いよいよ今年最後のマスターズ、パリMSが開幕します。パリMSは毎年荒れる大会として知られています。年末に行われる大会ということで選手達は皆疲労がたまっています、他の大会より凄い頻度で番狂わせが起きます。さらに昨年までは最終戦と2週連続だったため、回避したり早期撤退する選手も多くいました。  参考までに優勝者一覧を見てみると、過去10年で3回しかBIG4が優勝していません。このようなことは他のマスターズでは絶対にないことです。そしてフェレール(2012)、ソダーリング(2010)、ベルディヒ(2005)はパリ以外のMSで優勝経験がありません。いかにパリが荒れる大会かよくわかると思います。  ですが、過去3年を見るとジョコビッチとかフェデラーとかいう名前が並んでいます。今年から日程も変わり、パリと最終戦の間は1週間開けられることになりました。今までよりは番狂わせの少ない大会になりつつあるのです。それでもシーズン最終盤のこの時期に皆疲労がたまっていることは間違いなく、マスターズ優勝を目指すものにとってパリが一番の穴場であることには変わりないでしょう。  その中でこの2週間を休養に充てて良いコンディションで臨めるのが錦織です。今の錦織が狙うのはもう最終戦がどうたらとかいう話ではありません、その先です。現在レースランキングは5位(マレーが優勝した場合僅差で6位に落ちますが)。そして全くポイントを伸ばせていないバブリンカとも540P差と十分逆転可能なポイント差です。パリと最終戦の2大会の戦い次第では、自己最高位となる通常世界ランキング5位、そしてシード分けで大きく有利となるトップ4を狙える位置にいるのです。もちろん難しいミッションなのは間違いありませんが、今の錦織には不可能なことではないでしょう。錦織のMS初優勝に期待をかけつつ、ドローを見て行くことにします。ドロー表はこちら。 【トップハーフ(第1シード:ジョコビッチ)】  上海後休養を取り、第1子の誕生を見守ったジョコビッチもパリに到着。ディフェンディング・チャンピオンとしてパリに臨みます。しかしいきなり2回戦からコールシュライバーとの対戦が濃厚でこれはしんどい。続く3回戦もイズナーかモンフィスとの対戦が見込まれ休む暇もありません。トロント,シンシナティの時のような早期敗退も十分考えられます。  ジョコビッチの勝ち上がりが死活問題となってくるのが準々決勝でジョコビッチと当たるマレーとディミトロフでしょう。ディミトロフはアジアシーズン以降ことごとくドロー運が悪くやや可哀想な面もありますがこれは乗り越えるべき試練というべきか。上海のようにシード勢に当たる前に敗退することは避けたいところです。一方のマレーは今夜のバレンシアで優勝できるかで大きく変わってきます。バレンシアで優勝できれば来週のレースランキングで錦織より上に出るのでパリは早期撤退でも問題ないでしょうが… 【トップハーフ(第4シード:フェレール)】  フェレールがついに追い詰められました。ラオニッチに対してリードはしているもののポイント差はわずか25。パリでより勝ち上がったほうが最終戦の切符を手に入れることになります。そのフェレールの初戦はおそらく今週のバーゼルで決勝進出したゴフィン。そして続く3回戦では全米で敗れたシモンが控えます。このきつい連戦を乗り越えて180P、ベスト8には入らないとおそらくラオニッチに勝つことはできないでしょう。これまで5週間の死闘が実るかどうか、フェレールの真価が問われる2戦になります。  フェレールの対抗シードには我らが錦織圭が入りました、このメンバーを見る限りではベスト4入りの最有力候補は錦織でしょう。初戦はバレンシアで決勝まで勝ち上がったロブレドと最近不調のポスピシルの勝者との対戦、ここはおそらく問題なく突破できます。問題はその次です、病み上がりとはいえ第10シードの地元ツォンガが挑んできます。昨年のパリでは錦織がフルセット、最終セットタイブレークの末になんとか勝利を収めています。ここは全開で臨まないとなりません。  ここを勝てばフェレールブロックの勝者と対戦、さらに勝ち上がればジョコビッチブロックの勝者と対戦します。おそらく荒れるパリのことですからベスト8まで行けばシードは相当数欠けてるとは思いますが、相手の自滅に期待するなんて愚かなことはここでは辞めたいと思います。フェレールが上がってきたら、きっちり倒すのみ。 【ボトムハーフ(第3シード:バブリンカ)】  バブリンカのブロックは本命不在。なにせトップシードのバブリンカが不安定すぎます。東京、上海、バーゼルと3大会連続初戦敗退中。この大会でも多くを求めるのは酷でしょう。となるとバレンシアで初戦敗退し若干休養を取れたであろう第5シードのベルディヒに期待がかかります。  このブロックでカギを握るのは第12シードのF・ロペスでしょう、今年ベルディヒと3度戦い2勝1敗(通算でも6勝5敗)と勝ち越しており、二人の対戦が実現すれば面白くなりそう。 【ボトムハーフ(第2シード:フェデラー)】  フェデラーは結局というか当たり前というか、バーゼルで決勝に進出しました。当初パリはスキップするとの噂もありましたがこのまま参戦するようです。ポイントになるのはシャルディとの対戦になるであろう2回戦。初戦さえ問題なく勝ってしまえば後は通常運転でベスト4まで来るはずです。この夏MS2週連続決勝進出をやってのけた元王者は2週連続の戦いも苦にしません。  よりによってフェデラーブロックに入ってしまった対抗シードがフェレールとの一発勝負に臨むラオニッチです。ラオニッチはフェデラーに0勝5敗、しかも当初は善戦していたのに今年の2度の対決では完敗とむしろ後退してしまっている状況。このパリで当たってもおそらく勝ち目はありません。何がなんでも2つ勝ってベスト8まで進み、後はフェレールが躓いてくれることを祈る他ないのでしょうか…