さあ、2015年芝の王者を決定する対決の開始時間が迫ってきました。 今年4度目となる頂上決戦、勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか? このブログでは当初から公言している通り筆者はフェデラーファンなので、 今回の記事はフェデラー寄りになるかと思いますがどうかご容赦下さい。 逸る気持ちを抑え、まずは両者の準決勝を振り返ります。 ■ジョコビッチvsガスケ http://atpworldtour.jp/matches/detail.php?id=10062 全仏対決からわずか1ヶ月足らずでの再選となった両者。正直自分にとってはあの一方的な試合の衝撃が強すぎて、ガスケが勝ち上がった時点でジョコビッチの勝ちは確定かと思った位でした。結果的には予想通りジョコビッチの勝利とはなりましたが、内容はまるで想定外となりました。 ・第1セット  ジョコビッチがいきなり飛ばします。第1ゲームからサービスポイント3本でゲームをキープすると、第2ゲームでいきなりブレイク。ここで一方的なゲーム展開が予想されました。しかし今日のガスケは一味違います。隙あらばリスクを顧みずバックハンドを叩きこみ、ジョコビッチからすかさずブレイクを奪い返します。  その後両者のキープが続きますが、特筆すべきはガスケのセカンドサービス。ダブルフォルトを恐れず攻撃的なセカンドを打ち込みます。結果、2ndServiceWonはジョコビッチの33%に対して65%、セカンドサービスポイントも4本記録しました。ですがタイブレークに入り失速、アンフォースドエラーを連発し7-2でタイブレークを落としてしまいます。タラレバですが、このタイブレークをもしガスケが取っていれば全く違うゲーム展開になったと思うので、ガスケからすれば勿体無かったです。 ・第2セット  ガスケがいきなりブレイクピンチを迎えます。1本目はバックハンドウィナーで凌ぐも、2回目のデュースでファーストサーブからネットに出るものの、ジョコビッチの中ロブ気味となったパッシングに反応できずいきなりブレイクされてしまいます。  第4ゲームで今度はガスケがブレイクチャンスを迎えます。バックハンドウィナー、ネットウィナー、バックハンドポイントの3連発で15-40とダブルのブレイクチャンス。しかし今日のジョコビッチはピンチ時のファーストをことごとく決め、4連続ポイントであっさりピンチを切り抜けます。その後はジョコビッチがオールキープで2セットアップ。ジョコビッチの1stIn77%に対してガスケも良く反応し、1stReturnIn65%(これはジョコビッチの1stReturnIn60%を上回りました)とするも、ジョコビッチの3球目の攻撃の精度が高く、結局ジョコの1stServeWonは78%と高止まりし、ブレイクには至りませんでした。しかしウィナー/ネットプレーの数ではジョコビッチのほぼ倍以上の数字を叩き出し、積極的なプレーを見せてくれました。 ・第3セット  ガスケはファーストサーブに苦しみます(3セットトータルで44%)。このセットでは第3ゲームでブレイクピンチを迎え、2回目をジョコビッチに決められてしまいます。この辺り、そこまで多くないブレイクチャンスをきっちり決めきるあたりが王者たる所以なのでしょう。その後第9ゲームでもブレイクピンチを迎えます(このゲームの1stIn33%)が、前後左右のジョコビッチの揺さぶりにも耐え意地を見せキープ。第10ゲームに一縷の望みを残します。しかしその第10ゲームはジョコビッチがきっちりラブゲームで締め、ガスケはストレートでの敗戦となりました。 試合後の印象として、実際の試合とトータルスタッツを振り返る限り、かなり競った試合をしていたと思います。惜しむらくはファーストサーブの確率。ジョコビッチ76%に対してガスケ44%。。ジョコビッチ相手でこの数字は致命的でしたね。しかし、キリオス、ワウリンカを破った力は本物。この調子を維持できればTOP10返り咲きも遠くないのではないでしょうか?Best4経験もある全米は要注目です。 ■フェデラーvsマレー http://atpworldtour.jp/matches/detail.php?id=10061 蓋を明けてみたら2010年全豪以来となる、GS対マレーでのストレート勝ちになりました。嬉しい判明、正直驚きました。ここ最近でこそマレーの手術明けの影響もありフェデラーの圧勝が続いていましたが、少し前まではマレーが勝ち越していた程、マレーは対フェデラーに強かったからです。