こんにちは。 まずは、前置きからです。 これまでは試合での臨場感やテニスの奥深さを伝えたいという思いから、コラム形式での投稿にしていますが、 今回はいつもの「MATCH FOCUS」ではないので、初めて文章形式を通常の形にしたいと思います。 逆に違和感があるかもしれませんが、この先、この形式で投稿した際も、目を通していただければ幸いです。 この機会に、two-set-downさんや、TENNIS LOVERSさんをはじめとして、テニスブロガーの皆さんが様々な角度から豊富な情報を提供して盛り上げてくださっていることに心から感謝を伝えたいです。定期的な更新には、本当に頭の下がる思いです。 私も、不定期更新なので微力ではありますが、テニスの醍醐味を伝えていくことで、現在のテニス人気が一過性にならないようにと、心から願っている次第です。 さて、皆さんは、近付く全米オープンでの錦織圭の活躍に期待感がいっぱいなのではないでしょうか。 私も今から楽しみで楽しみで楽しみで(強調したいので 笑)仕方ありません。 期待に胸が膨んでいる理由の一つは、錦織の記者会見にあります。 錦織選手の間近で帯同していない私たちにとって、状況を掴む上での貴重な判断材料になります。幸いにもその動画をスポナビさんが、2つアップしてくれていました。これはとてもありがたいですね。会見の雰囲気まで解るからです。 TVのスポーツ報道では、時間が限られているため、錦織のコメントが端折られるのはやむを得ません。「いいとこどり」をするのは、当然と言えます。錦織人気のため、メディアに煽られるのも、トップ選手の宿命と言えるでしょう。 でも、錦織のコメントがメディアによって部分的にピックアップされてしまうことが、かえって錦織の人柄について誤解を招いたり、一部の心無い中傷を受けたりする原因にもなっていると感じます。 モントリオールのマレー戦では、試合中に あるテニス解説者から「戦意喪失」との烙印を押すかのような発言があり、それに引きずられる形となったのか、同調した報道が一部でなされました。私は別のチャンネルで観ていたので、後でそれを知った時はがっかりしました。解説者は悪気はなく、単に観察力が乏しかったのかもしれません。とはいえ、錦織選手の人となりを熟知していたら、果たしてそのようなコメントは出たのでしょうか。 しかしながら、ある出版社の編集長が、錦織を全面的にフォローする見解を出してくれたことは、とても嬉しく思いました。 たしか、第1セット第8ゲームあたりから異変が見えましたしね。試合をご覧になっていて気付いた方もいらっしゃったと思います。 ありもしないこと、あるいはプレー中に自分が考えてもいないことが、既存の事実かのように公表されたらどうでしょうか。 ポジティブな妄想ならまだウェルカムということもあるかもしれませんが、ネガティブだったならば。。 自分自身が、もし錦織選手の立場だったらと思うと、このような時に果たして冷静でいられるだろうかと考えてみました。 今回のような煽りがこれまでにもあったので、錦織自身が知らない確率は低いと思います。きっと、ネットのニュースも目にするでしょうし。 錦織が自分の目で確認しそれを知っていながら、胸の内でとどめているとすれば、非常に寛容な性格なのだと思います。錦織が多くの人に愛されるのもうなづけます。 そのようなわけで、錦織選手についての総合的な理解(プレーレベルだけではなく、怪我、体調、人柄など)が相互に深まり、彼に温かい視線が向けられるよう、その一助になりたいと私は思っています。 この背景を考慮して、全体像が見えてくるよう、記者会見の様子をできるかぎり忠実に拾ってみましたので、まずは以下に記します。 そのあとで、もしかすると皆さんも気にかけておられるのではないか、という点を記事の後半に論じたいと思います。 【全米オープンでの意気込みについて】 『今回はしっかり気持ち的にも体力的にも自信をもって臨めると思うので、何か試合中にあれば別ですけど、体力的には問題ないので…今までで一番いいんじゃないですかね。テニスの調子もいいですし、あとはどれだけ試合の中で自分の力を出せるかというところなので、準備はしっかりできていると思うので、あとはしっかりコートで戦うだけです。…あまり優勝は考えていないですけど、今年は新しい全米なので、そんなに決勝にいけるとも限らないので、自分自身のプレーを1回戦から貫いて…体調もテニスもとてもいいので、しっかりやれば後半にいけるチャンスはあると思います』 【対戦相手のブノワ・ペアについて】 『ペアは最近また調子を上げてきているので…しばらく怪我をして休んでましたけど、サーブが良いのと、バックが(バックハンドストローク)良いのと…バックは…ぼくの中ではトップ3ぐらいの、言い過ぎた(笑う)、トップ5ぐらいの実力があると思うので、リターンだったり、バックからの組み立てはかなり上手いので強い相手かと思います』 【キリオスのワウリンカに対する振る舞いについて】 『急にすごいのが(質問)きましたね(笑)…もちろん(キリオスの言動は)許されることではないので、まだ若いですし、しっかり教育してくれる人が周りにいれば、いいんじゃないですかね。』 Q:他の選手たちのキリオスに対する対応も非常に悪くなってきてるのでしょうかね? 『どうですかね…あまり人の話を聞いたことがないので、何とも言えないですけど…ぼく自身はまだ何もされてないですし(笑いが起こる)、完全に悪いヤツではないと思いますし、あれだけタレントもある選手なので、更生してくれたらいいかなと思います』 【観客のマナーについて】 『(笑)マナー? ぼくあんまりお客さんの声は入ってこないので、チームの知ってる人の声だとしっかり入ってくるんですけど…なのでそんなに気にはしてないですね。