第7シードの錦織圭は、世界ランク103位のオースティン・クライチェク(アメリカ)に格の違いを見せつけ、1回戦に続き試合時間2時間未満のストレートで3回戦に勝ち進んだ。  前日までとは一転して朝から雨がぱらつき、マーガレット・コート アリーナは屋根を閉じてのスタート。メルボルン名物の風の心配が消えて、ビッグサーバーの相手に有利とはいえ、錦織もインドアコートはむしろ歓迎だ。課題とするサーブが思うように決まり、テンポのいい流れで持ち味のストロークが冴えた。  ジュニア時代を同じアカデミーで過ごした仲。「やり難いものですよ」と口では言うものの、手の内を知り尽くした錦織にスキはない。立ち上がりから頻繁にネットについて積極的な攻撃を展開。ラリー戦になれば、自信一杯に相手を振り回してウィナーを続けた。まずは第1セットの第4ゲーム、2つのダブルフォルトを絡めとってラブゲームでサービスブレイク。このセットは自分のサービスも82%の確率で決まり、ファーストサーブからのポイント確率94%という出来過ぎの25分で先行した。29ポイントと14ポイントというダブルスコアの力の差だ。  錦織の特徴はストロークの妙技。そこに高い集中力が加味された時に「勝てない相手はいない」ほどの強さが発揮される。それでも、5セットマッチの2時間から3時間の展開の中で一貫して集中力を維持するのは至難の業だ。第2セットもいきなり第1ゲームをブレイクしてのスタートだったが、これだけ相手を圧倒しながらも、テニスには自分の内側での戦いも存在する。互いにサービスゲームをキープして進んだ第10ゲーム、初めてブレイクポイントを握られ、3度まで凌いだものの、4度目にダブルフォルトを献上してブレイクバックを許した。 「あそこまで、ほぼやりたいようにプレーできていましたが、ちょっと硬くなって、足が動かなくなりました」  微妙なさじ加減で流れは変わり、もしトップ選手が相手だったら一気に盛り返されていただろう。しかし、タイブレイクでも冷静そのものにサービスエースを2本決め、第3セットもブレイクポイントを与えない余裕の勝利だった。 「タイブレイクを仮に落としていても、持ち直したとは思いますが……」  21回ネットに出て16ポイントを獲得、サーブ&ボレーを4度試みて3度成功とネットプレーの多用が目立った。錦織はスロースターターと言われるが、ラウンドが進み相手のレベルが上がるにつれて挽回不可能になる率も高まる。それに備え、この日は意識的に攻めたという。ネットプレーの多用も、手の内を知った相手だったからこその冒険だ。3回戦の対戦相手はギジェルモ・ガルシア ロペス(スペイン)、世界27位のオールラウンドプレーヤー。大会2週目の深くまで勝ち進むためには、歯ごたえのある試合も必要になる。とりあえずは、涼しい室内での短時間勝負で体力温存できたのは大きい。  日本勢では、奈良くるみがロシアの新鋭マルガリータ・ガスパリアンにストレートで敗れ、女子ダブルスの青山修子、二宮真琴のペアも初戦で敗退した。  その他の女子では第4シードのアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)がユージェニー・ブシャール(カナダ)の挑戦を退け、マリア・シャラポワ(ロシア)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)とともに勝ち進み、男子でもロジャー・フェデラー(スイス)など上位勢が順当に勝った。 文:武田薫