それが何と何とブレイクチャンス1本献上しただけで終わるとは。 ・第1セット フェデラーサーブでスタートしたこの対決。出だしネットウィナー、フォアハンドウィナーで30-0とスタートし、まずは余裕でキープかと思いきや、一転マレーのリターンポイント、ロブウィナー、バックハンドウィナー3連発でいきなりブレイクピンチを迎えます。しかし今大会のフェデラーのサーブは半端ではない。ファースト3発であっさりキープしてしまいます。そして、このブレイクポイントがマレーにとって最初で最後のチャンスとなったのです。 しかし一方のマレーも全くの好調。両者デュースにすらならずキープキープでタイブレーク直前の第12ゲームとなります。マレーのアンフォースドエラーで15-30となった4ポイント目、フェデラーがマレーのセカンドを引っ叩きリターンエース!フェデラーがダブルのブレイクチャンスを迎えます。そして、2回目のブレイクポイントでファーストからネットに出たマレーをバックで攻めブレイク成功!第1セットをフェデラーが奪います。このセットのスタッツでは1stServeInの差(フェデラー85%マレーの71%)位しかなく、拮抗したゲーム展開から最後フェデラーの集中力が勝り、競り勝ったセットとなりました。 ・第2セット フェデラーのサービスゲームは盤石そのもの。第3ゲームで15-30となった以外はマレーにポイントリードすら許しません。一方のマレー、第4ゲームで一度ブレイクピンチを迎えますが、サービスで切り抜け、キープを続けます。しかし迎えた第10ゲーム、大きな山場を迎えます。ゲーム開始からファーストを3連続で決めるもいずれもフェデラーに返され、UE、フォアハンドウィナー、UEで0-40の大ピンチ。しかしこの場面で勝負のセカンドをセンターに打ち込みエース!!!ダボしたら即セット終了の場面でのこのサーブを決めるあたりはさすがとしか言いようがありません。この後はファーストからの展開とサービスポイントでデュースに戻します。そしてこの後のデュースが大変。2本のブレイクピンチを凌ぐとともに、再三のフェデラーの攻めを抑え、合計20ポイント、時間にすると15分かかったゲームを、最後はエースで決め、何とかキープしました。 しかし恐らくこのマッチの決め手となったであろうゲームがこの後の第11ゲーム。他の方も書かれていましたが、通常ピンチの後にはチャンス有り、になる筈のゲームがなので、私もハラハラしながら見ていたのですが、何とここをあっさりとラブゲームキープ。これには流石のマレーも心が折れた事でしょう。フェデラーは第12ゲームで得たブレイクポイント、セカンドとなったマレーのサーブを攻め、最後ボレーで第2セットも奪取しました。 このセットはフェデラーの1stServeWonが何と100%!!スコアリング後、この数字を見てさすがにスコア付け間違えたと思い、セットを見返してしまいました。また、フェデラーは1stリターンも良く、これがマレーを苦しめたと思います。フェデラー68%に対し、マレー47%でした。サービスエースとサービスポイントの数はマレーの方が上ですが、これは単純にマレーのサービス本数が50本と、フェデラーの31本を大きく上回っていた事が要因です。 ・第3セット  序盤はまたもや両者のキープ合戦です。第3ゲームのフェデラーサービスで1度だけデュースがあっただけで、テンポ良くゲームが進んでいきます。そして迎えたマレーサーブの第10ゲーム。フェデラーのリターンポイント、バックハンドウィナーで0-30となり、一気にゲームが動きます。しかしマレーもすかさずエース、バックハンドウィナーをお返しし30-30。しかし次のビッグポイントでフェデラーがまたもやリターンエースを打ち込み、最後は再三見せたファーストサーブに対するリターンで、マレーのアンフォースドエラーを誘発しゲームセット。フェデラーは本当に会心のゲームでした。 トータルのスタッツで見ると、1stServeInはフェデラー77%に対してマレー74%で差はありませんでしたが、1stServeWonは84%:71%と大きく差が開きました。この差は1stイン時のフェデラーのネットプレーの多さと決定率の高さ(23/36※)だと思います。(※公式スタッツではなく、独自でスコアリングした結果の数字です)。また試合を左右したのは1stServeのリターン成功率(61%:54%)、マッチポイントに集約されると思いますが、要所でのファーストリターンが結果的にこの試合の勝利を生み出しました。