5つのマッチポイントをしのいだフェデラーが絶妙なロブを決めてなんとか勝利を収めたとき、現地の時計は0時半を過ぎていました。11時間以上に渡る長い一日が終わりました。  昨日の上海マスターズは、初戦で敗れたチリッチを除くトップ10のうち9人+マレーという10人ものトップシードが登場して2回戦を戦う非常に豪華な一日となりました。しかしこの「ビッグ・ウェンズデー」は大荒れとなり10人のうち半分の5人が敗退してしまったのです。  まず最初に登場したのはバブリンカとフェレール。しかし二人とも初戦から強敵を迎えての一戦、バブリンカはシモンと、フェレールは北京ベスト4のクリザンとの対戦でした。バブリンカはシモン得意の守備的ラリーにも気持ちを切らすことなくなんとか第1セットは先取しました。しかし第2セット以降も相変わらずのプレーを続けるシモンの前にバブリンカはミスを連発。最終的に66個ものUEを叩きだしたバブリンカは7-5,5-7,4-6でシモンに敗れてしまいました。  一方ここ二週間連続で初戦敗退中のフェレール。対戦相手は現在絶好調のクリザンで、この試合でも素晴らしいショットをどんどん打ち込んできました。フェレールは元気なく第1セットを失うと第2セットも第11ゲームをブレイクされ5-6の大ピンチに陥ってしまいました。しかしこの土壇場でブレイクバックに成功したフェレールはその勢いでタイブレークを奪うと最終セットは一気に押し切ってなんとか初戦突破を決めました。  続いて登場したのは錦織とマレー。錦織は連戦の疲れからか、臀部の痛みからか、ほとんど動けない中でもソックにブレイクを許さず第1セットをタイブレークに持ち込みました。しかしここを落としてしまった錦織は第2セットはさらに動きが落ちてしまい、あっさり初戦敗退。まずは疲れと怪我から十分に回復するのが最優先でしょう、2週間後のバレンシアに期待です。マレーも三週連続参戦ですがこちらは体調に問題なさそうで、ヤノヴィッツを相手にあっさりとストレート勝ちを収め3回戦進出。3回戦でフェレールとの直接対決に臨みます(マレーの7勝5敗)。  最終戦争いで最後尾を走るディミトロフは10人の中で唯一テレビカメラのないコートに回されてしまいました。対戦相手はベネトーと初戦の対戦相手としてはかなり強い部類の選手。この強敵を相手にディミトロフは5-7,3-6であっさり敗退を喫してしまいました。ディミトロフはレースランキングでラオニッチとの300P以上の差を全く詰めることができないまま上海を後にすることになります。マレーやフェレールにも差をつけられディミトロフの最終戦出場はかなり厳しくなりました。  夕方になり登場したのはジョコビッチとベルディヒ。上海で25連勝中のジョコビッチはティエムを問題にせずあっさりストレート勝ち。優勝に向け全く死角は見えません。過去3勝6敗と苦手にしているガスケと対決したベルディヒも終始圧倒しこちらもあっさりストレート勝ち。今のところ北京決勝でも対戦したこの二人がトップハーフとボトムハーフの勝ち上がり選手最有力ではないでしょうか。しかし、その後コートに入ったラオニッチはモナコを相手に第1セットリードを許すとあっさりと棄権。試合後の情報では体調を崩し高熱を出していたとのことで、状態が心配されます。  ジョコビッチの後にはナダルが初戦に臨みました。しかしナダルは虫垂炎で体調を崩していることが前日に発表されるという辛い状態。なんとか薬で抑えて試合に臨んだナダルでしたがF・ロペスにストレート負けで初戦敗退…帰国後のナダルの対応が注目されます。場合によってはバーゼル以降の3大会の欠場もあるかもしれません。もし最終戦も欠場ということになりますと落選した選手の中から最上位が繰り上げ出場となりますが果たして…  22時頃にようやく試合となったのが最終試合のフェデラーでした。この日の大荒れの試合結果を象徴するかのようにフェデラーもL・マイヤーを相手に苦しみます。ショットの精度威力ともに非常に悪く、ストロークにはスピードもパワーも感じられずフレームショットまでも多発ししてしまう厳しい状態。なんとか第1セットは先取したものの第2セット以降はマイヤーがほとんど一方的に押す展開に。第3セットも先にサーブを打つマイヤーが主導権を握って試合を進めていきます。第10ゲームでは2本のMPがありましたがここはフェデラーがしのいで試合はタイブレークへ。  タイブレークもマイヤーが有利に試合を進め6-4で2本のMPを握りました。しかしここはフェデラーがパッシングショットを決めて試合を振り出しに戻して見せました…がその直後57個目のUEが炸裂してしまい5回目のMP。マイヤーは大金星が目の前に迫っていました。しかしタイブレークでリードを奪って以降マイヤーには明らかに硬さが見られ、最後の1本に届かなかったのです。最後はフェデラーが連続でバックハンドで完璧なロブを打ち上げゲームセット。タイブレーク9-7という死闘の末にフェデラーが3回戦進出を決めました。  番狂わせの連鎖から逃れたフェデラーはこの勝利で来週の世界ランキングを2位とすることが確定しています。