりはだいぶ遅くなったようですが)、すべるコートに加え後半戦は芝と土の混合サーフェスから起きるイレギュラーバウンドも特徴で、コート特有の戦い方が必要です。
サービスキープが最も多い芝コートではなかなかブレークに結びつかない場面が多く、2010年にはビッグサーバーとサーブ&ボレーヤーの対戦となったイズナー×マユ戦で、ファイナルセット70-68、試合時間11時間5分というテニス史上最長試合が行われたのもウィンブルドンならではです。ちなみにウィンブルドンは一度試合が入ると中断などをしてもそのコートから動かないという決まりがあるので、この間試合の行われていた18番コートはずっとイズナー×マユ戦でした。今は18番コートの近くに記念レリーフがあるそうです。
伝統を重んじることから、昨今のテニスのルール改正などにも消極的なのも特徴です。
現在ではどこの大会でも見るチャレンジシステムも導入時にはかなりもめました。
ドレスコードには消極的な選手(スポンサーのロゴも時にアウトな場合があるので)もいますがこれもなくなりません。
現在時間短縮ルールの導入が議論されていますが、ウィンブルドンはどんな判断を下すのか…
昨年はジョコビッチとフェデラーが決勝にふさわしい熱戦を見せ、ジョコビッチが2011年以来の優勝を手にしました。
ウィンブルドンはいちばん長く書くと決めてました。私も一度でいいのでセンターコートに立ちたいなあ…(無理)
次回は7月~全米OPまでと、デビスカップの話です。それでは。