今期、錦織選手が本来の状態で臨めた試合は、何試合あったでしょうか?初戦のブリスベン、全豪迄は、ワウリンカにも勝利し、サーブも良くなっており、なかなかいい感じでスタートしたと思いましたが、、その大会の中でもブリスベン決勝デミトロフ戦で左臀部を傷め、全豪フェデラー戦で再発させていましたので、ブリスベンの3試合くらいしかなかったのではないでしょうか? そんな状況の中、今期のデータを見てもあまり参考にはならないかと思いますが、一応目を通すと、そんな中でもリターンゲームは昨年に続き健闘しました。リターンゲーム獲得率(RGW)29%は、立派だと思います。ブレークポイントを握る機会が多く、ブレークに繋げる確率も高い内容でした。どうすればブレーク出来るか、そんな事が錦織選手には身に付いているように感じます。やはり課題はサーブですね。手首や、肘も気にしているシーンがありましたので、その辺が原因だと私は思っています。ブリスベン、全豪では、サーブも良かったです。特に、アドサイドからワイドへのファーストサーブが良かったです。昨年までの錦織選手はこのサーブの確率が非常に良くなかった。練習で何かつかんだのかなと思いました。 以前の数字を見ると、サービスゲーム獲得率(SGW)は、’15年の86%、RGWは、’16年の30%が最高です。’15年のサービスゲーム86%は、上位対戦が少なかった事もあり、少し厳しい数字かも知れませんが、リターンゲームは32〜33%でも行けそうな気がします。そして、サービス84〜85%迄持って行ければ(可能だと思うのです)、ビッグ4達といい勝負が出来るのではないでしょうか。これも、心身共に元気ならという条件付きですが。 余談ですが、私はいつも、ポイントウォン(PW)より、ゲームウォン(GW)の方が重要な数字だと思っているようです。感覚的なものなのですが、考えてみると、PWは確かにそのプレーヤーの実力を表す数字ですが、こと勝負となると、如何にサービスゲームを落とさず、リターンゲームでブレークするかという事が重要です。先ずはゲームを取る事が重要になります。ゲームポイント、ブレークポイントをいかに取るか。30-30、ジュースの場面でいかにポイントを取るかが、ゲームを取る事に直結します。ラブゲームでサービスゲームを取って行ったとしても、そんな局面でポイントを落とすとゲームカウントで劣勢に立ち、セットを落とし、敗戦へと繋がって行きます。ポイント率より、勝負所のポイントを取れるプレーヤーが勝負には強い。錦織選手は、まさにそこが強いプレーヤーだと思うのです。 (スマートフォンの方は横画面でご覧下さい。) 先程の続きでゲームウォンに視点を当てて行きます。私はよく、サービスGWとリターンGWを足して、選手同士の強さを見比べる事をしています。そんな数字をキャリアデータで比べて見ます。 選手名:サービスGW+リターンGW=キャリア(今期) 錦織    :80%+27%=107%(110%) ナダル   :85%+33%=118%(122%) フェデラー :89%+27%=116%(118%) ジョコビッチ:85%+32%=117%(115%) マレー   :82%+32%=114%(111%) ワウリンカ :82%+23%=105%(106%) ラオニッチ :91%+17%=108%(108%) デミトロフ :83%+21%=104%(111%) Aズベレフ :81%+23%=104%(109%) ティエム  :82%+23%=105%(108%) チリッチ  :84%+23%=107%(109%) ゴファン  :78%+27%=105%(108%) ソック   :83%+20%=103%(101%) 先程書いたように、錦織選手がサービス84〜85%、リターン32〜33%迄になれば、116〜118%、ビッグ4クラスになるのですが、、トータルゲームで見れば同じでは、という話ですが、こんな事がいつも頭の中を浮遊しているのが私です。 (誤解のないように、トータルゲーム獲得率は、獲得ゲーム数÷総ゲーム数です。) それにしてもビッグ4は、他と大きく差がありますね。ワウリンカは、GSでビッグポイントを稼ぎ、MS以下では眠ったふりを決め込んでいる所以の数字なのでしょう。ラオニッチは、サービスゲームに特化している面白い数字ですので、引っ張り出して来ました。 