フェデラー、バブリンカの想い~スイス初優勝、二人の矜持~
すっかり更新が遅れました。久しぶりの記事になります。
スイス、やりました。見事な勝利でデビスカップ初優勝です!!
展望記事ではフェデラーの背中のけがにかかっていると書きましたが、それ以上の様々な要素が絡んだ決勝で、今シーズンの主要大会の最終戦、面白い試合が続きました。
スイスのここまでの勝ち上がりを考えると、1回戦のセルビア戦(ジョコビッチなど欠く)はフェデラー1勝、バブリンカ1勝でダブルスは今回控えの二人で勝利。
準々決勝のカザフスタン戦はフェデラーが勝ったもののバブリンカがゴルベフに敗れて、緊急登板したフェデラー/バブリンカ組もまさかの敗戦、1勝2敗で迎えた最終日を二人が連勝して辛くも突破。
準決勝のイタリア戦はフェデラー、バブリンカが勝ってダブルスを控え組に回し温存。きっちりフェデラーが勝って決勝に進出。
ここまで、フェデラーがシングルスで5勝0敗、バブリンカがシングルスで3勝1敗。
二人で勝ち上がってきたこのチームから主力が欠けそうになる。さらにツアーファイナルズでのチーム内不和も話題になり、スイスは正直厳しいのではという見方でした。
ゴルベフに敗れたようにバブリンカは正直波の大きい選手で、フランスほどの実力者のたくさんいるチームなら不調の場合簡単に負けてしまうことが推測されました。
つまりスイスチームにとってはどのラバーについても安定的勝ちが得られない状況での決勝でした。
その中での初戦のバブリンカの快勝は大きかったです。あそこがまず決勝の一つの山場でした。
バブリンカにとっても今シーズンは意味のあるシーズンでした。
初のグランドスラム優勝、マスターズの優勝、自己最高位3位到達、年末自己最高4位フィニッシュという記憶にも記録にも残るシーズンになりました。
しかし来シーズンは苦境の中迎えます。
全米で錦織に負けて以降は3大会連続初戦敗退。1勝4敗で迎え全敗もありうると指摘したファイナルでした。
そのファイナルで復活し、フェデラーを最後まで追い詰めました。一気に復調し、この場所に合わせてきました。
その結果が初戦けがを抱えていたとはいえツォンガに対する快勝です。1セットこそ落としたものの、ダブルフォルトで不甲斐なく落とした第2セットのみで終始試合のペースを離しませんでした。
第2ラバーのフェデラー。正直ここで勝てばスイスの優勝は決まったも同然でしたがフェデラーは精彩を欠きます。
正直あれだけの状況からここまで試合になっているというほうが驚きでもありましたが、しかし負けは負けです。1勝1敗で迎え、一気にスイスは絶体絶命に追い込まれます。
というのもこの後の第3ラバー以降は
第3ラバー キウディネリ/ラマー × ベネトー/ガスケ
第4ラバー フェデラー×ツォンガ
第5ラバー バブリンカ×モンフィス
となっており、正直ダブルスの名手ベネトーに対してキウディネリ/ラマーでは見劣りします。
それにこの事前オーダーもフェデラーに3連投させないためのいわゆる「捨てダブルス」です。
手負いのフェデラーが回復できなければこの2試合に連敗し、バブリンカを残し敗戦が決まってしまいます。
そこでメンバーチェンジしてくることは織り込み済みでしたが、やはりフェデラーを酷使できないということでバブリンカとどちらかを一人交代するという予想でした。が、ここでスイスチームは思い切って二人とも交代、そう、フェデラーの3連投を選んだのです。
もちろんフェデラー/バブリンカは北京五輪金メダルペア。何度もデ杯で勝ってきているペアですが今回に限っては今年カザフスタンに敗れているのもありリスキーな賭けでした。しかも可能性も結構薄いと思っていました。
何せ先週揉めていた二人です。簡単に和解とは言いますがダブルスです。片方がケガ持ちということもあり難しい場面でしたがこの第3ラバー、二人の意地を見ました。
完璧でした。あの金メダルペアが帰ってきました。ほとんどチャンスを与えずにフランスに快勝。先に王手をかけました。
デ杯ではダブルスが重要と言われます。
3勝するための方法を考えればわかりますが、1人異常に強い選手がいるチームに勝つためには、仮にその選手に2敗してもダブルスを含めた3試合を取る必要があります。
また強い選手からすれば3連投になる代わりにダブルスに出て活躍すれば「ほぼ一人で」3勝することも可能です。
また試合順から言っても第3ラバーが終わればどちらかが王手をかける状態になり、最終日に向け大きなプレッシャーをかけることができます。
フェデラーはこのシステムに泣いてきた選手でもあります。
自分が2勝しても他で1つも勝てず、優勝を逃すこともありました。
しかし今年は違う、バブリンカがいます。
来年はどうなるかわかりません、ラストチャンスになるかもしれないこの場面、2人とも集中していました。
そして第4ラバーは日に日に回復していたフェデラーがガスケにブレークポイントすら与えない強さで終了。終わってみればスイスの3勝1敗で優勝が決まりました。
こうしてフェデラーは主要14+2タイトル(グランドスラム4、マスターズ9、ファイナル1、五輪、デ杯)のうち13番目のタイトルを手にしました。クレーのマスターズ2つは難しいので、残すは五輪の金メダルのみとなりました。
レジェンドにまた一つ大きなタイトルが加わり、2014年シーズンは幕を閉じました。
さて年末ランキングはこれで確定しました。こちらです。
1 ジョコビッチ 11510
2 フェデラー 9775
3 ナダル 6835
4 バブリンカ 5370
5 錦織圭 5025
6 マレー 4675
7 ベルディヒ 4665
8 ラオニッチ 4440
9 チリッチ 4150
10 フェレール 4045
錦織は5位でフィニッシュ、もちろん日本人、アジア人最高位で、これより上のランキングに年下の選手はいません。
来年は新世代「Young Guns」の先頭を切って時代を動かしてくれることを期待しましょう。
というわけで今後のオフシーズンは以前お知らせしたシリーズ「閑話球題」です。来シーズンのテニス観戦を100倍楽しむために今シーズンから入った人を特にターゲットとして、2日に1回かそれより速いペースで更新していきます。お楽しみに。それでは。