第5シードのラファエル・ナダルが、同じスペインの32歳、フェルナンド・ベルダスコに敗れる波乱があった。ナダルの1回戦負けは全豪オープンでは初、グランドスラムでは3年前のウィンブルドンで敗れただけという番狂わせだった。7年前の準決勝では5時間14分の接戦を戦った2人だが、最近のベルダスコは持ち前のスピードが衰え、ランキングは45位に降下。一方のナダルも昨年の不調から持ち直したかに見えていたが、前哨戦のドーハではノバク・ジョコビッチ(セルビア)に完敗(1-6、2-6)し、この大会でのプレーが注目されていた。  立ち上がりからベルダスコの積極的なプレーが目立ち、第1セットを押し気味に進めてタイブレークで先取した。ナダルが第2、第3セットを奪い返したものの、ベルダスコは再び第4セット、持ち前のリスキーなショットで攻めに転じ、ここもタイブレークで奪って流れを引き戻すとそのまま逆転した。ウィナーがベルダスコの90に対しナダルは37。ナダル特有の、ベースライン後方からの強烈なドライブ攻撃は影を潜めており、現在は戦術変更を模索している過渡期。ベルダスコが因縁の対決で、起死回生を狙った勝利、時代の変わり目を物語る番狂わせと言っていいだろう。  女子でも第2シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)、第8シードのビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)が敗れる波乱の日程の中、予選勝ち上がりで異色の18歳、大坂なおみが世界ランク104位のドナ・ベキッチ(クロアチア)をパワーで圧倒して4大大会のデビュー戦をストレート勝利で飾った。  文字通り大阪生まれの大坂なおみは、父がハイチ出身のアメリカ人、母は日本人で3歳まで日本で育った。姉の大坂まりとともに父からテニスを教わり、パワフルなプレーはジュニア時代から注目されていた。初めてツアー本戦に進んだ2年前のスタンフォードでサマンサ・ストーサー(オーストラリア)に勝利。セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)も素質を高く評価する新星だ。対するベキッチもクロアチアの早熟プレーヤーで、これが今大会唯一の10代対決だった。  大坂は出だしから、グランドスラム初体験とは思えないのびのびしたプレー。サービスエースこそ少なかったが、最高時速195㎞のファーストサーブで追い込んでから、じっくり打ち合ってウィナーを23本も決めた。特に打ち合いからの切り返しが巧く決まり、第1セットは第2、第6ゲームをブレーク。第2セットの第1ゲームには7度のデュースを勝ち切ってブレークするなど、辛抱強さも際立っていた。日米を股にかけて活動し、現段階では二重国籍。日本協会への登録はないが、JOC強化選手として西ケ丘ナショナルトレーニングセンターで日本人スタッフの指導を受けている。会見では「最初に英語の質問を」と切り出されると「英語だけです」と断り、日本語は勉強中だという。  その他の日本勢では、やはりアメリカ人を父に持つダニエル太郎、杉田祐一、伊藤竜馬が敗れ、女子では土居美咲が惜敗した。 文:武田薫