さていよいよ今夜から全米が開幕です。錦織もルイ・アームストロングの第1試合を任され、ペールと1回戦を戦います。同じ1989年生まれの対決は基本ストローク勝負で進んでいくでしょう。初戦は別に絶好調でなくてもかまいません、調子は後から上げていけばいいので。ただいたずらに体力を消費することだけは避けて、できればストレート勝ちしてくれればと思います。他にはジョコビッチ、ナダルなどトップハーフの面々がそれぞれ初戦に臨みます。  今日は全米開幕直前ということで、1つの記事ではちょっとボリュームたりないかな?という記事を3つまとめてお送りします。あまり関連性のない記事3つですが、ぜひ読んでいただければと思います。 【ベテランの現在地】  我々はベテランというものの捉え方を変えなければならないのかもしれません。例えばワウリンカやツォンガは現在30歳。彼らをベテランと呼ぶべきなのでしょうか?TOP100にだけで31人の30代選手がいる現状。さらにはステパネクやハース、ティプサレビッチといった怪我明けのベテラン達もトップレベルへの復帰を目指してこの全米に参戦しており、予選を突破したメルツァーなども合わせればなんと本戦に入った30代選手は計40人に上ります。  では彼らは何歳ぐらいから表舞台を退いていくのでしょう。現在トップ選手の引退者が出ている最も若い世代は、ロディックとナルバンディアンが既に引退済の1982世代(現在32~33歳)になると思われます。現役ではフェレールやロブレドがこのグループに含まれ、二人とも今年はやや低迷気味。全く30代とは思えないプレーを続けてきたフェレールもそろそろ自らの年齢と向き合いながらの現役晩年となるのかもしれません。  この全米を最後のGSとするトップ選手も二人います。一人はドロー展望でも取り上げた元世界9位のマーディ・フィッシュ、そしてもう一人は元世界13位のヤンコ・ニエミネンです。彼らは共にフェデラー世代の1981年、まさにニューボールズ世代の真っただ中を生きた選手達です。フェデラーやロペス、カルロビッチの活躍を見ると麻痺してしまいそうになるのですが彼らがラケットを置く瞬間は着実に近づいています。 【岐路に立つ「元」ビッグカップル】  1年前、ラオニッチとディミトロフ、そして錦織の次世代争いがどんな状況だったかを覚えている方はいるでしょうか?当時の順位はラオニッチ6位、ディミトロフ8位、そして錦織は11位。彼ら二人はWBでベスト4に入るという快挙を成し遂げ、錦織より一歩先にGSでの実績を積み上げました。そしてその後も順調に伸びていくのでは…という期待の中で迎えた全米でした。しかし一年後のディミトロフは積み上げた実績をほとんど失い、ランキングも17位まで後退。復活の光が見えぬままニューヨークに乗り込むことになりました。  ディミトロフは本職のテニスでうまくいかないだけでなく、恋人として衆知の間柄だったシャラポアとの破局も知られるところとなりました。お互い再出発を意識して迎えたであろうこの夏でしたが、ディミトロフはシンシナティでマレーをMPで追い詰めながら逆転負け。シャラポアのほうもWBを最後に負傷により一切の大会に出場することができず、全米への出場も寸前で取り消すことになってしまいました。  ディミトロフは順当に行けば3回戦でチリッチと対戦します。かつて最もナンバーワンの座を期待された男はこの全米で再浮上のきっかけをつかむことができるでしょうか。 Sun out. Shirt off. Grigor Dimitrov warming up for #USOpen. pic.twitter.com/6JQzWeRLsN— Tennis Photos (@tennis_photos) 2015, 8月 31 【セリーナ、生涯グランドスラムの鍵は序盤戦】  女子では絶対女王セリーナ・ウィリアムズが5大会連続GS優勝、そしてあのグラフ以来となる年間グランドスラムの偉業に挑みます。最大の難敵とも言われていたアザレンカはドローの反対側に位置しており、順当に行けばその歩みを止めるものはいないでしょう。  だがセリーナにも隙がないわけではありません。その鍵となるのはこちらのデータ。 <セリーナのGS成績(2012年以降計15大会)> 4回戦までに敗退:6大会 ベスト8~準優勝:1大会 優勝:8大会 この戦績から、ベスト8に入るまでに、セリーナのエンジンがかかってくる前に仕留めることが彼女を止める唯一の方法であることがわかります。 All eyes are on No. 1, but can anyone challenge #Serena? http://t.co/qzxayMjdgT #usopen pic.twitter.com/XRaivuWWAJ— US Open Tennis (@usopen) 2015, 8月 30  今回その位置に入って打倒セリーナの役割を担うのは3回戦で当たりうるスティーブンス(第29シード)、そして4回戦で当たりうるキーズ(第19シード)。両名ともにアメリカの未来を担う期待の若手であり、対戦が実現すれば非常に印象的な対決となるでしょう。4年近く絶頂期を歩んできたセリーナも9月で34歳になります。トロントではプレミア大会初優勝を飾ったベンチッチの前に敗れているセリーナ。続くシンシナティでは強さを見せつけて優勝しましたが、打倒セリーナは不可能ではないはずです。  最初はスロースタートで入ることも多いセリーナですが、その後上げていって逆転勝ちできるのがまた彼女の強み。第1セットを落とした試合は今年だけ11度ありますが、その11回のうち10回でその後逆転勝ちを収めています。さらにタイブレークも8勝2敗と圧倒的強さを誇り、そうした勝負どころでの強さが今シーズンの圧倒的戦績(48勝2敗)という戦績に繋がっているのでしょう。