言葉も出ないくらいの激闘でした。今季最高試合の一つと言っても良いでしょう。試合後のフェデラーの目が潤んでいるようにも写りました。デルポトロが頭を抱えたままの姿が印象的でした。ここまで魂をかけてフェデラーに挑む選手もなかなかいないと思います。母国スイスで決して諦めない姿をフェデラーは改めて見せつけてくれました。両者とも全てを出し切った素晴らしい感動的な激闘でした。 個人的な見解ですが、この両者の闘いの醍醐味は駆け引きです。駆け引きの応酬を感じ取れます。一つ一つのプレーに意味があり、イメージを実践していきます。実践できます。観戦する側としても気を抜けません。先に仕掛けるのがフェデラー、受けて立つのがデルポトロです。 伏線は上海MS準決勝にあります。予想通りデルポトロは得意とするディユースコートからのワイドサービスを封印します。試合を通じて1stのワイドサービスは2本のみ(おそらく)でした。そのワイドサービスにフェデラーは対応しました。 第1セットは互いのブレイク奪取で始まりました。互いにミスがでます。上海同様に相手の弱点をつく戦略のように思えました。しかし、デルポトロはフェデラーのミス、フェデラーはウイナーでポイントを重ねます。こういう流れのケースでは、私の多くの観戦と分析からフェデラーが有利に思えていました。デルポトロに必要なのはウイナーです。この時既にフェデラーはミス誘発戦略から攻撃的なテニスへと移行していました。デルポトロの優れている点は相手の戦略を適切に読み、戦略を切り替えることが出来るところにあります。フェデラーが攻撃的なテニスを展開する場合は多少のリスクは恐れません。そして、徐々に精度をあげてウイナーを量産していきます。デルポトロはこのフェデラーの戦略を受けて、ラリーに打ち勝つ展開へと移行します。第5ゲームは4つのウイナーをとります。第9ゲームはフェデラーのパッシングウイナーがことごとく決まりブレイクを奪いますが、続く第10ゲームにデルポトロが再びブレイクバックします。結局このセットはタイブレークに縺れデルポトロがとります。1st確率はデルポトロの65%に対してフェデラーの43%でした。ウイナー数はデルポトロの14に対してフェデラーの20でした。 第2セット、フェデラーに疲れを感じました。このままデルポトロに持って行かれるのではないかと思いました。第5ゲームフェデラーは3つのDFをだすも201kmなダブルファーストなどで凌ぎます。このチャンスを活かせなかったデルポトロの敗因がここにあったかもしれません。そして第10ゲーム、フェデラーは駆け引きを越えた戦略にでます。ドロップショットとネットプレーで30ー0としブレイクを奪いワンセットオールとします。 第3セットは総力戦でした。第1ゲームにフェデラーの4つのUEでブレイクを奪われますが、続く第2ゲームにブレイクバックします。第4ゲームにフェデラーはブレイクを奪いフェデラーがリードします。デルポトロの2ndではポイントを取れません。このセット6つの2ndは全てポイントを譲りました。それでもデルポトロに諦めを感じさせませんでした。デルポトロの210km前後の1stの精度があがりますが、フェデラーが逃げ切り勝利しました。第3セットの1st確率と1stポイント獲得率と2ndポイント獲得率です。 フェデラー:60%ー72%ー58% デルポトロ:75%ー67%ー 0% 上海MSは、デルポトロの6ー3、3ー6、3ー6、この試合は7ー6、4ー6、3ー6でした。試合後、デルポトロは頭を抱えていましたが、どのような想いでいたのでしょうか。フェデラーが先に仕掛け、デルポトロが受けるイメージです。見方を変えるとデルポトロは積極性にかけるとも言えると思います。ただ言えることは、ここまでの連戦を闘い抜くことができていることと、復帰後もっとも充実しているという事でです。 フェデラーはぎりぎりの状態であっかもしれません。昨年のWBチリッチ戦、ラオニッチ戦と重ねていました。パリMSは欠場ですが納得です。 36歳のフェデラーは今季49勝4敗です。11大会に出場し7大会勝利しています。GSは全豪、WBの2勝、MSは、IW、マイアミ、上海の3勝です。フェデラーの目指すところにNO1返り咲きがあるとすると、今季はパリMSに出場したとしても無理と思います。仮にツアー・ファイナルを勝利したとするならば来季に可能性は残します。この選択は正しいと思います。 フェデラーは凄い、鉄のメンタルを持っています。やはり最後はメンタルなのかと思わさせてくれます。