マスターズに勝つというのは、GSを勝つのとはまた違った困難さがありますね… 何をいまさら、といった感想でしょうが、GSは5セットマッチではあるものの、基本的に1日おきの試合なので、ある程度回復する時間が与えられますが、MSは連日の試合なので、前日に激しい試合をしてしまうと、その次がものすごくきついことになるという、当たり前の事実をつきつけられました。 もしかして、Big4の一番すごいところは、高いレベルの連戦を勝ち抜く、化け物じみた体力にあるのかもしれません… 私は、単純に今の錦織選手に2014の躍動感が戻ればもっと勝てると思っていましたが、そうではなさそうです。 やはり、錦織陣営の今年の基本戦略である、体力の強化とサーブを中心としたプレーの安定度および、少ないストロークで決めきる術を身に着けるといった、基本的なことが非常に大事なのだと、気づかされました。 ジョコビッチ選手の負け惜しみのようなあの言葉は、実は深い意味を持つエールだったんですね。お前はまだまだだと… トーナメントですので、1試合いい試合をしただけでは、タイトルには手が届かない…むしろ、ゾーンに入って後遺症を残すような試合はできるだけ避けるべきなのですね。MSでは100%を出すのは、決勝だけでないと優勝には届かない… 錦織選手から躍動感が消えたわけではなく、それなしでどこまで勝ち進めるかが、真の課題だったわけです。自分の不明に深く恥じ入ります。 となると、MS、GSクラスで優勝するにはやはりシード順が大切です。少しでも前半を楽に勝ち進まないと、決勝まで到底持ちません。当面の目標はランキング4位をできるだけ維持することでしょう。 シンシナティのドローを見て痛切に感じます。第4シードはやはり楽だと。どれだけ第4シードで戦えるか、それが今後のMS、GSの成績を左右すると思います。 前置きが長くなりましたが、本題のマレー戦。 錦織選手、出だしは決して悪くありませんでした。 マレー選手はよいコンディションでしたが、そのマレー選手から、2度もブレークを奪ったことは今後の自信にしてよいと思います。 しかも、ブレークされてすぐのブレークバックを2度です。これはジョコビッチ選手といえども簡単にできることではないでしょう。 悪かったのはサービスのみ、という状態だったと思います。 とはいえ、錦織選手のコンディションがよく、サーブが入っていれば勝てたか?と問われると、それはまた別の話だと思います。 それほどに、マレー選手のセカンドサーブに対する対応は見事でした… ちょっと、簡単には打開策が見つからないくらい、叩きのめされた感があります。 今の錦織選手の最大の弱点には違いありませんが、ここまでやられてしまうと、コンディションが良くても戦意を喪失しかねません。 今後の最大の課題であり、全米までに少しでも改善してくれると信じたいところです。 相手の嫌なプレーを選択することにかけて、マレー選手の右に出る者はいませんね。 Big4の中で最も性格が悪い、もとい、クレバーな選手かもしれません。 サッカーでいうマリーシアとはちょっとずれるかもしれませんが、そんな雰囲気を最も濃厚にもっていると思います。 たとえば、錦織選手、スマッシュが下手くそ(笑)ですが、そんな苦手意識を見越してか、スマッシュを打とうとしているとき、実に細かい動きをしていました。その動きで完全に錦織選手をコントロールし、自分の思う方に打たせていましたね。 もちろん、すべてのプレーのレベルが高くなければ、そんなことは実現できないわけですので、オールAのプレーで相手の弱点を突くことが、他のBig4に対抗するためのマレー選手の戦略なのでしょう。 錦織選手は良くも悪くも性格が素直ですので、最も苦手とするタイプかもしれません。 Big4の他の3人は比較的求道的というか、自分のプレーを高める方に意識が行っていますので、たとえ負けても、また次頑張ろうと思える試合ができますが、マレー選手に負かされると、こたえるというか、なんというか精神的ダメージが大きい感じがします。 しかし、そんな相手こそ貴重な相手です。自分の弱点をくっきりと描き出してくれるわけですから、明確な強化目標を与えてくれたと考えて、次のステップへ進めばよいわけです! もちろん、そう簡単なことではありませんが… それにしても、以前から思っていましたが、錦織選手は演技力0ですね。 思ったこと、感じていることがそのまま表情・態度に表れます。 フィジカルに異変を感じた後の戦意のなさ加減は、ちょっといただけませんでした。 観客からブーイングを浴びせられてもしようがないプレーだったと思います。 おそらく、試合後のコメントからくみ取ると、全身のあちこちに痛みがあり、思うようにプレーができない状態にあったが、一つ一つの痛みはMTOを取って治療するほどのものではない、といった状態だったのではないでしょうか? それでも、観客に対してのアピールというか、いい意味での言い訳というか、そういうものが必要だったのでは、と思ってしまいます。 第2セットの第1ゲーム、30-0からひっくり返された時点で棄権してもよかったでしょうし、少なくともそこでMTOをとって適当に腰でも足でももんでもらって、不調をアピールし、「ああ、昨日のあの試合の後だもんね…」と納得してもらえば、ブーイングまでは浴びなかったでしょう。 もし、シンシナティの欠場をすぐに決めなければ無気力試合として罰金を科せられても文句が言えなかったかもしれません… 試合後すかさず、マレー選手がリストバンドを投げ込んで雰囲気を和らげてくれたのは、さすがTop選手でした(さっきは性格が悪いなんて書いてすみません!) まぁ、素直な錦織選手は、MTOを取るまででもない状態だからとらなかった、というだけなのでしょうが、高いお金を払って見に来ている観客に対し、ブーイングしたくなる気持ちにさせたのはプロとして失敗だったといえるでしょう。 それもふまえて、気持ちそのもののコントロールとともに、表情や目に見える雰囲気もコントロールできるようになれば、劣勢な時ももっと相手にプレッシャーを与えられると思いますが、できないだろうなぁ…(笑) まぁ、それを意識するのは、来年か再来年以降でよいでしょう。 まずは、今日与えてもらった宿題を片づけることが先決です! 道のりはまだ遠い。思っていたよりも遠かった…しかし、よりはっきりと見えてきたことを収穫として、カナダから去りましょう。 錦織圭はまだまだ強くなれる!