若手は、おしなべてリターンゲームが今後の課題となるようです。ティエムは意外にリターンゲーム獲得率が低いです。 その他の今期データを見て行きますと、ゴファンの試合数が、ナダル、ズベレフをも上回り最多、昨年後半から凄まじい試合数を消化しています。全仏での不運な故障がありながらの記録です。このプレーヤーもそろそろ十分な休養とメンテナンスが必要でしょう。今期の活躍を受けて忙しいオフを過ごしていなければ等と、他国のプレーヤーながら心配してしまいます。 勝率は、ほぼフェデラーの独壇場です。試合数を間引き、出場した各大会にコンディションを合わせた事が、上手くハマった要因でしょう。元々持っているものが違うフェデラーだからこそ出来る技だと思います。何という36歳!来年37歳になり未だこんなプレーを見せてくれるのでしょうか?是非、錦織戦を見せて欲しい。今期の全豪戦、2015ATPファイナルズ、2014マイアミ、錦織選手はフェデラー相手の時に素晴らしいプレーを見せてくれます。 スタッツは、ナダルの独壇場。決してサービスが強いと思えないナダルですが、1stの確率が高く、セカンドからも高いポイント獲得率を誇り、サービスゲームを安定させ、得意のリターンゲームでブレークを奪い、数多くの勝利を積み重ねました。トータルゲーム獲得率61%は驚異的です。 デミトロフの対トップ10勝率61.5%、ブレークポイントセーブ率70%も立派。如何に勝負強く、精神力が強くなったかという証です。来期のデミトロフもやりそうな雰囲気があります。 ズベレフは、77試合に出場し、レベルの高いプレーを見せ、数字的にも全体的にレベルの高さが見受けられます。ただ、後半少し息切れ気味だったのでしょうか、勢いに衰えが見えました。しかし、オフ期間には、チーム力でトレーニングや戦術を練り、来期スタート時にはまた成長した姿を見せるのではないでしょうか。昨年、一昨年とは体格が変わりましたよね。昨年、シーズンを早めに切り上げ、課題を持って内容の濃いトレーニングや練習を重ねたのでしょう。 来期、この中で最も正念場を迎えるのがティエムではないでしょうか。今期4,015ptの内、6月初旬のローランギャロス迄で3,120pt、来シーズンのこの辺りまでが正念場になります。ここまでを今期並みで通過出来れば、来期の躍進も期待できますが、どうでしょうか?今年は得意のサーフェスでナダル以外に怖いプレーヤーが少なかったですが、ジョコビッチ、マレー達が復帰して来ます。今期後半は自信をなくし持ち味のフルスイングが、少し中途半端に見えました。オフ期間に切り替えて来れるでしょうか。 今期、自己最高位4位を記録し6位で終えたチリッチは、実力・実績があり、来期前半はローマ辺りまで大きなディフェンドポイントがありませんので、5位か4位辺りまで上げるかも知れません。しかし、全仏以降芝シーズンのビッグポイントがあります。ジョコビッチ、マレー達がいる中でのディフェンドは、かなり厳しいのでないかと思いますが、、 ソックには失礼ですが、今期非常にラッキーだったのでは?パリでMSタイトルをものにしましたが勝ち上がりの対戦内容は3回戦ランキング19位のプイユ戦が最高位、SF・Fの相手は83位・77位でした。インディアンウェルズでは故障を抱えた錦織選手に勝ちSFに進みました。勝敗やスタッツを見ても250大会の2勝を含め3勝、決勝進出7回は立派ですが、トータルポイント獲得率50%等その他の数字はトップ8の数字ではありません。それでも、ファイナルズで2勝しラウンドロビンをクリアしました。 来期はどちらに振れるでしょうか。 スタッツを見ながら、来期の事を考えて来ましたが、この他に気になるプレーヤーと言えば、ラオニッチの回復、デルポトロ。 20位以下では、シュワルツマン(フェレールの様な存在になれるか)、クライノビッチ(パリのイズナー戦で、少し気になるプレーヤーに、、センス、運動神経、反射神経、殺し屋の表情)、ルブリョフ、シャポバロフ、チョン。それと、杉田選手(GSシード、20位台迄行けるか)、西岡選手の復帰後の活躍です。 そして何と言っても、錦織選手! ブリスベン、本当に出てくるのでしょうか? 来期のファーストゲーム、錦織選手はどんな姿を見せてくれるでしょうか。大注目です。