第2シードの錦織圭が完璧なサーブを軸に、対戦成績が五分のサム・クエリー(アメリカ)にストレート勝ちしてベスト8。連覇に向けてエンジンがかかってきた。  秋晴れの青空の下、第1試合を秋篠宮さま、長女の眞子さまもご観戦になって盛り上がりを見せてきた大会第3日、熱戦が続いた。第1試合ではジョアン・ソウザ(ポルトガル)が第7シードのフェリシアーノ・ロペス(スペイン)に挑戦し、フルセットの末に初勝利。第2試合では予選勝ち上がりのドナルド・ヤング(アメリカ)が第6シードのマリン・チリッチ(クロアチア)に挑み、こちらはフルセットの末にチリッチが2回戦に駒を進めた。  接戦が押して錦織とクエリーの2回戦は試合開始が4時半。肌寒い時間帯になったが、1ポイントも見逃せない接戦に満員のスタンドは緊張感に包まれた。  錦織圭のサーブでスタートした第1セットは、いきなりラブゲームでサービスキープして好発進。しかし、クエリーの時速200㎞を超す強烈なサーブの壁がリターンからの展開を阻み、互いに1度もブレークポイントを与えない拮抗した展開でタイブレークにもつれ込んだ。 「最近では一番いいサーブができたと思います。何度も対戦している相手で、リターンがそこまでいい選手ではないのは分かっていたので、楽にサービスゲームをプレーできたこともあると思います。ただ、相手のサーブもスライスを混ぜて、予想できなかった。それでもしっかり自分のサーブに集中できたのがよかった」  なかなかチャンスが訪れない中、攻め急がずサービスゲームに集中できた冷静さがタイブレークで生きた。過去3勝3敗の相手とブレークポイントなしのタイブレーク……僅かな精神的な乱れが均衡を崩してしまう。こういうポイントに経験値の差が出るのだろう。  錦織はいきなりミニブレークを許したが、そこからクエリーのファーストサーブが決まらず、連続ブレークバックで流れを取り戻し、2-1からの2度のサーブを維持したのが大きい。この緊張した展開を抜ければ、勢いは錦織のもの。第2セットは、確率82%のファーストサーブのからポイント獲得率93%、4度のサービスゲームで相手に1ポイントしか与えないという完璧な試合展開で力の差を見せつけた。  全米オープン初戦では、ブノワ・ペール(フランス)のビッグサーブに手こずり2本のマッチポイントをつかみながら逆転負けしただけに、ビッグサーバーとの対戦を乗り越えたのは嬉しかったようだ。試合後の感想を「とてもいい試合でした」の一言で表現して会心の笑みを浮かべた。1日置いた準々決勝で対戦するのは、マリン・チリッチとスティーブ・ジョンソン(アメリカ)の勝者。いずれもビッグサーバーということも、頭には浮かんだのだろう。  センターコートの第4試合では、第1シードのスタン・ワウリンカ(スイス)と伊藤竜馬が対戦。昨年は番狂わせを演じた伊藤は第2セットを奪い返す健闘を見せ、ファイナルセットも0-4から3-4まで追い上げたが、あと一歩届かなかった。  第4日は2回戦の残り4試合などが行われる。 文:武田薫