男女のベスト4が出揃った。  男子の準決勝はノバク・ジョコビッチ(セルビア)vsマリン・チリッチ(クロアチア)、ロジャー・フェデラーvsスタン・ワウリンカ(以上スイス)という豪華な顔ぶれに決まり、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の「年間グランドスラム」をめぐる女子準決勝は、セレナvsロベルタ・ビンチ、シモナ・ハレプ(ルーマニア)vsフラビア・ペンネッタと、強打のトップ2シードにイタリア勢が挑戦する興味深い対戦になった。フェデラーとワウリンカの2人のスイス勢は昨年の全豪オープンでもそろってベスト4に入っているが、グランドスラムの女子でイタリア勢がベスト4に2人進んだのは初めてのこと。  この日の圧巻は、第2シードのハレプと第20シードのビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)の激突だった。ともに強打の持ち主で、我こそ「打倒セレナの挑戦者」を自認するだけに、立ち上がりから息を呑む打ち合いが繰り広げられた。アザレンカが183㎝、70㎏の逞しいボディーから圧力を掛ければ、ハレプは168㎝と小柄ながら〈爆弾娘〉の異名に相応しいパワーと小回りでしぶとく反撃する。ハレプは前哨戦の2大会でともに決勝まで勝ち進み、ハードコートのプレーに自信を深めてきた。第1セット、グイグイと押してくるアザレンカに粘り強く応酬しながら、よく走って、ライン際に際どく勝負をかけた。第4ゲーム、5本目のブレークポイントをついにもぎ取って先手を奪った。  アザレンカは今年、セレナ・ウイリアムズと3度対戦し、敗れたもののいずれもフルセットでもう一息というところまで戦った。どうしても決勝にたどり着いて、挑戦したいという気持ちは強かっただろう。第2セットを奪い返した第3セット、アザレンカのサーブで始まった第1ゲームが壮絶な打ち合いになった。15-40からアザレンカが踏ん張り、デュースを5度繰り返し、3本のブレークポイントをかわしてサービスキープ。第2、第3ゲームで互いにブレークを交わす力勝負になれば、体力で優るアザレンカがやや有利な流れだった。が、皮肉にも第4ゲームの途中で雨が降り出して1時間半の試合中断。ハレプには、まさに砂漠に水。ここで休養をとれたことが大きかった。息を吹き返し、ボールコントロールでは優るハレプが第7ゲームで虎の子のブレークを得て、守り切った。  今大会の女子の試合ではベストマッチに挙げられる息詰まる熱戦だったが、これまで全米オープンでは4回戦が最高だったハレプは一気に4強入り。準決勝で対戦するペンネッタとは1勝3敗で負け越しているが、今年は3月のマイアミ、ハードコートでハレプが勝っている。セレナにとって、大記録までには高い壁があると言わざるを得ない。  男子はフェデラーがリシャール・ガスケ(フランス)を寄せ付けず、これで対戦成績は15勝2敗。もう1試合は、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)にアンディ・マレー(イギリス)を倒した心身の疲れが見え、ワウリンカの左右からの攻めに耐えられなかった。いよいよ大詰め。ここまで猛暑が続いたが、一転して降雨の予報が出ている。大舞台での経験もカギになりそうだ。 文:武田薫