テニスの形を確立するのはそんなに簡単なものではないでしょう。観戦する側が焦りすぎなのかもしれません。好機に力みがはいりネットにかけるなどのミスがでます。20歳の若さもあるとは思いますが冷静さや自分の強みを活かしたA・ズベレフらしいテニスを構築して欲しいと思います。ジョコビッチのようにミスを抑えて安定したストロークによりFEでポイントを重ねていくテニススタイルが目指すところではないかと思います。今季は24位からのスタートであったことを忘れてしまいそうになりますが、今や堂々のトップ10プレーヤーです。もう少し時間が必要かもしれませんがフェデラーが24歳のズベレフを見てみたいと言うように伸びしろがりNO1選手になる資質は十分です。来季もツアーを盛り上げてくれるのもと期待します。 そのズベレフを破ってSFに勝ち上がってきたソックでしたがディミトロフに6ー4、1ー6、4ー6と逆転敗を喫しました。ソックの2ndポイント獲得率は第1セットは73%と好調でしたが、第2セットは2/7の29%と低下し、第3セットは0/7でした。第3セットは13/15と1st確率87%としていたソックは第8ゲームになると1stが入りません。おそらく意識したはずです。DF2つを含めて5つ全ての2ndを落としブレイクを奪われます。続く第9ゲームディミトロフに4つ目のマッチポイントを握られます。IWで同じく4つのマッチポイントを握られてからの逆転敗を喫したディミトロフとしてもその場面が脳裏をよぎったものと推測します。しかし、最後はバックハンドの深いスライスをソックがネットにかけてディミトロフは決勝進出を決めました。 ソックの強みはスピンの効いたフォアハンドにあります。しかし、このフォアハンドに頼り過ぎているのかネットにかけたりバックアウトするなどのミスもでますUE数はバックハンド15に対してフォアハンドは17です。バックハンドはスライスを多用し逆クロスはウイナーを取れるものの攻撃的な展開に持ち込むことは出来ません。ここが課題かもしれません。ダブルスのキャリアハイは6位というくらいにネットプレーも得意としています。パリMS初制覇をしトップ10入りしたソックはファイナルズでSF進出するという快挙をここでも見せてくれました。来季もトップ10を維持し更に上を目指して欲しいと思います。 決勝進出を決めたディミトロフですが、今季のスタートダッシュは素晴らしいものを見せてくれました。決勝で錦織を破り優勝したブリスベン、全豪ではQFでゴファンを破り、SFではナダルにフルセットまで縺れて惜敗、続くソフィアでも決勝でゴファンを破り優勝。トップ10外でしたがトップ5位ほどのキレと実力を感じさせました。しかし、ロッテルダムではQFでゴファンにフルセットのすえ破れ、続くIW3開戦でソックに破れて以来3大会連続初戦敗退するなど不調に陥ります。それでもシンシナティではマスターズ大会初優勝するなど後半戦には本領を発揮し、遂にナダル、フェデラーに次ぐ暫定ランキング3位に駆け上ってきました。不調のきっかけであったソックにSFで逆転勝利、ゴファンにRRで圧勝したのでした。 そのゴファンです。対戦成績では6戦し一度も勝利できていないフェデラーに2ー6、6ー3、6ー4と見事初勝利し決勝に進出しました。フェデラーはウイナーを量産するイメージですが、一方で相手の弱点をつきミス誘発するスタイルの両面を持ち合わせており相手や場面により使い分けます。これといって弱点のないゴファンに対しては攻撃的な展開とします。第1セットはフェデラーペースでゴファンのミスを引き出し先取します。しかし、第2セット以降はゴファンのミスが減少し、逆にフェデラーのミスが目立ちます。これまでフェデラーを苦手としていたゴファンの戦略はあったのでしょうか。フェデラーの全豪QFを思い出しました。対する錦織の戦略です。フェデラーの軸を崩すこと、左右に振ることです。フェデラーは軸を失うとフォアハンドは手打ちになり、威力を失ったりミスをします。ゴファンはバックハンド側に集めたあとフォアハンド側に振ったり、フォアハンド側のあとに逆をついて更にフォアハンド側へ、バックハンドのストレートを放つなどフェデラーのお株を奪うミス誘発とでます。同時にサービスやフォアハンドのキレもあり今季最高試合の一つといってよいでしょう。しかし、フォアハンド側に振られた球を一時期錦織に見られた巻くようにサイドラインをわるショットがフェデラーに目立ちました。フィジカル面に不安があったかもしれません。これでフェデラーの今シーズンは終了です。1500ポイント獲得、来季初戦でのNO1返り咲きの夢のチャンスは巡ってはきませんでした。しかし、ツアーを牽引したフェデラーの内容はNO1だったように感じています。来季は今季同様に全豪始動でしょうか、ここはゆっくりと休養し元気なフェデラーの勇姿をいつまでも見せて欲しいと思います。 さて、決勝のカードはゴファンとディミトロフのカードとなりました。シーズン前半は好調な出足としながらも中盤は不調に陥り後半は復調してきた両雄です。ディミトロフは前述した通りですが、ゴファンは2度の不運に遭遇しました。マドリードの疑惑の判定と全仏の転倒による離脱です。ここまで好調であっただけに残念でした。全豪QF進出、ソフィアOP決勝進出、ロッテルダム決勝進出、モンテカルロSF進出、そしてマドリードQF。今季2度の決勝進出するも敗退し6連続決勝敗退としていましたが、遂にこれを打開、*深セン、東京と連続優勝としました。このまま決勝3連勝としたいところですが、相手は苦手のディミトロフです。対戦成績ゴファンの1勝4敗です。RRでは0ー6、2ー6と完敗したばかりです。しかし、フェデラーとはバーゼルで1ー6、2ー6と完敗後の勝利であり可能性を感じさせてくれます。ゴファンに勝利に向けた戦略はあるのでしょうか。 いよいよ今シーズン最後の一戦となりました。2010年以来フェデラー、ジョコビッチ、マレーと7年連続ビッグ4が勝利してきたこのビッグタイトル。どちらがとっても初制覇です。どのような結末が待っているのでしょうか。楽しみです。