観戦:WOWOW 大会:全仏オープンテニス 男子シングルス決勝 開催:2015年6月7日 表彰式での準優勝プレート贈呈の場面。 拍手に囲まれ、ステージに上がったノバク・ジョコビッチ〔セルビア〕。 ジョコビッチは堂々とプレートを受け取った。 いちばん欲しい優勝カップは、今年もお預けとなった。 目前まで迫った生涯グランドスラムを逃し、気持ちの整理は簡単に出来るものではない。 しかし、どんなに悔しくても、表彰式では紳士的に爽やかに振る舞う。 悔しさを心の奥に閉じ込め、プレートを高々と掲げながら、「GOOD!」と親指を立てて拍手への感謝を表した。 ここまで20秒間。 拍手は静かになりつつ、セレモニーは次の段階へ進むと思われた。 ところが、誰も拍手を止めない。 ここから約2分間、ジョコビッチへのスタンディングオベーションが続いた。 途中、照れるように何度かお辞儀をして、観客に「もう充分だよ」と言わんばかりに、再度親指を立てていた。 惜しみない拍手はまだ続く。 1分経過すると、ジョコビッチは感極まり、口元をぎゅっと力を入れ、必死に唇の震えをこらえていた。 押し殺していた悔しさが込み上げたか、目元には涙がにじんでいた。 まだまだ拍手は鳴りやまず、ジョコビッチは今のこの状況が信じられないと、何度も顔を横に振り、顔を赤らめていた。 この素敵で盛大な拍手には、観客たちの様々な想いの音色が混ざっていたように思う。 準々決勝、赤土の帝王ナダル越えを果たした称賛。 準決勝、2日間にわたるマレー戦勝利への労い。 翌日決勝の過酷日程に耐え得る精神力への脱帽感。 バブリンカのマッチポイントを一度は防ぎ、土俵際で粘りを見せた勇姿。 現役最強選手でも手に届かない、悲運な現実への同情。 準優勝でも爽やかな笑顔を見せる誠実さへの感動。 来年も生涯グランドスラムに王手をかけた決勝の舞台登場への期待と励まし。 もう、何回もこの場面を観てしまいます。 インタビューでの最後に、「私は、またここに帰ってきます。優勝するまであきらめません!」と、来年の生涯グランドスラム挑戦を力強く宣言した。 生涯グランドスラムは達成できなかったが、その偉大な記録以上に、ジョコビッチにとって生涯忘れる事が出来ない素敵な2分間の夢空間だったと思います。