上位陣は順当に勝ち進みました。フェデラーは高い集中力を発揮して2セットともセット冒頭にブレイクを奪い、モンフィスを退けました。ジョコビッチはガスケに圧勝、フェレールもチリッチを苦も無く下してベスト8に上がってきました。マレーは地元の声援を背に力強いショットを何度となく叩き込んだシャルディに苦しみましたが、最後はマレーらしいコースと回転の絶妙な打ち分けが勝利を引き寄せました。4セットでシャルディを下し、大一番のフェレール戦に駒を進めています。  一番苦しんだのはナダルだったかもしれません。ソックを相手に2度のブレイクを許しながらそれをはるかに上回る7度のブレイクを奪い、第4セット5-4と勝利は目前でした。だが30-40のピンチを迎えるとこの局面で不運にも時間超過の警告を受けてしまい、1stサーブ強制フォルトのペナルティを受けたナダルがブレイクバックを許してしまいます。死地から生還したソックは素晴らしいショットを連発し、7-5でこのセットを奪い返しました。立て直したナダルは第4セットを制して勝利を収めましたが、ソックのナイスファイトに会場は大いに沸き立ちました。 Sending our best wishes to @JackSock for such a wonderful run @rolandgarros. We're so proud of you. #RG15 pic.twitter.com/qp7YRhXBau— USTA (@usta) 2015, 6月 1  今日からはいよいよトップ選手だけに許された舞台、準々決勝の始まりです。上位8シードのうち7人と地元フランスのエースであるツォンガ、最高の8人が今ここに集いました。あと7試合、ここからは簡単に決まる試合は一つもありません。我らが錦織圭がこの中にいる喜びを噛みしめながら、最後の5日間を見ていきたいと思います。 【錦織×ツォンガ】(フィリップ・シャトリエ第2試合)  錦織が2回戦に続いてフィリップ・シャトリエの土を踏みしめます。ここまで1セットも失っていないのは錦織とジョコビッチのみ。ここまでシード勢との対戦0と相手にも恵まれてはいますが、非常に充実した勝ち上がりであることに変わりはありません。ブックメーカー各社のオッズも微差ですがマレーより高い3番手の位置を確保しており、フェデラーやバブリンカよりも高い扱いを受けています。世界が錦織の決勝進出を期待しているのです。  準々決勝の対戦相手は世界ランク15位のジョー・ウィルフィールド・ツォンガ。錦織ファンにとって絶対に忘れられない名前です。初対戦となった11年の上海MSでの大金星は錦織にとって初となるMSベスト4入りとなり、そして翌年全豪4回戦での死闘は錦織にGSベスト8入りの快挙をもたらしました。当時はツォンガこそが錦織にとって越えるべき壁でした。その後は13年に2度対戦して1勝1敗。昨年5度目の対戦がパリMSで行われましたが、このとき両者の関係には大きな変化がありました。錦織がツォンガをランキングで上回っていたのです。錦織4勝1敗で迎える今回の対戦も挑戦者は世界ランク15位のツォンガであり、それを迎え撃つのが世界ランク5位の錦織ということになります。  ツォンガの武器はハマればBIG4をも打ち破る、おなじみフォアハンドの強打。現在はややランキングを落としていますが、昨年のトロントではジョコビッチ・マレー・フェデラーを破って史上3度目となるBIG4の3人撃破と自身2度目となるMS制覇を達成しました。今回の全仏では1セットも落とさず順当に4回戦に勝ち上がるとベルディヒを4セットで下して自身3度目のベスト8へ駒を進めています。ベルディヒ戦の最終ゲームに象徴されるビッグサーブも武器の一つで、錦織のリターン力とのぶつかり合いが予想されます。  最近の対戦では錦織が得意のバックハンドラリーなどでツォンガのバックを突くのですが、ツォンガもそこは一流選手、苦手とはいえ来るとわかっているバックハンドに対してそう簡単には崩れてくれません。昨年の対戦時に錦織は「バックハンドに集めすぎた」と語っておりバックを意識させたらフォア側に振ったり、前後への揺さぶりも行うなどの更なる工夫が必要になってくるでしょう。  敵はツォンガだけではありません。フィリップ・シャトリエの観客たちが送るツォンガへの大歓声も錦織を追い詰めるでしょう。錦織はいい意味で鈍感だったり天然だったりするところがありアウェーの環境自体は全く苦にしないでしょうが、今日の試合では錦織の想像を絶する光景が広がるはずです。3年前、同じ準々決勝でジョコビッチはツォンガにMPまで追い詰められました。2年前、フェデラーはツォンガの前に力なくストレート負けを喫しました。彼らBIG4でも手こずるのがここ全仏のツォンガ。文句なしの強敵を錦織は退けることができるのでしょうか? .@keinishikori flies thru to his 1st RG QF w/6-3 6-4 6-2 win over Gabashvili, improves to 13-2 on clay in 2015. #RG15 pic.twitter.com/UTY4rvOwLe— Roland Garros (@rolandgarros) 2015, 5月 31 【フェデラー×バブリンカ】(スザンヌ・ランラン第2試合) 第1試合に行われる女子の試合の進行次第ですが、錦織の試合と大部分の時間被ることになるでしょう。しかしこちらの試合も負けず劣らず注目の試合です。  この二人の対戦はフェデラーの圧倒的優位で推移してきましたが、バブリンカが逆転勝ちしてMS初優勝を果たした昨年のモンテカルロ以降はどちらが勝つかわからない熱戦が多くなっています。2週間前のローマではフェデラーが圧勝し対バブリンカ3連勝としましたが、ナダルに勝利して燃え尽きた当時のバブリンカと今のバブリンカは違います。錦織と全米、全豪と戦ったときのように集中力を極限まで引き上げて向かってくるでしょう。そうなるとクレー適性の差を考えればむしろバブリンカが有利にすら思えてきます。バブリンカが予定通り中1日空いているのに対してフェデラーが3連戦なのもバブリンカへのプラス材料です。  お互いミスの少なくない攻撃型の選手なので、高いレベルの攻撃を実現しつつも余計なエラーを減らしていかなければ自滅してしまいます。お互いがわずかな隙を逃さず攻撃を集中してブレイクを狙い合う展開になるのではないでしょうか。