強いて言うなら、日本で試合する時に、(対戦相手が)ファースト(1stサーブ)ミスった時に、「よし」って言うのはやめてもらいたいです(笑)』 この様子を映像で見ると、錦織の情況がもっと解りやすいです。 終始笑顔で、ユーモアを交えながらの、和気あいあいとした、実に爽やかな会見でした。 とてもシャイで、穏やかな人柄が見てるだけでも伝わってきました。しかも、間を置きながら言葉をよく選んでいたのが印象的です。 対戦相手へのリスペクト、配慮が見て取れました。 ポイントだと思うのは、休養が取れた後だということと、大会前のリラックスしているタイミングだったということです。 顔色も良く、ふっくらしていて、体調はすこぶる良さそうです。 私たちも素の自分が出せるのは、通常、緊張から解き放たれる、プライベートの時間ですよね。休養十分で、リラックスしていると、頭もよく回転します。 ところが、試合直後での会見になると、そうはいきません。ハードワークをして、疲労困憊のことも多いでしょう。 まして炎天下でのプレー後だと、意識が朦朧としていることもあるかもしれません。私もプレー経験があるので、きつさはよく理解できます。テニスは1試合プレーするのでさえ、とてもハードなのに、錦織のように強くなるほど連戦となります。もし決勝戦後の会見ともなれば、想像を絶する心身の消耗度でしょう。 試合後の会見の時は、表情が硬くなりやすく、受け答えもスムーズにはいかないとしても、決して責めることはできません。質問に対して、気の利いた表現で返答できないこともあると思います。 特に、試合に敗れた時は、悔しさや自分への苛立ちが募ることも多く、頭の中が混乱している時もあるでしょう。何も話したくないとさえ思っている時でも、世界的に注目されている選手になっているゆえ、基本的にはメディアの要求に答えなくてはなりません。 それで、試合後の会見での発言が、どんなものであれ、よほどの内容でないかぎり問題視しないでほしいと思います。 錦織はまだまだ若いですし、丁寧にコメントしてくれているだけで御の字、とみなしてよいのではないでしょうか。 冒頭で触れた事柄に調和して、苦言を呈したいことがあります。 この会見を元に、あるスポーツ誌が記事を出しています。そのタイトルは、『錦織が優勝宣言「今までで一番いい」』。その本文中では、「迷いなく言い切った」と記されています。 これをふまえて、錦織のコメントを、もう一度抜粋して引用します。 『あまり優勝は考えていないですけど、今年は新しい全米なので、そんなに決勝にいけるとも限らないので、自分自身のプレーを1回戦から貫いて…体調もテニスもとてもいいので、しっかりやれば後半にいけるチャンスはあると思います』 比較すると、正反対の印象ですよね。 とても慎重かつ謙虚なコメントです。優勝宣言などしていないことは明白です。迷いなく言い切ってなどいません。この記事の筆者はちょっと無責任だ、誇張表現だろうと、ご立腹される方もおられるかもしれません。 なぜなら、この書き方だと、錦織が傲慢だという印象を与えかねないからです。 そして、このような「煽り」を受けた影響で、敗れてしまった時の錦織のコメントが「みっともない言い訳だ」と印象付けられてしまう恐れがあります。ひとたび誤解してしまった人には、錦織が何を話しても、ただの言い訳にしか聞こえなくなります。 さらに、映像もなく、文字だけで表現されている場合、読者に曲解されやすくなります。 もちろん、競争社会なので、読んでもらうためにある程度脚色するのは暗黙の了解というのが現状でしょう。 それに、スピード勝負の世界なので、迅速に作成しなければならないというのもあるかもしれません。 しかし、本当にそれで済ませていいのでしょうか。 たとえ、微妙なニュアンスに差し換えるとしても、それは当事者への配慮に欠けていると言えます。わたしたちは誰しも、事実でないことを広められて、評判を落とされることは望みません。 「風評被害」により、一度レッテルを貼られると、誤解してしまった人から、悪い印象を払拭するのは容易ではないと思います。 それに、読者が何よりも望んでいるのは、ありのままを知ることです。これが報道の原点ではないでしょうか。 まして、錦織選手は私のような一般人ではなく、世界的スターです。 テニスという競技の中で世界4位に位置していることが、どれほど偉大なことかを理解してほしいですし、そのことを理解できるような伝え方をしてほしいです。 錦織は決して軽く扱われるべき存在ではありません。彼の名誉のためにも、責任を持って慎重に、ありのままを伝えてほしいものです。試合の映像のみでしか情報が得られない場合、推論してあらゆる可能性を指摘するのは着眼点の違いであり、何ら差し支えないでしょう。でも、この度のように約50人の報道関係者の前で錦織本人が回答し、発信源が明確な場合は特に慎重を期さなければなりません。 期待を抱かせることと、煽ることを、混同させてはならないのです。 すでに錦織がどんな人柄かを知っている人たちは別ですが、詳しく知らない全ての人に対して、間違った印象が植え付けられてしまわないことを望んでいます。 とはいっても、錦織はメンタルがとても強いからこそ現在の位置にまで登り詰めてきたわけなので、杞憂にすぎないのかもしれませんが。。 この先、たとえ いわれのない批判を受けようとも、意に介さないぐらいでいてほしい、そう願うばかりです。