そしてこのファーストリターンは去年のWB決勝でジョコビッチとフェデラーの明暗を分けた要素そのものなのです。今大会、サーブ/リターンともに好調を意地するフェデラーは果たして昨年の雪辱を果たす事ができるのでしょうか? ■2015年 ウィンブルドン選手権決勝プレビュー ・通算40度目となる対決 両者の対決は2006年から始まり、今日の決勝で40度目となります。 (2014年のツアーファイナルはフェデラー棄権の為、公式サイトでも対戦数にはカウントされておらず、当ブログでも同じ扱いにしています) これまでの通算成績は20勝19敗とフェデラーが上回っていますが、この成績を時系列で2分割すると 初対決~20戦目:フェデラー13勝、ジョコビッチ7勝 21戦目~39戦目:フェデラー7勝、ジョコビッチ12勝 となっており、フェデラー全盛期~ジョコビッチの台頭~Big4の拮抗~ジョコビッチ1強(2015)と時代が変遷する中で、フェデラーとジョコビッチの力関係が逆転した事は誰も否定できないと思います。 一方、GSのみで両雄の対決を振り返るとどうでしょうか? 通算対戦回数は通算12回あり、フェデラー6勝、ジョコビッチ6勝のイーブン。内訳は次の通りです。(全豪3(1-2)、全仏2(1,1)、全英2(1,1)、全米5(3-2)) また、「各GSにおける両者の直近の対決」という括りで考えると、全GSにおいてジョコビッチが勝っています。つまり、最近フェデラーはGSでジョコビッチに勝てておらず、直近でフェデラーがジョコビッチからGSで勝利をしたのは2012年WBのセミファイナルまで遡る事となります。 最後に、直近6試合という括りで見ると、フェデラー3勝、ジョコビッチ3勝となっており、これが2015年の放送でよく聞かれる「ジョコビッチを倒せるとしたらフェデラー」と言われる所以かと思うのですが、この3勝というのはドバイ2015、2014上海、2014モンテカルロとなりますが、モンテカルロの勝利はジョコビッチの怪我のお陰という事は否めず、また、4試合追加して直近10試合で見ると、追加の4戦はフェデラーからみて1勝3敗で且つ勝ったのはドバイのみ、となっており、まとめると、フェデラーがまともに勝ったのは500のドバイと、上海マスターズだけであり、「直近のマスターズ以上の10戦」で言うと2勝8敗と大きく負け越しており、フェデラーは大きな大会でジョコビッチに勝てていない、というのが、フェデラーの勝利を切望する人間からすると最も心配なところではあります。 ですが、2014上海、2015ドバイのフェデラーの勝利は自ら積極的に素晴らしい攻めを展開し、文句のつけようがない素晴らしいものでした。この時のような戦い方ができれば今日の決戦でもきっと勝利をたぐり寄せる事ができる筈です。 そして、全世界のフェデラーファンの期待をより高めさせるものは何といっても前述した今大会の勝ちあがり方の完璧さでしょう。最重要ポイントはサーブの出来となりますが、ネットプレーの成功率、フォアの当たりの厚さ、スライスのキレ、リターン成功率の高さなど、全てのプレーレベルが極めて高く、これまでのプレーが今日も出せれば勝利は自ずとついてくるでしょう。 ですが問題は「今大会ここまでの素晴らしいプレーが今日出来るかどうか?」です。正にここ次第でしょう。そしてそれを左右するのがメンタル。 ・GS優勝から丸3年離れている ・去年同じ舞台でジョコビッチに敗れている。 ・自分にとって最後のGS決勝となるかもしれないという時間的制約の問題 などなど、100戦練磨のプレイヤーといえど、どうしても勝ちたい試合では様々な思いがよぎり、通常の精神状態下であればできる事ができなくなってしまう事は全仏決勝のジョコビッチを見ても明らかです。 しかししかし、GS優勝から3年離れていたという点では2012年のWB決勝も同じ。この時は見事にプレッシャーをはねのけ優勝及びその後のNo1返り咲きを果たしています!フェデラーがジョコビッチに確実に勝っている要素、それは「経験」です。今大会を通して見せてくれている全盛期を彷彿とさせるプレー、そして2013年の凋落、更に2014年のWB決勝の悔しい想い、これまで全ての経験を引っさげ、今日はきっとやってくれるでしょう!!! さあ、運命の決勝まであと4時間。再びフェデラーが芝のコートに倒れこむ姿を見せてくれる事を心から信じ応援あるのみです!!