USオープンのペール戦、前回のブログで敗因を書かせて頂きました。第1セット第2・第4ゲームのブレークチャンスをものに出来なかった事、第4セットTBでの2MPをものに出来なかった事、第5セットで錦織選手本来のゲーム運びが出来なかった事、直接的な原因は明らかだと思いますが、そんな局所だけの結果だけで判断をしていいはずは無いし、そこまでの状況にしてしまった原因、その他にいくつかのチャンスを作り出せなかった原因は何だったのか?  試合の中で、選手はまずチャンスを幾つ作れるか、そして作ったチャンスの幾つをモノに出来るか。今回は5セット(フルセット)ありました。例えば作ったチャンスが10回とし、その中で前述した2~3度のチャンスを生かせない事は普通に起きる事ではないかな、と思います。多分、作ったチャンスの内、モノに出来るのは半分も無いでしょう、2~3割といった所じゃないでしょうか?  作ったチャンス。その最たるものはBPですよね。今回は、錦織9・ペール8、この中からブレーク出来たのはお互い2回、それほど変わりません。だから、第4セットのTBが勝敗を分けたという事。と言われてしまう。そのような論評も実際多いです。しかし、錦織選手は、第1セットも、第4セット(TBに入る迄に)も十分に獲れる可能性があり、セットカウント3-0か、3-1で終わっている事の方が、至極自然な結果だったと思われてなりません。今さら言っても仕方のない終わった事ですが、負けた原因がどうしても納得が行かず、何度か見返しています。動画、スタッツ、何度見ても分かりません。本来少ないトータルポイントでも勝利を奪っていく、勝負強い錦織選手がレシーブポイントもサーブポイントでも相手を上回り(当然トータルポイントも)ながら負けた、非常にレアーなケースでした。  私の印象は、前回のブログにも書きましたが、特に錦織選手が素晴らしいプレーを見せてポイント先行する場面があるにもかかわらず、そのゲームをモノに出来ない。錦織選手のミス、ペールのサービスエース等(特に第3セット第3ゲーム15-40からペールの3連続エース)が思い浮かびます。  ブレークポイントではほぼ互角、しかし私には、錦織選手が素晴らしいプレーでポイントを先行し、リターンゲームの序盤を有利に進めたゲームが多かった印象が残っています。そのためか、今回の敗戦がとても勿体ない気がしてなりません。ブレークポイントの状況を見ても答が出ませんでしたので、少し見方を変え、リターンゲームでBPを迎えたゲームに加え0-30、15-30、30-30、40-40まで行ったゲームを含めたパフォーマンスを拾ってみました。実質ジュースと同じ状態と言える30-30も含めました。錦織選手もペールもこの試合を通じてお互い11ゲームずつ有りました。  錦織選手が獲れたのではとわたしが思っている第1セットと第4セットを見てみます。第1セットは、お互い2ゲームずつ有り、BPも4回ずつ、ただし第4ゲームはペールがラケットをコートに投げつけた格好になった件があり、0-40になったのは記録に付けていましたが、どういう経緯でペールがキープしたか全く記憶に残っていません。ラケットの件で呆気にとられ、このゲームの展開はライブで見ているにも係わらず、全く記憶に残っておらず、メモにも取っておらず、どうやってペールがキープしたか思い出せません。錦織選手も絶好のチャンスだったにも係わらず、呆気にとられていたのかなという気がして来ます。  録画を見ますと第2ゲームは取って取られてという展開で進み、錦織選手のフォアのウィナーでBPを握りますが、「ペールのDS」、「錦織のミス」で落とします。  第4ゲームは、ペールのDFもありましたが、錦織のパッシング、フォアのウィナーで0-40となります、しかしリターンミス等「錦織のミス」、最後はペールのネットポイントで取られました。錦織のミスの一つが、ジュースからペールのファーストサービス(FS)でラケットが飛び、そのセカンドをリターンミスしたポイントです。  