第1シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が第13シードのルーシー・サファロバ(チェコ)をフルセットの末に破り、2年ぶり3度目の優勝を飾った。セレナのグランドスラム優勝は通算20度目で、シュテフィ・グラフの22度に次いでオープン化以降では2番目の記録になった。  ここまでの対戦成績はセレナの8戦全勝だったが、問題は、風邪が悪化して前日は練習できなかったセレナの体調。お互いにそれを探るような立ち上がりだ。  第1セット、グランドスラムで初めて決勝の舞台に立ったサファロバの硬さは想定通りだろう。セレナは第4ゲームに40-15のチャンスを掴むと、ここぞとばかりリターンのウィナーを決めて先にブレークした。それでも、やはりセレナには精彩がなかった。持ち味のファーストサーブの確率は50%台で思うようにスピードが上がらず、相手のミスに救われながらの展開が女王らしくない。大事には至らなかったが、第5ゲームにはダブルフォルトを2本で不安を呼びながら、それでも第1セットは6-3で奪って先行した。  セレナは第2セットもいきなりサービスブレーク。さらに第5ゲームの連続ブレークで4−1としてリズムをつかんだように見えた。グランドスラムで24度目の決勝という経験の持ち主だが、勝ちが見えてきたところで気持ちが先走ったのは、やはり体調への不安があったのだろう。第6ゲームに3本のダブルフォルト。それもデュースに入って連続のダブルフォルトでブレークを許すと、さらに第8ゲームも15-40からのダブルフォルトで追いつかれてしまう。第11ゲーム、サファロバのサービスゲームをブレークして再びリードしたかと思えば、続く第12ゲームは30-15から3ポイント連続で奪われるちぐはぐさでタイブレークにもつれ込み、そこもダブルフォルト絡みで2-7で落とした。まるで新人のような不安定さだった。  ファイナルセットに入った頃にはサファロバの硬さも消え、第1ゲームをいきなりブレークして流れが移ったかに見えたが、リードしてはプレーが揺らぐのが、女子テニスの歯がゆさであり面白さだ。第4ゲームの30-0からサファロバの腕が縮こまり、ダブルフォルトでブレークバックを許したのが非常に痛かった。ここからセレナは目が覚めたようにレベルを上げてプレッシャーをかけてミスを引き出し、第6ゲームも連続ブレークしてタイトルを手にした。大会を通してミスの目立ったセレナだが、決勝でもウィナー34に対しアンフォーストエラーが42。体調不良とは言え、綱渡りの栄冠だった。  この日は女子の決勝に先立って、前日の男子準決勝の続きが行われ、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)がアンディ・マレー(イギリス)の追撃を振り切って決勝進出を決めた。ジョコビッチが1セットをリードした第4セットの3-3から再開されたゲームは、最初から息詰まるラリーの応酬になり、マレーが第11ゲームをブレークしてフルセット勝負に持ち込んだ。だが、ジョコビッチはファイナルセットに余裕を残しており、改めて鉄壁の守りでマレーの反撃を断ち切って最後は6-1。この大会で2年連続3度目の決勝進出を決め、初優勝を目指して7日にスタン・ワウリンカ(スイス)と対戦する。 文:武田薫