女子準決勝2試合が行われ、第1シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が第4シードのマリア・シャラポワ(ロシア)をサービスエース13本で圧倒、ウィンブルドン通算6度目の優勝に王手をかけた。それに先立つ第1試合では、初めてベスト4に進出した21歳のガルビネ・ムグルッサ(スペイン)が第13シードのアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)をフルセットで下している。  シャラポワはここまでセレナに16連敗、11年間も勝っていない。グランドスラムで6度対戦して1勝5敗、6度のうちの4度の決勝対決で3度敗れ、ロンドンオリンピックの決勝でも0-6、1-6の大敗を喫していれば、トラウマは避けられないだろう。そうでなくとも不安のあるサーブが、第1セットの第1ゲームに乱れた。30-0からダブルフォルトなどで追いつかれ、デュースに入って2本連続のダブルフォルト。風もない中でのプレッシャーは、ここまでの対戦成績もあるとして、セレナの破壊的リターンへの警戒感だ。低い弾道のリターンが、ベースライン真上の足元に飛んでくる。早々に1ブレークを得れば、セレナには楽な展開だ。第1セットのファーストサーブの確率は52%だが、そこからのポイント確率が83%。しかも、この日のサーブは時速190km台の威力だけでなくコース選択が抜群で、シャラポワは何度もセカンドサーブを見送った。  女子の短期勝負には常に逆転の可能性が潜んでいるが、リードしたセレナはポイントを使いながらリスクをかけて攻撃の手を広げる。サーブをさらにワイドに、リターンをさらに深く放り込み、ポイントをリードされれば強烈なサーブを叩きつけてあっと言う間に追いついてしまう。第2セット、シャラポワは第4ゲームに15-30、第8ゲームに0-30とリードしながら、いずれもそこからウィナーを決められ、ブレークポイントまで届かなかった。圧巻は5-4から、セレナがサーブの第10ゲーム。ダブルフォルト1本を挟んで3本のノータッチエース、マッチポイントからは辛うじてラケットに当てたサービスウィナー。ボールに1度かすっただけの幕切れだった。  もう1試合では、強気のテニスでのし上がってきたムグルッサが、出だしから技巧派のラドバンスカを攻めた。第1セットの第1ゲーム、いきなりサービスブレークに成功。フォアの打ち合いから、ダウンザラインへの切り替えを何度も決め、このセットだけでウィナー12本。ブレークポイントがラドバンスカの0に対しムグルッサが7、若手らしい勢いで6-2で奪った。しかし、ラドバンスカは3年前に準優勝しているベテランだ。第2セットの第1ゲームをいきなりブレークされたものの、そこから打ち合いを交わすようにペースを変えながら相手のミスを引き出した。ペースが落ちてくれば、ボールを拾うことでは天才的なテクニシャン。ボールを前後左右に散らし、第6ゲームでブレークバック、さらに第8ゲームでも柔らかな攻防戦を制してセットを奪った。  ファイナルセットに入り、ラドバンスカが第1ゲームをブレークして逆転の流れをつかんだかに見えた。悔やまれるのは第2ゲームだ。第1セットで65%だったファーストサーブの確率が第2セットに86%まで上がり、このセットに入って再び58%まで落ちた。セカンドサーブを狙い打ちされてラリーの主導権を奪われ続ければ、いくら技巧派でも立て直しは難しい。すぐにブレークバックを与え、第6ゲームもセカンドサーブを狙われてブレークされた。“柔よく剛を制す”になぞらえられるラドバンスカだが、スタミナには相変わらず課題がある。グランドスラムの終盤には格別のエネルギーも求められ、若い勢いに押し切られてしまった。  セレナとムグルッサは過去3度、いずれもグランドスラムで対戦し、セレナの2勝1敗だが、昨年の全仏オープン2回戦ではムグルッサが勝っている。セレナ有利は動かないにしろ、ファーストサーブの出来次第ではチャンスも出て来る。  大会第11日は男子準決勝、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)vsリシャール・ガスケ(フランス)、アンディ・マレー(イギリス)vsロジャー・フェデラー(スイス)の2試合が行われる。 文:武田薫