第4セット、錦織選手はリターンゲーム6ゲーム中3ゲームでチャンスを握ります。それも第3ゲームは0-30、2ポイント共いいポイントです。粘って1ポイント目、2ポイント目も私は素晴らしいと書いています、しかしその後ペールの「サービスウィナー(SW:レシーバーは触る事は出来たがほぼエースといえるサーブ。)」、「錦織のリターンミス」等でブレーク出来ません。  第5ゲームは、ペールのDF、錦織のフォアのウィナーで30-30迄持って行きますが、「ペールのSW」等でブレーク出来ず。  第7ゲーム、錦織選手の相手コート奥深くへのナイスリターンで30-30迄持って行き、その後も左側に振られたボールにギリギリ追い着き、相手の逆をつく右への素晴らしいショットでジュース、しかし「ペールのSA」、「錦織のリターンミス」(ワイドへのキックサーブ)で又もブレーク出来ず。  特に第3セットは、この視点で見たチャンスをリターン5ゲーム中4ゲームで掴み、何とか4回目のチャンスで1ブレークを奪いこのセットを取る事が出来ましたが、その前の3ゲームでは、錦織選手の素晴らしいプレーがありながら、ペールのサーブに阻まれブレーク出来ませんでした。  こうやって見ますと錦織選手は、第1、第4セットで数多くのチャンス(7ゲーム、4BP)を作りながら一つもモノにする事が出来ませんでした。それも、唸るようなプレーで掴んだチャンスが何度もありました。  そのチャンスを逃したのは、殆どが「ペールのサーブ」、「錦織選手のミス」によるものです。  二人のウィナーを見てみます。ペール64(内訳:サービスエース(SA)21、サービスウィナー(SW)7、ラリー36)。錦織34(SA 1、SW 3、ラリー30)。   ラリーからのウィナーの数は36と30でさほどの差ではありません。この日のペールのサーブがどれほど良かったかという事です。それも大事な場面で、ビビるどころか、思い切って打ち放ち、何度もピンチを切り抜けました。  今回のペールは、サービスエース21本(キャリア1試合平均6.5本・今年8.1本)。  ファーストサーブ63.7%(キャリア52%・今年54%)。  サービスポイント率70.0%(キャリア・今年共61%)。  サービスゲームで大当たりでした。サービスの場合、相手が良すぎると対処のしようが無い、ある意味仕方が無い面が多々出て来ます。調子に乗せてしまったと解説している方もいますが、この面については、錦織選手も防ぎようがなかったのでは無いでしょうか。  しかし、錦織選手が今回の試合を勝利に導くために、自身で出来た事があったとするなら、それはもう一つの要因である「チャンスを掴んだ際のプレー」だという事になります。  本来、ゲームポイント、セットポイント、マッチポイント近くの大事な1、2ポイントには、滅法強い錦織選手ですが、この場面で「思い切った振り抜き」、「我慢強い打ち合い」が出来ず、先にミスが出てしまう場面が、かなり出てしまいました。そのうちの1ポイントでもミスせず取れていれば、その後の展開次第で、あるいはセットカウント3-0か3-1で錦織が勝利し、2回戦以降に進めていた様な気がしてなりません。  往生際の悪い分析だったかもしれませんが、これも次回以降の錦織戦観戦のポイントにしたいと思います。  今回は、非常に残念ですが、ペールにしても錦織選手にしても、良きに付け、悪しきに付け、お互いに起こり難い事が双方に起こってしまい、非常に確率の少ない、まぐれの様な事が現実になってしまった例だと、私は結論付けたいと思います。 グランドスラム、日本人初の第4シード、昨年のファイナリストとして臨む、ルイアームストロングスタジアムでの1回戦(初戦)は、錦織選手にとって、今までにはない大きな期待と緊張感でいっぱいだったのでしょうか。我々には想像も出来ないような。そう考えると、更に大きな目標に向け、貴重な経験を踏んだという事になります。  今後、さらに錦織選手が真価を示してくれる事を祈っています。