平成28年1月3日(日)~6日(水)に広島広域公園(広島県広島市)で、ろう者テニスの練習会が行われた。(「ろう」は聴覚障がいを意味し、ろう者テニスは「デフテニス」ともよばれる) ろう者テニスの試合では、選手は全員補聴器を外し、審判のジャッジには手話が用いられる。ルールは通常のテニスと変わらない。 聴覚障がい者のオリンピックである「デフリンピック」の公式競技にもなっており、一般のテニス同様にろう者テニスは世界各国で行われている。 練習会は日本各地から選手が集まり、聴覚障がいの選手と健聴者の選手合同で行われた。 今回は、練習会に参加していた3名の選手にインタビューを行った。 ■梶野耕佑さん(活動地:大阪府) Q.テニスを始めたきっかけ A.「小学校5年生の時にテニスを始めました。テニスを始める前からサッカー部に入っていました。動くことが好きだったので、昼間はサッカー、夜にテニスを行うようになりました。」 Q.テニスの魅力、楽しさ A.「昔は自分のためにテニスを頑張っていましたが、今は若い人たちを育てるのが楽しみです。」 Q.目標 A.「若い人を引っ張って、耳の聞こえない人たちにテニスを教えていきたいと思っています。テニス人口をもっと増やしていくことが目標です。」 テニス歴23年の梶野さんは、過去にアジア太平洋ろう者競技大会でダブルス2位の成績を残している。ベテラン選手として若手を引っ張っていこうという気持ちが、インタビュー時にひしひしと伝わってきた。 ■笹島航太さん(活動地:京都府) 笹島さんは現在17歳で、普段は一般高校のテニス部で活動している。 まだ高校生ながら、初出場した昨年の全国ろうあ者体育大会テニス競技でシングルス2位の好成績を残している。今後を担う若手選手として活躍が期待されている。 Q.テニスを始めたきっかけ A.「テニスのアニメを見て興味を持ち、テニススクールに入りました。中学校2年生のときから本格的にテニスに取り組むようになり、より厳しいスクールに移りました。今は高校のテニス部に所属しています。去年日本ろう者テニス協会のホームページを見てろう者のテニスがあることを知り、梶野さんと出会いました。去年初めて全国ろうあ者体育大会に出場してレベルが高い選手がいると感じました。今はろうあ者体育大会で負けた梶下さんに勝つことが目標です。」 Q.テニスの魅力、楽しさ A.「思ったところに打てることが楽しくて、相手の逆をついてショットを決めた時が嬉しく感じます。試合中はボールを確実に相手コートに決めることや次の戦略を考えたりしています。接戦の時は気持ちが焦ってしまわないよう、心に余裕を持つことを心がけています。」 Q.目標 A.「目標はテニスをもっとおもしろく、楽しくプレーすることです。勝ち負けにこだわることは大事なので、楽しんで勝つことが一番ですね。」 ■梶下怜紀さん(活動地:東京) 梶下さんは幼少期からテニスに親しんでおり、その実力はろう者テニスにとどまらず、健常者の大会でも好成績を残している。2009年のデフリンピックではシングルスで銀メダルを獲得し、2015年の第1回世界デフテニス選手権大会にも出場している実力派プレーヤーだ。昨年の全国ろうあ者体育大会ではシングルス決勝戦で笹島さんを破って優勝している。 Q.テニスの魅力、楽しさ A.「球を打つところの位置を少し変えるだけで試合の流れが変わるところです。相手のスタイルをどのように攻略していくかがおもしろく、常に同じ状況はないため、試合ではいろいろなことを試しています。」 Q.目標 A.「デフリンピックでメダルを取ること、それをきっかけに、デフテニス(ろう者テニス)を知ってもらうことです。」 Q.伝えたいこと A.「ろう者はコミュニケーションが取りづらいことで自分から周囲に声をかけにくい人が多いので、もし健常者がデフテニスプレーヤーを見かけたら声をかけて一緒にテニスをしてほしいと思います。また、デフテニスプレーヤーも、テニスをしていないろう者に『テニスをしよう』と声をかけて仲間を増やしてほしいと思います。デフテニスにもっと目を向けていただき、ろう者も健常者も一緒になってプレーをしたいと思っています。テニスは安全で誰もが楽しめるスポーツです。興味のある人がいたら日本ろう者テニス協会に気軽にメールを送って下さい。」 参加者たちは練習会の期間中はほとんどの時間を練習場で過ごしている。 全員に共通していることは「テニスが好きだ」ということ。 彼らのような熱い気持ちをもったテニスプレーヤーが、きっと日本にはまだまだいるはずだ。 「声をかける」というちょっとした勇気が、後々、とても素晴らしい世界を作り上げるかもしれない。