昨年に続いて予選を勝ち上がった西岡良仁が、同じ予選上がりながら、かつて世界ランク12位まで上がったポール アンリ・マチューを3時間22分のフルセットで破り、グランドスラム初勝利を手にした。  きつい直射日光の下、西岡のしたたかな戦術が光った。セットオールで迎えた第3セット、タイブレークで2本のセットポイントをつかみながらかわされ、セットを奪われた。 「第3セットは取れたセットだったけれど、相手が33歳ということを考えて、試合が長引けば自分に有利になると言い聞かせながら頑張りました」  好調なサーブ、正確なストロークで相手を十分に動かし、第4セットを6-1、第5セットを6-2で奪い返しての鮮やかな逆転勝利。昨年は1回戦で途中棄権しているが、生まれて初めての5セットを冷静に進め、1年間の成長を物語った。相手の下調べも十分。デビスカップ日本代表の植田実監督がマチューの動画を持っていたのは偶然で、マチューの予選の最終戦の相手が、大会後のデ杯ワールドグループのプレーオフで対戦するコロンビアのアレハンドロ・ファージャだった。しかも、ファージャは西岡と同じ左利き。相手がクロスコートを中心に打ってくるという読みも当たった。  錦織圭と同じ、盛田正明さんのジュニア育成ファンドの支援を受け、フロリダのキャンプで修業してきた。身長170㎝という小柄なハンディを強気の攻撃テニスで乗り越え、今年は全仏に次いで2度目のメジャー本戦入り、そして今回、念願の初勝利。ジュニア時代にはラケットを投げつけるなど気短な態度が目だったが、そんな荒くれも影を潜め、大人になったと自己分析する。2年連続で予選をクリア、ツアーでの自信が後押ししているのだろう。 「19歳ですが、置いて行かれている感じがありますね。早く100位以内に入りたい」  現在の西岡の世界ランキングは128位だが、クロアチアのボルナ・コリッチ(18歳=33位)、オーストラリアのタナシ・コキナキス(19歳=71位)、ドイツのアレクサンダー・ズベレフ(18歳=82位)と同世代が活躍し、その流れが刺激になっている。次の相手は同じ左利きで第30シードのトーマス・ベルッチ(ブラジル)。初戦敗退した兄貴分の錦織圭の分まで期待を背負うが、緊張はないと自信たっぷりだ。  その他の日本勢では、第27シードのアリゼ・コルネ(フランス)と対戦した奈良くるみが第1セットを奪われながら、久々に粘り強い攻撃を展開して逆転、全米では3年連続になる初戦突破を果たした。初出場の日比万葉は敗退した。  男子では第3シードのアンディ・マレー(イギリス)がニック・キリオス(オーストラリア)を退け、第2シードのロジャー・フェデラー、第5シードのスタン・ワウリンカ(以上スイス)、第6シードのトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)らとともに上位勢は安泰。女子では第2シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)、優勝候補の一角ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)らが勝ち上がったのに対し、第6シードで全仏オープンの準優勝者ルーシー・サファロバ(チェコ)は姿を消した。 文:武田薫